見出し画像

【ポーカーチェイス】Dual AoF Strategyについて(ステージ6)


はじめに

この記事の読者の大半はNash ICM Calculatorなどでステージ6ポイント配分下の均衡上のAoFレンジをよく勉強していることと思います。その上で、実際の環境では均衡よりも幅広くコールされてしまい、勉強したもののうまく使えずに困っている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?例えば全員12BB持ちのときBTN pushレンジは98.2%、それに対するBBコールレンジはわずか9.8%と出ますが、実際にはBBに広くコールされてしまうため、リスクを背負えずに98.2%頻度のオールインを躊躇ってしまっている方もいることと思います。この記事では、そんな方々のために24年4月現在のステージ6環境に特化した戦略を1つ提案いたします。

Dual AoF Strategyのコンセプト

次のような状況を考えてください。ブラインドは390/780、全員38.5BB持ちで、あなたはUTGでゴミハンドが来たため素直にフォールドしました。するとそれまで普通にプレイしていたはずのBTNのプレイヤーが突然38.5BBの一撃オールインをしました。それを見ていたあなたは、BBがどのようなハンドでコールすると予想しますか?また、ブラインドが550/1100、全員27BB持ちの状況で、HJのあなたがフォールドしたあと先ほどのプレイヤーがSBから27BBオールインをしたとき、BBのコールレンジはどれくらいであると予想しますか?
読者の中には例えば「前者は8ポケ以上、後者はSBからだし7ポケ以上とか、AQ以上とか、ひょっとするとスートならATsあたりからかも?」と予想した方もおられるかも知れません。あるいは前者はともかく後者はもっと広くコールされると予想した方もおられるかも知れません。そもそもそんなプレイをする人が稀なためここは読者の方々の感覚によると思いますが、少なくとも上記のレンジを見て感覚とそこまで差がないと感じた方々も一定数いるかと思います。

ここでNash ICM Calculatorの計算結果を見てみましょう。均衡上のコールレンジは前者で88+、後者で77+/AQo+/ATs+と表示されます。そうです、上のように予想するのであれば、BBは均衡通りにコールしてくれる、裏を返せばこちらは均衡通りにオールインできるのです。これこそがDual AoF Strategyのコンセプトです。すなわち均衡通りコールしてくれるスタック(筆者は25〜40BB程度と考えています)で一度AoF戦略を取り、均衡より広くコールされるスタックではAoFを避け、煮詰まってきたタイミングで再びAoF戦略に移行する戦略を本記事ではDual AoF Strategyと呼びます。

Dual AoF StrategyのEV

以降、均衡通りにコールしてくれるスタック範囲を25〜40BBと仮定し、Dual AoF StrategyのEVをおおまかに計算してみましょう。
序盤で特に事故が起きなかった場合、ブラインド390/780で平均スタック38.5BB、次のブラインドでは平均27.3BBなので、この6分間だけ一時的にAoF戦略をとることになります。
統計情報によると、1回のブラインド上昇までに平均4ハンド配られます。すなわちこの6分間に平均8ハンド配られることになります。また、Nash ICM Calculatorの計算結果と5000ハンド分のスタッツ(ポジション別オープン頻度)をもとに計算すると、ブラインド390/780では平均20.1%、ブラインド550/1100では平均27.6%の頻度でオールインできます。5000ハンド分のスタッツの詳細については下記記事をご参照ください。

また、キャッチされた時の勝率を33%として計算するとオールイン1回あたりのランクポイント期待値は+0.6ptとなります。

これらをもとに計算すると、この6分間での獲得ポイント期待値は+1.2ptであり、キャッチされるなどの事故がなければブラインド820/1640突入直後にはブラインド上昇で目減りしてなお+3.4BBのアドバンテージを得ており、事故らなければ周りが18BB程度のなか1人だけ21BB持ち、約90%の確率で+3pt相当の優位性を築き上げていることになります。
いかがでしょうか?読者のあなたはこれほどの高確率で3.4BBも稼げるでしょうか?少なくとも筆者程度の実力では困難であり、フロップを開いてしまうとどうしてもこれよりハイリスクな戦略しかできません。これほどまでにローリスクで優位になれるのがDual AoF Strategyの利点です。
また、副次的な利点として、AoF戦略をとることでフロップが開かれる回数を減らすことができ、その分プレイできるハンド数が増えるためさらに自分だけが有利になるという点が挙げられます。

結論

Dual AoF Strategyについてまとまると、以下のようになります。

  • 相手が均衡通りコールしてくれるタイミングで、こちらから均衡通りにオールインする

  • 極めて高い確率で+3pt相当のアドバンテージを得ることができ、大事故を考慮しても期待値は+1.2pt、すなわち200戦で+240pt分のランクポイントを稼ぐことができる

  • プレイできるハンド数が増えるため実力を反映させやすくなる

  • コンセプトが極めてシンプルなため、容易に他の戦略と組み合わせることができ、アレンジの幅が広い

いかがでしたでしょうか?
読者の中には、それでもなおポストフロップでエッジを出せると考えている方もおられることと思います。なにより筆者自身がこの戦略を編み出してなおポストフロップが大好きなのでこのブラインドでもよく遊んでいたりします。そんな方々のために、5000ハンド分のポストフロップのスタッツを公開しておりますので、是非参考にして勝ちまくってください!

また、さらにポーカーを深く勉強した方の中には、ステージ6のBBコールレンジに違和感を持たれた方もおられることと思います。筆者もそのうちの1人であり、2万ハンド相当のデータを集計したところ、実際にBBコールレンジが均衡から大きく乖離していそうだということが判明し、それゆえにBBは致命的なリークを抱えていることを発見しました。ご興味のある方は下記記事をご参照ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?