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2022年年間ベスト~フランス編~

2022年はどのような年だったであろうか。The Weekndの『Dawn FM』から始まり、Earl Sweatshirtの『SICK!』、宇多田ヒカルの『BAD モード』、FKA Twigsの『CAPRISONGS』、Samm Henshowの『Untidy Soul』など、1月だけでも、衝撃的なアルバムが数々リリースされ、胸が高鳴るスタートを迎えた。これでもかというほどの数の作品たちに出会えた年であった。

2022年の年間ベストをこの時期(2023年4月)に選出するにあたって、国絞って選出することにした。(このnoteの最後に小さく2022年の年間ベストを記載)

そして今回、僕が選んだ国はフランス。理由は単純で、フランスの音楽シーンが好きだからである。
(いつかフランスについてもnoteを書けたらと思いながら…)

「フランスの音楽」と言えば何を連想するだろうか。フランスの音楽は特にニッチではないので、それぞれ思い浮かべると思うが、90年以降だとAir、Daft punkNoir Désir、phoenixTahiti 80など挙げられるだろう。ちなみに私は、Pierre Vassiliuが大好きである。(余談)

それでは早速、2022年の年間ベスト~フランス編~を選んでいきたい。(順番に特に意味はない)

①La Femme "Teatro Lúcido"(2022)

 La Femme、2021年に引き続き本当にありがたい。今作もLa Femmeらしいのエキゾチックな作風である。そして、まさかの全部スペイン語という…(笑)私がフランスの曲を聴く理由として言語的魅力が1つで挙げられるため、初めて再生した時に衝撃を受けた(色んな意味で)。アルバムは豪快で逞しいインスト曲「Fague Italienne」からスタート。2曲目「Cha-cha」。これは素晴らしい。サイケのような歪み、ハイテンポで気持ちがよい。チャッチャと体が動く。
 そして、アルバム名でもある「Teatro Lúcido」という楽曲は、ボーカルの音声がボーカロイドのようで、アルバム内でも特に印象的である。「El Conde-Duque」や「Tren de la vida」ではアコースティックで綺麗に内なる音楽の魂を聴かせてくれる。胸が熱くならずにはいられない。ここの歌詞だけでもスペイン語を学習して仲間と肩を組んで歌いたい。
「Sacatela」「Y tu te va」「No pasa nada」先行シングルで、出ていた3曲。アルバム内で特に際立つ楽曲なので特に何も言う必要が無い。
 私は今作がLa Femmeで一番踊れて、実験色も強く、愛嬌のある作品だと思っている。愛嬌と表現しているが、それはアルバムが全体を通して、軽くて可愛らしい曲が多く、聴きやすいからである。
 そうは言っても、かなり情報量の多いアルバムで、まだわかり切れていない部分も多い。まだまだ新たな発見がありそうだ。

②AMOUË "Vol.Ⅰ"(2022)

AMOUËの音楽は非常にメランコリックで、引き込まれる。AMOUËは、KAZY LAMBISTのグループに参加し、そこで初めて音楽界に歌声を出したとか。そこから音楽を作詞作曲すると決意し、「人生、死、愛」を表現する言語としてフランス語を選んだ。(AMOUËはベトナムに住んでいた時期があることから、恐らくどの言語で作曲するかも考えたとみられる。)
 アルバムは17分ほどである。これはEPで通してもよろしいのであろうか。(アルバムとEPの境目があやふや)作品は短いが、満足感がある優しいポップアルバム。楽器の生っぽい厚みのある音と電子的な音が融合され、心地の良い。最初の一曲「Billy」で心奪われる。終わりの「A L'AUBE」で「alors, alors,tu finiras…」で胸がキュッと締め付けられる。繊細で美しいアルバムをありがとう。彼女のこれからの活躍を見逃せない。

③Charlotte Fever "Embrasse coulée"(2022)

 私が唯一、フランスのアーティストで生で見に行ったことのあるCharlotte Fever。(嘘でしたphoenixあります)男女デュオでこれもまた幻想的、サイケデリックで独特のシンセサイザーである。キラキラした楽曲であるが、どこかダークで色っぽい。
 こちらの作品もAMOUËと同様、5曲16分37秒と短い。今はまだリスナー数が8万人に達していない(2023年4月23日時点)が、『Emily in Paris(エミリー、パリへ行く)』のサントラに使われたり、アジア圏に演奏しに回っていたり、Charlotte Feverも今後の活躍が楽しみなデュオである。

 ちなみに、去年(2022)の年末にCharlotte Feverを見に行ったのだが、爆踊りシンセサイザーで、非常に良かった。私自身、彼らの来日が衝撃的過ぎて、インスタグラムのDMで、謎の「あなた達のライブに行きます」といった内容を送り、チャットを少ししていた(返ってきた!)。公演後、出てきてくれたので、カタコトのフランス語で愛を伝え、「インスタグラムでDM送ってた者です」ということも伝えられ、お話もできて、とても良い時間だった。そんなことから、彼らの作品は私にとって非常に思い出深く、大切である。

④Lomepal "Mauvais Ordre"(2022)

