「The Son 息子」
原題:The Son
監督:フロリアン・ゼレール
制作国:
製作年・上映時間:2022年 123min
キャスト:ヒュー・ジャックマン、ローラ・ダーン、ヴァネッサ・カービー、ゼン・マクグラス、アンソニー・ホプキンス
「高名な政治家にも頼りにされる優秀な弁護士のピーターは、再婚した妻のベスと生まれたばかりの子供と充実した日々を生きていた。そんな時、前妻のケイトと同居している17歳の息子ニコラスから、「父さんといたい」と懇願される。初めは戸惑っていたベスも同意し、ニコラスを加えた新生活が始まる。ところが、ニコラスが転校したはずの高校に登校していないことがわかり、父と息子は激しく言い争う。なぜ、人生に向き合わないのか? 父の問いに息子が出した答えとは・・・」*公式ホームページより
監督の前作品「Father」を2回も観に行った経緯がある。家族三部作の第二弾がどう描かれているのか興味深かった。
不登校で始まる兆候を親としてどう捉えていくのか。単に登校させることだけが問題なのではなく、不登校にならしめた理由を探らないことには解決は遠い。まして、この作品の彼は意識して学校を拒否しているのではない。
彼自身の表立った看板は「不登校」になってしまっているが実は違うことで苦しんでいる。けれども、ニコラスは自身の生き辛さをどう家族に伝えてよいのか分からない。
少年が抱える鬱はおそらく両親の離婚に端を発している。彼もおそらく認識はしているからこそ大人に対して不倫の結果被っている置き去りにされた子の苦しみをぶつけてはいた。
父の再婚相手が抱く子は母を苦しめている存在でもある。べスに「父が妻帯者と知って近づいた」とニコラスは問い詰める限り、父と一緒に住みたいとニコラスが告げても父の新しい家庭の中にニコラスの居場所は無い筈。
再婚した父の家で過ごしても弁護士である多忙の父と過ごす時間は限られている。ニコラスが欲しいのは父の横の場所。
それが一つの家の中ではないことがニコラスを苦しめる。
作品タイトル「son」には、祖父アンソニーと父ピーターの親子関係と息子でもあるピーターが一方では父となるピーターとニコラスの関係が含まれている。
厳格な反面教師だった父のようになるまいと努めながら、結局は父と変わらない息子への態度に自らを顧みるピーター。
悲しいことに父と子の拗れた関係よりも更に深くそこへ息子の鬱という病気が入り込む。
不倫で新しい家庭と持った親と子の関係だけであればニコラスの苦しみは少しは癒す手立てがあったかもしれない。もし、親が離婚せずに鬱のニコラスの傍に両親が居てくれたなら状況は変わったかもしれない。しかし、作品としては父の不倫から歯車は狂ってしまっている悲しさ。
世の中には多くの難病があり罹患した人の苦しみを健常者が理解することは中々難しい。それでも、例えば作品で扱われた鬱という病気へも周知の努力があるとしたら鬱を抱える子らの両親は多少は救われるのだろうか。
親と子の関係。加えて、鬱病との関わり方。
考えさせられる主題が声高にならず丁寧に描かれていた。
★★★