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Intervals『memory palace』(2024)

カナダ出身のギタリストAaron Marshallによる超テクニカルプログレッシブインストバンドIntervals

所謂バカテクミュージシャンをかかえたインストバンドは世に数多あれど、ただのテクニック至上主義の自己満プレイで観客を置き去りにするようなバンドもまた多いのは確かだ。

しかしこのAaron Marshallは違う。

彼の弾くギターは、ボーカルが歌を口ずさむ様に滑らかに美しいメロディを発する。
その幅広くて奥深いサウンドは究極のインストルメンタル•コミュニケーションといっても良い。

2011年にMatt De Luca (bass)、
Lukas Guyader(Guitar)、Anup Sastry(Drum)という編成で 発表された1st EP『THE SPACE BETWEEN』は好評だったものの、同業界にはAnimal As Leadersという巨人がいたため、そこまで世間を驚かせる一枚ではなかった。

そして、2012年に発表された初のスタジオ・アルバム『A VOICE WITHIN』は、気の迷いからか、Matt De LucaからチェンジしたベースのMike Semeskyがボーカルを取るというまさかの編成だったが、名プロデューサーJordan Valeriote (Silverstein, Structures, Counterparts)によって、名盤の一枚にはなった。
さらにツアーもProtest the HeroやTesseracTといった名実ともにハイレベルなバンドと回ることで、徐々に認知度も向上。

しかし、彼らのやりたいサウンドはそこにはなく、2015年リリースの『THE SHAPE OF COLOUR』では再びインスト路線に戻ることに。

この迷走が、歌いたいMike Semeskyをはじめとしたバンドメンバーとインストで行きたいAaronの間に溝を深く空けてしまい、メンバーが相次いで脱退、現在の正式メンバーはAaron1人のみのソロプロジェクトとして再始動する。

2017年『The Way Forward』、2020年『Circadian』の2枚を経て、2024年に発表された最新アルバム『memory palace』は、過去最高にテクニカルで、グルーヴィーで、メロディックな一枚に仕上がった。

Intervalsの、いやAaron Marshallの才能が迸る珠玉の一枚。

memory palace


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* Aaron Marshall – guitars, co-production

レコーディングミュージシャン
* Jacob Umansky – bass
* Nathan Bulla – drums, percussion
* KOAN Sound – synthesizers
* Julian Waterfall Pollack – guest piano
* Evan Marien – guest bass
* OBLVYN – guest synthesizers
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■neurogenesis (feat. KOAN Sound)
開幕から小刻みな音符と休符が入り乱れるマスい展開と、爽快で図太いグルーヴが主導するプログレッシブチューン。
前作から増えだした電子的なシンセサウンドは今回も健在、と思いきや、これはおそらくフィーチャリングのKOAN Soundによるものかと。
軽快に走りつつ、突然急ブレーキを踏んで停止と急発進を繰り返すような一筋縄ではいかないような流れも。
フュージョン的な空間を意識させるような音作りも誠にチルくて良きです。


■mnemonic
Aaronのギターが自由自在に飛び回り、雲間を切り裂くようなソリッドなメロディから超高解像度の粒立ったショートノートまであらゆる表現を惜しげも無く放つ。
新世代のマスコアインストチューンの真骨頂ここにあり。



■galaxy brain (feat. J3PO)
緩やかなリズムとともに始まり、強烈なベースのスラップ音が目を覚まさせるヘヴィな逸曲。
5弦ベースであるが故の存在感も際立っており、単純なリズムに聞こえてもほんのゼロコンマ何秒か遅らせたり、ゴーストノートを挟んだりと絶妙なグルーヴを煌めかせてくる幸せな空間。



■nootropic
細かな刻みギターと変拍子ビートの嵐ながら、一本通った強靭なグルーヴが存在感を放つチューン。
「あ、ついでにこれも」って感じでスラップベースが紛れ込んでくるが、明らかについでレベルじゃなくてもう白目。
1:30からの歪みまくった手触りで細かく掻き鳴らす所はうれション止まらず。


■side quest (feat. Evan Marien)
90年代プログレバンドでよく聞いたシンセサウンドが際立つチューン。
RUSHやジェネシス、初期ドリムシのオマージュかな。
比較的ゆったりした軽いリズムで進む。


■circuit bender
複雑に飛び散る音を広い集めるかのようなヴァースから、全ての音が、メロディが一本のうねりに統合される開放的なフレーズに傾れ込む展開が最高にカタルシス。


■lacuna (feat. OBLVYN)
DJのOBLVYNをゲストに迎えて放つ浮遊感溢れる近未来チューン。
近未来っぽさはあるんだけど、シンセの音はどこか懐かしさもある。
残り30秒のところで突然ヘヴィサウンドでブレイクダウンしてくるので注意してください。


■chronophobia
ドラムと五弦ベースのタイトでモダンヘヴィなリズム隊の上で自由に駆け回るAaronのフレーズが輝きを見せ続けるチューン。
アルバムを鮮やかに締めくくる煌びやかな曲。


総合満足度89点

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