Comeback Kid『Broadcasting... 』(2007)
カナダのハードコアパンクバンド。
ウィニペグで2001年に結成。
現在のフロントマンAndrew Neufeld(結成当時はG)とJeremy Hiebertが、当時Figure Fourというバンドに所属しており、のちに彼らの友人であるScott WadeとKyle Profetaが加わりバンドのオリジナルメンバーが固まるものの、まだこの時点ではサイドプロジェクト的な位置付けであった。
バンド名は Mario LemieuxというプロのアイスホッケープレイヤーがNHLにカムバックした際に新聞の紙面に載った時の見出しから取っている。
2002年にFacedown Recordsと契約し、1stアルバム『Turn It Around 』をリリース、Hellfestをはじめ多くのフェスに出演する。
2005年に『Wake the Dead』をVictory Recordsからリリース後、長期のプロモーションツアーに出るも、終了後、VoのScott Wadeが脱退、Andrew NeufeldがVoの兼任となる。
本作『Broadcasting…』は、Vo変更後にリリースされた通算3枚目のアルバムで、彼らの初期のアルバムの中では最高のできと言われる名盤。
Rise AgainstやParkway Driveといった実力派バンドとも大々的なツアーを回るなど、バンドもレーベルもかなり力を入れて制作された。
しかし、Voが変わったことによる原理主義の人々からの反発もあり、その意味では賛否ある一枚かもしれない。
ちなみにこの後バンドは活動休止や再始動、Kyleの脱退など激動の期間に入る。
そんな彼らの「第1章」の集大成的な作品。
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* Andrew Neufeld – vocals, guitar
* Jeremy Hiebert – guitar
* Kyle Profeta – drums
* Kevin Call – bass
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■Defeated
焦燥感を煽るようなビートで疾走し、コーラスではテンポダウンしてシンガロングパートへ。
リフからヴァースまではまごうことなきパンクサウンドなのだが、ハードコアのテイストを大幅に練りこんでおり、よりダイナミズムが発揮されている一曲。
前任者Scott Wadeに比べると、ややザラッとした声質のAndrew Neufeldだが、曲の勢いをダイレクトに放出するパワーは素晴らしい。
■Broadcasting...
アルバムタイトルトラック。
叙情的なコーラスと、スクリーモ的なアプローチが全面に出ている。
前半でブレイクダウン風のテンポダウンもあり、ハードコアの要素もしっかりと入っている。
■Hailing on Me
スタスタドコドコとボトムから煽りまくるドラムにザクっとしたギターを被せ重厚感を感じさせつつ、途中からトレモロ弾きとともに疾走するパンキッシュなナンバー。
■The Blackstone
モッシュ誘発型ヘヴィネスパンクリフが存分に存在感を放つ一曲。
Andrewの苦しそうなシャウトがまた緊張感あっていい。
■Industry Standards
前半は、前のめりなリズムに激しく揺さぶられるパンキッシュチューン。
グルーヴ感ある叙情コーラスが、突如としてテンポチェンジを伴い、
アグレッシブで華やかなフレーズになだれ込むメロコアチューンに早変わり。
二度美味しい。
■Give'r (Reprise)
激しくのたうちまわるようなベースラインとギターワークをひたすら叩きつける1分あまりの瞬間芸。
■One Left Satisfied
キャッチーで聴きやすいメロディックハードコア。
しかし、ここまで連続で聞いているとAndrew一辺倒なシャウトにも若干の飽きが漂いはじめ、変化を求めてしまう。
おそらくこのアルバムがイマイチ評価されないのもこの辺りにあるのか。
■Come Around
突進力のあるアグレッシブな2ビート、唸りを上げるトレモロギター、そしてパンクバンドには珍しく、Voの後ろでキラリと光る存在感を放つリードギターなど、2:30の中に詰め込まれたメタリックな要素がてんこ盛り。
■In Case of Fire
ゆるやかなアルペジオから全速力にギアチェンジするパンキッシュチューン。
このアルバム中唯一といっていいくらい、Andrewがシャウトではなく地声に戻る瞬間があるのだが、それがまたなんとも感傷的で良い。
ザクザク刻むギター音の中にはキャッチーではあるが、甘さや気だるさは全くなく、タイトに走り抜ける姿にはただただ熱いものを感じる。
■Market Demands
サークルピット不可欠な疾走パートや、じっくりとヘドバンをさせてくるパートを交互に繰り出し、オーディエンスをアドレナリンの海に溺れさせる。定期的なモッシュも当然不可避。
■In/Tuition
アルバム最後を飾る曲。
一発一発が重く、リードギターの存在感も煌めいていて、もちろんヘドバン込みでハイテンションで聞いてもいいが、じっくり聞いて新たな発見も求めてくるようなディープな曲でもある。
総合満足度 78点