LINKIN PARK『Meteora』(2003)
祝!!再始動!!!!
アメリカのカリフォルニア発のニューメタル/ラップメタルバンド。
同じ高校時代の友人だったMike Shinoda、 Rob Bourdon、Brad Delsonが卒業後、他校のJoe Hahn、 Dave "Phoenix" Farrell、Mark Wakefieldを誘い1996年に結成したXeroというバンドが母体。
当時当時Zomba Musicというレーベルの副社長だったJeff Blueはバンドのポテンシャルを感じていたものの、Voだけは変えた方がいいとバンドに話し、というミュージックレーベルの社長だったJeff BlueがGrey Dazeというバンドにいた若かりしChesterを推薦する。
1999年、伝説の歯車が動きだした瞬間だった。
これを機に、バンド名をXeroからHybrid Theoryに変更、バンドの目指す方向も大きく前進したかに見えたが、この頃も依然としてレーベルとの契約は結べずに苦労している。
見かねたJeff(この頃はWarner Bros.の副社長)が、バンド名の変更と引き換えにWarner Bros.との契約を約束し、「Plear」「Platinum Lotus Foundation」といった候補の中から、バンドメンバーがよく通っていた公園の名前からとったバンド名に最終決定、ここにLinkin Parkが誕生する。
2000年『Hybrid Theory』をリリース。
バンドの5年分のクリエイティビティと熱意とアイディアを注ぎ込んだデビューアルバムは、年間480万枚もの販売数を記録、
Crawling、One Step Closerといった名曲もシングルカットされ、グラミー賞にノミネート、一躍全米に知れ渡る存在になる。
2002年には『Hybrid Theory』収録曲をリミックスした曲を収録したアルバム『Reanimation』を発表、そして、本作『Meteora』が世界へと興奮と期待をもって放たれる。
初週だけで80万枚が販売、Somewhere I Belong、Breaking the Habit、Faint、 Numbといった名曲がシングルカットされ、最終的には2700万枚を売るモンスターアルバムになる。
曲調的にはデビュー作がNu Metal寄りのRap Metalだったのに比べ、本作はよりメロディに基軸を起き、エモラップというジャンルまで生んだキャッチーな曲が並ぶ。
その後のバンドの躍進、そしてChesterの悲劇はまた改めて別アルバムのレビューで語りたい。
まずは、想像できないほどの困難と悲しみを乗り越えて再始動したLinkin Parkに心からの敬意を払い、彼らのアルバムで一番好きな一枚をレビューしたいと思う。
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* Chester Bennington – lead vocals, guitar intro
* Rob Bourdon – drums, backing vocals
* Brad Delson – lead guitar, backing vocals
* Dave "Phoenix" Farrell – bass guitar, backing vocals
* Joe Hahn – turntables, samples, backing vocals
* Mike Shinoda – co-lead and rap vocals, samples、rhythm guitar、piano、keyboard
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■Foreword (Intro)
■Don't Stay
何かをハンマーで叩く音?工事現場の掘削音?階段を荒々しく登る音?からリズムが繋がり、太く歪んだギターリフがうねりとなり曲全体を呑み込んでいく。
Mike ShinodaのクリーンでゆったりとしたヴァースとChester Benningtonのややハスキーがかったシャウトがこだまし、これから始まるアルバムへの期待を大きく膨らませる。
■Somewhere I Belong
全曲から美しく繋がったリズム、空間を邪魔せずしかしきっちりとアクセントになっているスクラッチノイズと、滑るような妖艶すぎるクリーンギター、優しく語りかけるようなラップが一つの大きな流れに統合されていき、チェスターの強くしなやかなシャウトがまとめ上げる完璧なLinkin Parkソング。
■Lying From You
重なり合うラップの応酬に、Chesterの訴えかけるような直情的な枯れシャウトが響き渡る。
ライバルであったLimp Bizkitはもちろん、本人たちも影響を公言するPublic EnemyやBeastie BoysといったHipHopグループからのインスパイアも色濃く感じる。
名作揃いの本アルバムの中ではやや地味目な曲だが、ビルボード Modern Rock Tracksでは最高1位を獲得している。
■Hit The Floor
ニューメタルからの影響を強く感じる一曲。
ズシャッと重く歪んだギターリフにダークに煽るラップが世界観を作る。
ラップオリエンティッドの雰囲気は前作の『Hybrid Theory』からの流れを強く感じる。
■Easier To Run
Chesterの生涯抱えていた心の弱さと必死にそれに向きあっていた悲痛な歌詞が苦しくも美しい。
「It's easier to run
Replacing this pain with something numb
It's so much easier to go
Than face all this pain here all alone」
冒頭から魂の叫びを高らかにかました後、クリーンに、そしてあえてフラットに歌い上げるヴァースの温度感の変化。
もう総立ちした鳥肌がいつまでも落ち着いてくれない。
■Faint
全世界を席巻したLinkin Park随一の名曲。
普遍的なかっこよさが一瞬の隙もなく詰め込まれている。
2:40と極端に短いのに、そのなかに搭載されている星の数ほどの膨大な情報量と感動グルーヴ、そしてChesterとMikeの生き様。
ここまで濃厚な2:40がほかにあろうか。
■Figure.09
理性的に落ち着いた様子で語られる事の多いShinodaのラップだが、この曲はやや感情的に吐き出しているように聞こえる。
それにいつも通り激情型のシンガロングでアンサーするChestarの唯一無二のヴォイス。
美しき融合。
■Breaking The Habit
淡々と紡がれているように聞こえる美しいヴァースの水面下で徐々に感情の起伏が大きくなっていき、ついに耐えきれなくなって吐き出されるChesterのシャウト。
ただ大きくてエキセントリックな音を出すだけでは到底たどり着けない極上の感情表現。
シンプルなメロディと構成なのに、スピーカーから耳に流れこんでくる形容しきれないこの複雑な表情こそが彼らを「伝説的」と言わしめる、Linkin ParkをLinkin Parkたらしめる要素なのだと思う。
日本のアニメーション製作会社GONZOが製作したMVも素晴らしい。
■From The Inside
官能的ですらあるChesterのクリーンヴォイスに情感たっぷりにラップが絡み合う耽美な一曲。
大爆音で聴くとその世界観、奥行きのあるサウンドに完全に陶酔できる、いわば音楽の麻薬である。
■Nobody's Listening
日本の尺八の調べと軽快なラップを大胆に組み合わせたチェレンジングな逸曲。
日本にルーツを持つMike Shinodaのアイディアだろうか。
絶対に出会わない世界を組み合わせ、しかも彼らのアイデンティティであるNu Metalの要素もしっかりと練り込むという狂気の才能にただ驚嘆するばかり。
■Session
映画『マトリックス・リローデッド』で使用されたインタールード。
様々なノイズを多く配置しているにも関わらず、不思議な統一感がある。
■Numb
この曲のヴァースを駆け巡るなめらかなシルクのような歌声からは想像すらできない壮絶な過去を背負ったChester Benningtonの天性のパフォーマンス。
太く短く、嵐のような人生を生きぬいた、彼の束の間の祈りのような曲。
コーラスの爆発力は約20年間何回聞いても涙が止まらない。
総合満足度 95点
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