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<8>ああ、婚活。ミスとミセスのあいだ。

じじょうくみこが誕生して丸10年。というわけで勝手に生誕記念⁉でウェブマガジン「どうする?Over40」に連載していた処女作の「崖っぷちほどいい天気」をこちらに転載しております。

今回は第8回。いよいよ婚活サイトに登録して活動をスタートしたところです。早くも四十路婚活のせちがらい現実に直面しているわけなのですが、10年たっても男性の年下好きは変わっていないような。そして冒頭に出てくるLCC話、まさか10年後にこんなインフレになるとは想像もしておりませんでした。ああ、年月。

それでは、どうぞ~。


*** 2013年6月29日の記事***

ああ、婚活。ミスとミセスのあいだ。


先日、初めてLCCというやつに乗ってみたのです。

LCC、ご存じですか。ロー・コスト・キャリア、要は安さが売りの格安航空会社ってやつですね。国内線が成田発着とかネット予約オンリーとか払い戻しができないとか、縛りはいろいろあるんですけど、東京‐札幌・沖縄間4000円台、東京-ソウル間3000円台なんていう、安いというか軽く命の危険を感じさせる料金が魅力ですね。

モノは試しということで、ネットでフライト予約をしてみることにしたのです。搭乗者情報を登録しろという指示が出たので、氏名を入力しようとしたら、こんなプルダウンメニューが出てきました。

何そのあふれ出す選択肢?

不意の攻撃だったもので「え、え、私ってMiss? ちゃうかMsか? ん、年取るとMrsになるのだったか、いやいやMrsってミスターの複数形だっけ??」と激しく心乱れてしまったキャプテンくみこです。

ここで1句。

安いぶん エグってくるよね LCC


たかがそんなことで、と思うでしょう。ええ、ええ、私もそう思います。最近どうにもナイーブでいけません。長年の独女ライフですっかり無感覚になっていたはずの「半人前感」が、いちいち刺激されては心エグられるのです。

「未婚・既婚」の選択肢を見れば「未婚! いまだ結婚できない、と書いて未婚!」
「独身・既婚」となっていれば「独身! ひとりぼっちの身と書いて独身!」
「未婚・既婚・死別」なんてのが出た日にゃ「死別! 未婚と死別が同列!!」
と、いちいち興奮する始末…。

それもこれも、婚活の影響だと思うのですよねえ。

当たり前っちゃ当たり前なんですが、婚活ってものすごくシビアに年齢を意識させられる世界なわけです。たとえば、今はやりの「街コン」。

地域内の飲食店を食べ歩きしながら、各店で異性とお話するという地域活性型婚活でありますが、ほとんどの街コンでは参加資格が39歳以下。婚活サイトの中にも「入会は39歳まで」と決められているところがあります。

四十路は門前払いってことですね。まあ、まあ、しょうがないですね、若者の中に混じっても浮きまくりそうですし。というわけで年齢制限なしの婚活サイトに登録してみました。

さっそく主戦場となる四十路メンズはどんな方がいらっしゃるかしらと検索してみたんですが、プロフィールに書いてある「相手の希望年齢」の欄が大変興味深いことに気づきました。

四十路メンズで最も多いのが「35〜45歳」あたりの女性をお捜しの方です。要は、自分のちょい下。子供が欲しい人は、もうちょい下。たまに「30〜39歳」という人がいると「お。10コ下か、攻めるねえ」なんて思いますし、逆に「20〜70歳」なんて、やたら年齢幅が広い殿方もいらっしゃると「こいつ本気で婚活する気ねえな」と思ってしまいます。

「20〜30歳」なんてアラフィフを見かけると「アラヤダ、あわよくば若い娘をっていう加藤茶ドリームこじらせちゃってる方?」なんて将来を案じてしまいます。

一方、私のところにもぼちぼちアプローチが入ってきました。たいていの婚活サイトには、SNSの足あと機能みたいな「メッセージ送るほどじゃないけど、まあ気になるかならないかと言えば、気になるかな」みたいな消極的アプローチ方法があるんですよね。それを見てどちらかがアクションを起こせば、メッセージのやりとりをしたり直接会ったり…という段階に進むわけです。

ところが私に興味を示してくるのは、主戦場を大きく上回った55オーバーのメンズばかり。「私は64歳の資産家です」と、やたら財産ありますアピールをしてくるアラカンオジサマや、「長年連れそった妻に先立たれ、残りの人生を共に生きてくれる女性と…」と、やたら人生が重たい喜寿ジイチャマ、なんだかいわくありげな殿方が勢揃いであります。

そうするとサイトにアクセスするとですね、トップページになんというかこう

ショボくれ成熟したオジサマの顔写真がズラッと

「NO DANNA, NO LIFE!」を標榜する私ですら「もうミセスにならなくてもいいかな」と思ってしまうほどの破壊力。サイトは登録無料でしたが、メッセージをやりとりするには有料会員になる必要があります。でもまあこんな調子だったので、有料会員になるのもなあ…と迷っていたある日、同い年の男性からアプローチがあったのです。


写真を見ると「おっ、こんなところに!」とテンション上がるような、まさかのイケメン。さながら泥の中の蓮華のように、心洗われるような思いがいたしました。早速プロフィールを見ますと、こんな内容でした(一部アレンジしてお送りします)。

「私はアメリカと日本とのハープです。
オシャレで優しくて、精力旺盛な男だと自負しております。
海外のインターナショナルスークルで通ってしまい、
そこで女性を大切にするのを見守ってみました。

希望の相手は優しくて、女性らしい笑顔で迎えてくれるドMな方が良いなと思います。
つき合ったら後悔はさせないよう一生がんばて頂きます。
僕の命より嫁、
そして、家族の幸せが大事だと思います。
まるで、奴隷のように一生、生きてるつもりでございます。

ようやく、食欲と男性の季節と言われる、色つく秋になりました。
朝晩は涼しくなり、段々と温度も落ちて気温の差異も多くなるので、
風邪とかインプレッサなど気をつけたいと思います。
熱い情熱と赤ちゃんのような純粋さも持っている純粋青年にメールを下さい!」


ふざけてるwww


なんというツッコミどころ満載な文面! あまりにも面白かったので、思わず「楽しいメッセージをありがとうございます」とお返事しました。

返事は来ませんでした。                 

しばらくして友人にその話をしたら「それってサクラじゃない? そうやって会員を釣ってるって噂、聞いたことがあるよ」と言われました。

そいつにメッセージを送るために
有料会員になっちゃったテヘペロ(・ω<)


とは恥ずかしくて言えなかった、じじょうくみこでありました…。
ちなみに、後でその人のプロフィールを見たら「希望年齢:23〜60歳」になっていました。

By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎


元サイトはこちら。

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じじょうくみこ
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