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Bullet For My Valentine『Temper Temper』(2013)

ウェールズ出身のヘヴィメタルバンドBullet for My Valentine。

Matthew Tuck 、Michael Paget 、Jason Bowld 、Jamie Mathiasというメンバーで1998年に結成されたこのバンドは、元々『Jeff Killed John』というバンド名でMetallicaやNirvanaのカバーをしていたが、2002年に新たにソニーBMGと契約し、Bullet for My Valentineとして活動を始める。

かつてはTriviumAvenged Sevenfold等と並び、ミレニアムバンドとしてデビュー前から早くもシーンを賑わしていたが、2005年に鮮烈なデビューアルバム『The Poison』をリリースし本格的に世界に殴り込みをかけると、その衝撃は凄まじく、この日本でもメタルキッズを中心に大騒ぎで、レビューサイト等でもこの一枚でメタルの歴史を50年以上早めた、とかすごい評価の嵐だった。
確かに今聞いてもこのアルバムはすごい。

ビルボードチャートで初登場128位を記録し、続く2008年にリリースされたセカンドアルバム『Scream Aim Fire』はなんと4位まで上昇、2013年にリリースされた3rd『Fever』、そして本作の4th Album『Temper Temper』もともに20位以内にチャートインするという快進撃を続ける。

ただ、デビューアルバムから3rdまでの快進撃があまりにも凄すぎたせいで、この『Temper Temper』は
某レビュー誌やサイトで「ただのエモバンドに成り下がって売れセンに走りすぎてる」「中身のないアルバム」「盛り上がりポイントがない。Bullet For My Valentineはもう終わった」と散々な書かれ方をしていた。

しかし、本当にそうだろうか。
確かに、初期の触ると切れて血が出そうなくらいソリッドで鋭い感じはなくなったが、耳に残るキャッチーなメロディは健在だし、リフがない、と言われるほどないわけではない。
Breaking Point』『Temper Temper』『P.O.W.』は秀逸だと思うし、後半の数曲ダレるのを除けば、ワゴンセールに直行するほどの駄作ではないと思う。
むしろエモパンクのアルバムとして聞けば、それなりに良盤だと思う。

Temper Temper


という事でレビュー。
—-
* Matt Tuck – vocals, rhythm guitar
* Michael "Moose" Thomas – drums
* Michael "Padge" Paget – lead guitar, backing vocals
* Jay James – bass
——

■Breaking Point
ハードロック調の刻み型のギターリフから、間をうまく作り出す音数の少ないバッキングでほのかな緊張感を作り出し、エモいコーラスになだれ込む。
アグレッシブに、テクニカルに攻め込むギターソロも昂揚感を生み出すエッセンスになっている。


■Truth Hurts
変拍子をちょい混ぜしてくるメロディアスなリフに綺麗なコーラスがしっとりとのるメタル。
めちゃくちゃ盛り上がるかといえばそんなことはないが、高いクオリティでちゃんと聞かせるエモいメロコア。


■Temper Temper
クールでソリッドなギターリフからすでにハイテンション警報が発令し、コーラスではホールがサークルピットの大騒ぎになる画が容易に想像できる。
初期の頃のエネルギッシュなバイブスが煌めくチューン。


■P.O.W.
ミュートの効いたパッジのバッキングギターにマットのソウルフルなシャウトが漢らしくガツっとのる、それでいてしっとりとした手触りのバラード。


■Dirty Little Secret
ホールを揺るがすようなギターリフがヘッドバンガー達の首を縦に振らせるか、拳を突き立てメロイックサインを強要するか、2択を迫る、或いは両立を迫る骨太メロコア。


■Leech
快活に響くミドルテンポチューン。
Mattのvo が最も活きる中音域を行ったり来たりする曲。
リズムのノリは良い、ちょい何か足りない気はするが、ライブでは映えそうな曲。


■Dead To The World
前半はゆったりと滑らかに流れるバラード。
中間部でゴリっとしたリフとスピーディなギターソロを主体に繰り広げられる疾走系プログレメタル。


■Riot
縦ノリのザクっとしたバッキングギターが主張しまくるモダンなメタル。
「Riot!!」のシャウトは問答無用全身全霊で拳を突き立てていくパート。


■Saints & Sinners
ザクっとした手触りのリフは、初期の鋭さを時々思い出させるが、全体的に起伏はあまりなく淡々と進んでいく。
Avenged SevenfoldのSynnister Gatesが乗り移ったようなギターソロは必聴ポイント。


■Tears Don't Fall(Part 2)
名曲『Tears Don't Fall』の続編との事だが、正直このタイトルは安直過ぎて萎えてしまう。
ストーリーを繋げたいなら、歌詞をオーバラップしたり、どことなくそれを連想させるようなアンサーソングにした方がいいなと思ってしまった。
ストレート過ぎるのは結末が分かっているミステリーを読むようで、新鮮味に欠ける。


■Livin' Life (On the Edge of a Knife)
アップテンポで適度にジャキジャキしたギターサウンドがBFMVらしいチューン。
モダンメタルコアとヘヴィメタルの間をたゆたうギッシリとしたサウンド。


■Not Invincible
パンキッシュなサウンドと弾きまくりギターソロが爽快。
Scream Aim Fireあたりと比べると確かにパワー不足だが、これはこれでありな気がする。


総合満足度 83点

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