 王者Lomepalが戻ってきた!!Lomepalはフランスのラッパーで、5本の指に入るくらい人気があるのでは。(そんな気がするが実際は知らない。フランス人の友達は、みんな知ってる)2019年から沈黙していたため、新しいアルバムを出すと告知を見た時、衝撃と期待と胸が熱くなっていた。
 アルバム全体として、軽くて勇ましい印象。一曲目の「Mauvais ordre」は、どちらかというとスローで歌ものであるのに楽曲の繊細さに欠ける。歌ものラッパーという点ではドレイクと形式は似ている。ビートが全く異なるので、フランスのドレイクとは言い難いが。
 Lomepalは今作も否定的でマイナスな表現がみられる。しかし、「Mauvais Ordre(楽曲)」に出てくる歌詞「Je sais pas le faire(やり方がわからない)」ことを悲観的に表現しておらず、所詮「クソ」と思っている精神性が汲み取れる。コロナを経て彼の中に大きな変化があったように思える。
 後半の「Decrescendo」は、悲劇のような強いピアノで男女について「デクレッシェンド~」と劇的に歌っていて、Lomepalがここまで”よくある”ドラマチックな楽曲を作っていたのが斬新であった。新しいLomepalを見ているようだ。

⑤Joe la panic "Morphée"(2022)

 グルーヴィで歌詞を口ずさみたくなる、そんな作品だ。Joe la panicは、モンペリエ出身のシンガーで、「ジャズとポップの間を行き来している」と自ら語っている。ボサノヴァや、フォークセルジュ・ゲンスブールバーバラの歌からも影響を受けており、彼女の作品にノスタルジーを感じる。それだけではない、一番の魅力はJoe la panicの歌声だ。あまりにも美しい。透き通るような声と芯のある厚みのある声を持ち合わせており、うっとりしてしまう。こちらの作品も22分と聴きやすい長さだ。素敵な夜に聞きたい、そんな作品である。

⑥Odezenne "1200 mètres en tout"(2022)

オルタナティブロックのようなアンダーグラウンドなサウンドと、エレクトロニックなサウンド、そしてこのサウンドの中で際立つボーカルの淡々とした声。ラップでも歌ものでもない気だるい感じ。似た要素を持つアーティストはたくさんいると思うが、独特で引き込まれていく。レディオヘッドや、MGMTエレクトロニックロックという構成の点で共通点のあるアーティストとして挙げたい。アルバムは58分と少し長めではあるが、全体にまとまりがあり聴きやすい。鬱すぎず、明るすぎず、でも普通とは言い難い、大好きなアルバムだ。

⑦Bon Voyage Organisation "(loin des)Rivage"(2022)

「天才集団」「神アルバム」というなんとも情けない絶賛の感想が頭に浮かぶ。エレクトロニック・ジャズで、プログレッシブロックの影響もありそうな構成、サウンド。ひたすら音が良い、自然に戻った気分になる。気持ちのいいアルバムだ。サイケ要素もあり、アトモスフェリックな音楽ともいえるだろうか。
構成では、エレクトロニックな展開の中で「Première vue d'Apacheta」のピアノ曲がまた良い味を出しており、飽きの来ないアルバムになっている。

⑧Walk in Paris "Walk Tape Vol.01"(2022)

 このアルバムは、2022年アルバム内で私にとって堂々1位!最高のミックステープ。Walk in Parisはフランス・インディーズシーンの大集団で、バンドでもグループでもない。アパレルがメインなのではないかと思わせるブランド展開している謎の集団。調べているが、中々Walk in Parisをつかめていない。Walk in Parisに参加しているメンバーの作品も素晴らしくてフランスの可能性が溢れている。(現在Walk in Parisのnoteを作成している。近いうちに出す予定)構成としてはカルヴィン・ハリス「Funk Wav Bounces 」に似ており、この形式なんていうのだろうか。オムニバスでもなければコンビネーションでもない。ちなみに構成は似ているが音楽は全く異なる。フランスのインディーズ・シーン、各アーティストの魅力が詰まった宝石アルバム!!

⑨フランス語圏番外編

実は8作品フランスという国に絞ってベストを作成したが、フランス語圏の地域は他にもたくさんあるため、フランス以外で良かったフランス語圏のアルバムをここに4枚ほど記したい。

⑴Vendredi sur Mer "Métamorphose"(2022)スイス

⑵Mon Doux Saigneur "Fleur de l'Âge"(2022)カナダ

⑶Roméo Elvis"TOUT PEUT ARRIVER"(2022)ベルギー

Angèleの兄

⑷1969 Collective "1969"(2022)カナダ


まとめ

このような感じで今更ながら、2022年年間ベスト~フランス~を選んでみた。2022年フランス、フランス語圏、フランスインディーズシーン、素敵な音楽をありがとう。少しばかりのラブコールとしてnoteを書いた。2023年もどのような作品が生まれてくるのか、とても楽しみである。
プレイリストはこちら↓↓

年間ベスト2022

こっそり…
①   arctic monkeys "the car"
② joji  "SMITHEREENS"
③   Walk in Paris   "Walk Tape Vol.01"
④ betcocer!!  "卵"
⑤ ゆうらん船 ”MY REVOLUTION”
⑥   1969 Collective "1969"
⑦ 宇多田ヒカル “BADモード”

⑧   Kendrick Lamar "Morale & theBig Steppers"

参考資料
"AMOUË chanson française" DAY DREAM MUSIC
( Bertrand"Après une pause, le rappeur Lomepal livre "Mauvais Ordre" : "Je ne voulais surtout pas refaire la même chose""franceinfo culture
(https://www.francetvinfo.fr/culture/musique/rap/apres-une-pause-le-rappeur-lomepal-livre-mauvais-ordre-pour-son-retour-je-ne-voulais-surtout-pas-refaire-la-meme-chose_5364523.html)
各アーティストのSpotifyの説明欄など





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