Falling in reverse『Popular Monster』(2024)
アメリカ ラスベガスにてRonnie Radkeを中心に結成されたポスト・ハードコア/ラップメタルバンド。
Ronnie Radkeは2006年当時、Escape the Fateのリードシンガーであったが、友人の口論に巻き込まれ、暴行予備罪と過去の麻薬歴により逮捕。さらに執行猶予中に必要な報告を怠ったとして投獄、2年の禁錮刑を言い渡される。
その間にEscape the Fateを解雇されるも、監獄の中で知り合ったメンバーとFrom Behind These Wallsというバンドを結成。
保釈後、公に活動を再開するが、著作権の問題でFalling in Reverseに改名すると同時に、Epitaph Recordsと契約し、『The Drug in Me Is You』で2011年に再デビュー。
このアルバムはビルボードチャートをみるみる上昇し、最終的には異例の19位にランクイン。
Vans Warped Tour 2011を始め、数々のフェスに出演、Black Veil Brides(ツアー後半はVoの負傷によりキャンセル) 、Skip the Foreplay やOh, Sleeper とのツアー等を経て、2013年には2枚目のアルバム『Fashionably Late』をリリース、そしてなんとそのプロモーションツアーを喧嘩別れしたEscape the Fateと回ることが発表される。
これを機に度々ツアーを回ることが恒例になり、互いに和解に至っていることが明らかになった。
このツアーは話題を呼び、アルバム自体もアメリカでは17位、オーストラリアでは20位、UKでは75位というセールス的にも好評を得て、2015年には『Just Like You』、2017年に『Coming Home』という名盤を次々に世に放つ。
アルバムごとにポストハードコア、パンク、エレウトロニカ、オルタナロックと作風を徐々に変化、進化させてきた彼らだが、2024年発表の『Popular Monster』では軸足をHipHop、Rap Metalに置いた曲を並べることでモダン化している。
特に本アルバム収録で、先行リリースされ全世界で8000万回視聴された『Watch the World Burn』は前半はHipHop、中盤は高速ラップ、そしてコーラスでは壮大なメタルコアからのデスコアを繰り広げるというミクスチャーの最新形を見せている。
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* Ronnie Radke – lead vocals
* Chris LaPlante – lead guitar
* Christian Thompson – rhythm guitar
* Tyler Burgess – bass
* Luke Holland – drums, percussion
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■Prequel
Ronnie Radkeの半生を振り返るようなダークな歌詞が悲壮感あふれるクワイヤに包まれたサウンドをバックに紡がれる。
後半から繰り広げらる荘厳すぎるサウンドはもはやメタルコアの領域を超えて、罪の告解から壮大な赦しと救いへの階段が開かれたかのようなチューン。
■Popular Monster
先行リリースの時点ですでにゴールドディスク獲得された曲。
暴力的で、しかしどこか癒しに満ちたヒールソングでもある、しかしやはり破壊的であるRonnieの性(さが)を否定しきれない皮肉な内容。
Popularという「皆から受け入れられている」という意味のポジティブな響きと、「皆から決して受け入れられない忌避すべき存在」というMonsterという悲しみに満ちた言葉が織りなすなんともグロテスクな美しさを放っている。
MVは閲覧注意。
■All My Life
アメリカンなカラッとしたハードロック。
90年代だったらNight Ranger、Great WhiteやDokken、2000年代だったらFFDPに通じる陽気なカントリーロックの息吹を感じるチューン。
JELLY ROLLがゲスト参加。
■Ronald (feat. Tech N9ne & Alex Terrible)
0:00からいきなり最高速で飛び出す強烈で極悪なコアチューン。
ラッパーのTECH N9NEとSLAUGHTER TO PREVAILのAlex Terribleが参加した豪華なアレンジで極限のモダンヘヴィネスを作り上げている。
TECH N9NEの超高速ラップ→地割れを起こしそうなバスドラダブルペダル連打→超絶グロウル&ブレイクダウンの流れは鳥肌注意。
■Voices In My Head
ラップでダークな世界観を紡ぎ、
EDMを取り入れたサウンドで重厚な音の塊を造り、
クリーンでキャッチーなコーラスは混沌世界に差し込む一筋の光のごとく、
最後に訪れるDjentギターとブレイクダウンは再び地獄のような空間を演出する。
■Bad Guy (feat. Saraya)
Sarayaが弾き出すサグいラップと絡みあうRonnie Radkeのヴォイスが存在感を放つラップチューン。
■Watch The World Burn
ラップ、メタルコア、スピードメタル、デスコアの全てがハイレベルでミックスされ、もはや一つの芸術作品。
ハリケーンのようにあらゆる音の暴力に曝される3:23の瞬間芸術。
■Trigger Warning
軽快なリズムに乗って弾むラップメタル。
キャッチーでアルバムの中で最もストレートなチューン。
煌めくようなピアノの音色が涼しげに響く。
■ZOMBIFIED
綺麗なメロディックメタルコアチューン。
クリーンを歌わせてもやっぱりRonnieは歌ウマだった事を実感させてくれる。
今回のアルバムの中でPopular monster の次にシングルリリースされた曲。
■NO FEAR
鬼気迫るラップで臨場感を煽るメタルラップチューン。
Dopeなflowを次々にキメてくる。
■Last Resort - Reimagined
Papa roachの同名曲のシンフォニックアレンジカバー。
最初に聞いた時、まさかこのバンドがこのアレンジでくるとは、と驚嘆した。
Ronnieの歌唱力がこの曲に全く新たな価値を付加してくれている。
最後の慟哭シャウトは全身の毛が逆立つ。
総合満足度 90点