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壱岐を訪ねる二泊三日・小さな島に150を超える神社を持つ島:⑥天手長比売(あめのたながひめ)神社跡と天手長男(あめのたながお)神社

 訪問する前から、地図を見る限り道路と正確には田畑をも挟んで約200mの近距離に在る天手長比売神社跡(あまのたながひめ)と天手長男神社(あめのたながお)が気になっていた。
 神社の名前も対のようで、謎はそのままに訪ねる。

天手長男神社から向かいの天手長比売神社跡を見る

 その昔ふたつの神社の鳥居間には川が流れ、七夕の話と似て年に一度、向かいの天手長男神社男神天手長比売神社姫神が逢瀬を楽しんでいたという民話が残っている。*現在天手長比売神社姫神天手長男神社に合祀されていることから天手長男神社の夫婦円満祈願が生まれたのかも知れない。

入口の灯篭

 趣きある立派な灯篭の上におよそ不似合いな逆立ちをした愛嬌ある狛犬が私たちを出迎える。因みに灯篭は片側だけに在った。狛犬の前にある扁額には天手長比売神社天手長男神社の名が彫られていた。*上の写真を拡大すると確認可能

簡単過ぎる説明版

 この日は秋晴れのとても空が明るい日だった。周囲には車が走る音も一切なく、観光に訪れたのは私たちだけで他に音を立てる者もいず静か。

タイトル写真と同じ

 囲まれた木々の間から零れる木漏れ日の所為か、物語が生まれた場所と言われたなら素直に頷かせるものがあった。

天手長比売神社跡 1 基壇だけが残る
天手長比売神社跡 2 広くはない社跡
天手長比売神社跡 3

 天手長比売神社跡とされる場所はここに社がどのように建っていたのか想像が難しいほど狭い。けれども、まるで宴の後のように残された物らの存在が雄弁な装置になり私は今とは違う時空にでも足を踏み入れたような錯覚を覚えるほどだった。この感覚は決してスピリチュアルとは表現したくない。
 かつて神聖だった場所の残り香のような空間。

鎮座地:壱岐市郷ノ浦町田中触877
御祭神:栲幡千々姫命・稚日女尊・木花開耶姫命・豊玉姫命・玉依姫命

友人が撮った一枚

 今は跡だけになっているが、天手長比売神社は日本文徳天皇実録(879年)に官社に列された記述があり由緒正しい歴史を持つ。
 また、延喜式の中でも延喜式神名帳と言われる9・10巻(927年12月編纂)「官社」に指定された全国の神社(式内社)一覧に壱岐嶋24座石田郡12座の中に天手長比賣神社の文字が見られる。

延喜式の記述 *国立公文書館デジタルアーカイブス

 研究では諸説あり、本来の天手長比売神社の所在地は不明とはいわれているらしいがそうしたことも単に一説なのだと言わせる静かながら1965年に遷座し何十年経ても未だ存在感纏う場所だった。

天手長男神社

路番号:山の路(37)
鎮座置:壱岐市郷ノ浦町田中触730
御祭神:天忍穂耳尊・天手力男命・天鈿女命
例祭日:
新4月第3日曜 春祭 大神楽
新10月13日 例祭 神幸・大神楽
新12月16日 神迎祭 大神楽

 駐車場が社殿近くに在るとは知らずに鳥居側から鉢形山の山頂にある天手長男神社の社殿に向かい137段を上った。
 鏡岳神社300段の後だったこともあって苦労せず上ってしまう。

天手長男神社 階段途中から見上げる

 この神社では安産・夫婦円満を祈願するという現実的な意味合いが強いのか残念ながら風情を感じることは出来なかった。

 ここから出土した石造弥勒如来坐像には延久二年(1070)の銘があり、日本で三番目に古い石像として国の重要文化財に指定されているとのこと。



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