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ジュテームのとなり、マイケルの奥。
みなさま、こんにちは。
じじょうであって、ずじょうである、
あなたの頭上に自浄の雨、じじょうくみこでございます(意味不明)
さて。
わたしが移住したシマ島は外洋の離島なので、人口の減少はあっても増加はほとんどありません。島民の大半は、昔から住んでいる家族ばかり。お互い勝手知ったる知り合いだからか、シマ島の家には表札が一切ありません。町角には住所を表示する看板も全くありません。
そして。
多くの田舎がそうであるように、シマ島は同じ苗字の人がとても多いです。わたしの家の近所も、ぐるりと一周みーんな同じ姓です。そうなるとどうなるかというと、誰も苗字で呼ばなくなります。そのかわり、屋号で呼ぶのです。
いまの借家へ引っ越ししたとき、ガスを入れるためにガス会社に電話をすることなったのですが、なにしろ土地勘がないので、場所をどう説明したらいいのかわかりません。
するとダンナハンのザビ男がひとこと。
「住所を言ってもわからないと思うから、ジュテームの隣の小さな家です、と言って」
ジュテーム!?
隣はジュテームという名の喫茶店でもなければ、ジュテームの名にふさわしい洋館でもない、ただの民家です。そんな屋号あるんかいと半信半疑でガス会社のひとに
「じゅ、ジュテームの隣なんですけど…」というと
「ああ、わかりました」
わかるの? ねえ、わかるの??
と思いましたが、ガス屋さんはふつうにやってきて、ふつうに帰っていきました。
後日。
今度はエアコンを入れることになり、ザビ男が電気店に電話をかけました。
「場所なんだけど、ジュテームわかる? そう、ジュテームのとなり、マイケルの奥の小さな家」
ままマイケルっ!?
どんな外国だよ、と屋号の概念について考える今日この頃ですが、ふつうに電気屋さんもやってきて、ふつうにエアコンを取り付けて帰っていきました。
この島なんなん
とりあえず島民に「ジュテームのとなり、マイケルの奥」と伝えてもらえれば自動的に我が家に着きますので、シマ島においでの際はよろしくお願いします。
Text by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*この記事はウェブマガジン「どうする?over40」で2015年に掲載した連載の内容を一部アレンジして再掲載したものです。
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