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Apocalyptica『Worlds Collide』(2007)

フィンランドが誇るチェロメタル・バンド4人組。名門シベリウス音楽院出のチェリスト3人とドラマー1人による異色の編成。

メタルが大好きな若きフィンランドのクラシックチェリスト4人(Eicca Tooinen、Paavo Lötjönen、Max Lilja、Antero Manninen)が面白半分でMetallicaのカバーをしていた所、意外とその音色にハマっていたとのことからApocalypse(黙示録)とMetallicaを組み合わせ1993年にバンドを組んだのが始まり。

1996年にメタリカのカバーアルバム『Plays Metallica by Four Cellos』でデビューし、カバーアルバムとしては異例のヒットを記録、1997年には2ndアルバム『Inquisition Symphony』をリリースし、Faith No MoreやSepultura、Panteraもカバーした。

1999年にAntero Manninenが脱退し、Perttu Kivilaaksoが加入。

2000年にはカバーソングは2曲に留め、初めてオリジナルソングを全面的にフィーチャーしたアルバム『Cult』をリリース。
Eicca によるパーカッションやVoの導入など新たなApocalypticaの魅力が詰まったアルバムだったが、同年バンドを支え続けたMax Liljaが脱退してしまう。

2003年には全曲オリジナルの4thアルバム『Reflection』をリリース、ゲストでSlayerのドラマー、Dave Lombardoが叩いている。

5thアルバムはセルフタイトルの『Apocalyptica』を冠してリリース。HIMのVille Valo などゲストを起用したものの、セールスは伸びず、しかしグループとしての方向性がようやく固まった兆しが現れていた。
そして、そのアイデンティティがより煌びやかに表出したのが本作6thアルバム『Worlds Collide』になる。

Worlds Collide

布袋寅泰をはじめ、SlipKnotのCorey Taylor、SlayerのDave Lombardo(おかえり)、RammsteinのTil Lindemann、LACUNA COILのChristina Scabbiaなど、多彩なゲストが上手く曲にマッチして、チェロという楽器の魅力を再定義した、クラシック界にも間違いなく大きな足跡を残した一枚。

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Eicca Toppinen -vc
Perttu   Kivilaakso -vc
Paavo Lotjonen -vc
Mikko Siren -dr
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■Worlds Collide
荘厳で緊張感のあるチェロに導かれ、歪んだギターが唸りを上げるアルバムタイトルトラック。
深く澄んだ弦の調べが鳴り響き、前作より重厚になった音に一曲目から酔いしれる。

■Grace
世界のHoteiさんとのコラボ曲。
ドラムも激しく入り、より音質はヘヴィに、硬質に進化。
宙空を舞う様な優雅さ、慟哭するが如き悲哀、滾る昂揚感、チェロが持つ様々な表現の豊かさを余す所なく発揮している一曲。


■I'm Not Jesus
Slipknot/Stone Sourのコリィ参加曲。
コリィの激渋な歌唱と完全にマッチして、最高にクールな世界観を創出している。
曲全体を覆うプリミティブでダークな激情を絡みつくような歌唱で表現した職人業にただ脱帽。
初期のKORNのようなニューメタル感も少しある。


■Ion
タイトに刻むギターと手数の多いドラムが輪郭のハッキリした音像を作り上げるメタリックなナンバー。
一音をひたすら長くレガートする手法で終末観を滲ませながら、どこか耽美な手触りのする奇妙に優雅な世界。


■Helden
David Bowieの曲をRammsteinのTill lindemann がオペラティックに歌い上げる。
原曲とはかなり違う雰囲気。
David Bowieの狂わしい色気とはまた違った厳かで仄暗い色気が漂う。



■Stroke
暖かなチェロの深みのある音色と、熱気を孕んだメタルの歪んだ音が混じり合い、高め合い、感動的な展開を演出している。
日本人が好きそうなメロディ。


■Last Hope
弦が心配になるくらい激しく弾き倒すチェロ部隊と、呼応してしばき倒すが如くDave Lombardoのドラミングが火花を散らす劇的弦楽三重奏。



■I Don't Care
カナダのロックバンド、Saint AsoniaのVo、Adam Gontierをゲストシンガーに据えたハードバラード。
ソウルフルな歌唱が野太いチェロと相性最高でパーマネントメンバーとして強く加入を求めるレベル。


■Burn
激しく煽り立てるような刻みを繰り返したかと思いきや、暗闇に仄かに光が差すような神々しい調べが漂い、チェロの奥深さを感じられる逸曲。


■SOS(Anything But Love)
LACUNA COIL のChristina Scabbia嬢フィーチャリング曲。
透き通るような美しい声に、クドくなりすぎない弦の調べが絡むエピックなしっとりハードバラード。


■Peace
怪しく揺らぐ悦楽と狂気の美旋律。
チェロにしか出せないこの深淵なる響きは、本当の意味で”ネオ”クラシカル。

総合満足度 89点

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