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[井浦新の日曜美術館]

初版発行:2014年8月6日
著者:井浦新
出版社:青幻舎
ジャンル:エッセイ

 本は常に10冊程度同時読みをする為、昨日のUPに続く形になる。
 国立新美術館へ行った際にベタだわと意識しながらも他のデザイン品と共に購入する。
 この本に惹かれたのは書名「日曜美術館」ではなく作者「井浦新氏」本人。
 彼を観る目的ではない映画の中で、気が付くと彼の演技を観ていることが何度かあった。印象に残る役者だった。特に彼について興味を持って調べたこともなかったが彼の演技から受けた印象が間違っていなかったことをこの本で確認することになる。
 あまり期待をせず購入した本だったが、手に取ると装丁はとても丁寧で彼の為に皆が心寄せて作り上げた感が伝わる。こうしたことは電子書籍では出来ない世界だ。表紙を見た瞬間、写真家の植田正治氏へのオマージュだと解ったことも、今になって振り返ると期待していない割には見ていて判断材料にしていたようだ。
 学究的な言葉など使わず、いや彼はそうした他人の言葉を使わなくてもとても丁寧な自身の言葉で感性を表現できている。役者所以か。創元社の「知の再発見」シリーズのように情報は詰め込まれてはいない、また、美術書のような初心者には解り辛い表現も無い。
 彼がその作品に辿り着いた過程や、そこから得たものが章ごとに綴られている。根底には彼自身が最初に述べている幼少時の「フィールドワーク」があることが、どの章を読んでも伝わる。彼がいう「何事にも通じる話ですが一回や二回通ったくらいで知ったとか理解したとはいえない」当たり前のことを皆が実践している訳ではないが、彼は少なくともしている。

 「…写真が切り取る「一瞬」というものを、ゆうに飛び越えていて、「一瞬の前後」までも切り取っている。川にかかる霧の絵を見ていると、空気の流れに湿気までも感じられます。」P52

 表現者は表現することが最終形、其処には難解な言葉は不要だ。彼もデザインブランドを立ち上げる等actorも含め表現者であるからこそ自然と平易な文で伝えていたのかもしれない。このエッセイで言葉に昇華していない部分は演技等に現れているに違いない。

「匠文化機構」理事をしていらっしゃることをこの本を読んで知る。

  

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