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Brymir『Voices in the sky』(2022)

フィンランド発 シンフォニック/メロディックデスメタルバンドBrymir(ブリュミル)。

2006年に、Viktor Gullichsen(Vo)、Joona Björkroth(Gt)、Sean Haslam(Gt)を中心に結成されたLai Lai Heiというグループを元に活動をスタート。
コンペティションで優勝するなどすぐにその実力の頭角を表すと、メジャーデビューを目指し、バンド名をBrymirに変更して、本格的に活動することとなった。
結成時のメンバーは、Viktor Gullichsen、Joona Björkroth、Sean Haslam 、Jarkko Niemi にKeyのJanne Björkroth、DrのJaakko Tikkanenの6名体制。

何曲かデモを作成し、デビュー直前まで進むも、Jaakko Tikkanenが2009年に脱退。
代わりにSami Hänninenが加入しレコーディングを本格的に開始、無事に2011年に『Breathe Fire to the Sun』(SpineFarm Record)でデビューを飾る。
このアルバムが各地で評判を呼ぶも、そのSamiは(Battle BeastをクビになったAnton Kabanenが結成した)Beast In Blackに参加するため、このアルバムを最後に脱退。
屋台骨がなかなか定まらず、デビューしてすぐに作風迷走時期に入る。

それでも、新たなドラマーとしてPatrik Fält を加入させると2ndアルバム『Slayer of Gods』 をリリース、前作よりテクニカル要素は減退したものの、シンフォニックアレンジやメロディが際立つ北欧メロデスに寄ったサウンドが受け、2017年のSuomi Festにラインナップ。InsomniumDark FloodWhisperedRE-ARMEDと同じステージに立つ。

しかし2019年には、とうとうオリジナルメンバーであったJanne Björkroth までもが掛け持ちしていたBattle Beastに専念するため脱退。
Battle BeastやBeast in Blackの下請けみたいなバンドになってしまった懸念は強かったが、代わりのキーボードは入れず、5人体制で、3rdアルバム『Wings of Fire』をリリース。
テクニカルなソロや、ブルータリティはそのままに、よりメロディを強くした一枚で、4thアルバムである本作『Voices in the Sky』は、その路線をより進め進化した一枚となっている。

Voices In The Sky

初期のテクデス、プログレデスの様式からは少し作風が変わっているが、クサみを増したそのメロディと大仰なシンフォニックアレンジは、「大袈裟なメロデスからしか得られない養分が確かにある」と言って憚らない生粋のメロデスニキ達を満足させる出来だと思う。

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Viktor "Storm" Gullichsen -vo
Joona Björkroth -Gt
Sean Haslam -Gt
Jarkko Niemi -Ba
Patrik Fält -Dr
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■Voices in the Sky
物悲しくも、冒険が始まりそうな微かな期待も漂うメランコリックなアコギの調べが鳴り響いたかと思いきや、鮮やかなディストーションギターから純度100%のクサメロがトレモロと共に放たれる。
クリーンクワイヤがシンフォニックにコーラスを彩ると、息つく暇もなく、テクニカルに自由自在に飛び回るギターソロが飛び込んでくる。
シンフォニックメロデスの欲しい所が全部詰まっている開幕チューン。


■Forged in War
疾走しながら哀愁を振り撒くメロデス。
同郷のモルスピに近いサウンドで、クワイヤで荘厳な感じを出しつつも、リフでは歪んだギターもダブルペダルドラムも激音に終始し、ブルータリティは欠かさない。
ギターソロも短いながら印象的なフレーズを放つ。

■Fly with Me
リフはskylarkやStratovarius を思わせる天空爽快系トレモロフレーズ。
もうこれだけで白米3倍余裕なのに、コーラスではさらに叙情的な厚みのある美クワイヤが響き渡るもんだからもう感涙でもはやむせ返ってしまう。


■Herald of Aegir
これは「希望に満ち溢れたブラストビート」という新たなジャンル。
ヒロイックに紡がれる殺傷能力の高いキラーフレーズは正に雲間から差す一閃の光明のような輝き。
気合い一発ギュインギュイン系のギターソロも必聴。


■Rift Between Us
メタリックにギャロップしているバッキングギターに乗せてメロディアスでシンフォニックなコーラスが伝播する、カッコ良さを極めた曲。


■Landfall
ブラストビートが飛び散る哀愁メロディに特化したデスメタル。
今の時代、モダンやスタイリッシュなサウンドにこだわるバンドは数多いるが、こういう分かりやすくて原始的なクサいメロディを放ってくれるバンドは貴重。
メタルはやっぱりこのくらいクサい方が良い。

■Borderland
大変だ、フォーキーで民族的な面が全面に出てしまっている(大好き)
ドワーフ的なお爺さんの語りがアクセント的に入っていて、もうバイキングメタルにも接近した北欧フォークメタル。

■Far from Home
エピックメタル調のリフが唸る疾走系メロデス。コーラスはRhapsoy of Fireのアルバムに入っていそうなシンフォニック極まる勇壮なフレーズが流れる。
ギターソロは長尺弾きまくり大会。


■Seeds of Downfall
トレモロで鳴らす叙情リフをブラストビートで炒めてTurisus風のバイキング風味を振りかけたやつ。


■All as One
スチール弦を張ったアコギが終始物悲しげなフレーズを揺蕩わせるスローテンポで重厚なデスメタル。
そしてもはやお決まりと言うべきトレモロギターで奏でられる、線は細いが存在感のある音。


総合満足度 86点

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