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Traveller『Homesick(EP)』(2023)

ドイツを拠点に活動するメタルコアカルテット。
同名のバンドが世界各国にいるが、その中でおそらく一番最近デビューした若いバンド。

へヴィメタルや映画音楽の要素も入れつつ、エモーショナルなメタルコアチューンを次々と繰り出す新世代メタルコアアクトで、2016年にバンドを結成しデビューEP『Houtglass』をリリースして以来、母国ドイツをはじめとしたヤングジェネレーション層にぶっ刺さりまくり、早くもブレイクの兆しを見せている。

Currentsや、Invent AnimateErraといったバンドに代表されるいわゆる新生代メタルコアジャンルの一つとして発生した「Ambient Core」的なサウンドが特徴で、テンポは割とゆっくりで、クリーンサウンドやセンスのいいノイズや電子音を混ぜ込んで、「痛み」や「悲しみ」と言った感情を「ヘヴィネス」に昇華しているバンドである。

本作『Homesick』は2023年にリリースされたEPで彼らの初期衝動をそのままサウンドにしたやや後ろ向きなタイトルとは裏腹に強力な曲が並ぶ。

Homesick EP


ちなみにこの後続けざまにシングルを連発するが、『Homewrecker』(Homeがレッカーされ)『The Seeker』(家探しをし)『Broken Home』(家屋が破壊される)という、家に結構困っている様子なので、若干心配ではある(笑)

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Jens Böthin [VOCALS]
Jens Cedric Pieper [GUITAR]
Nico Schwanitz [BASS]
Bertrand Rothen [DRUMS]
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■Homesick
独特の浮遊感あるクリーンギターがたゆたい、熱量高く煽るビートが混じり合う開幕チューン。
BPM的な速さやギターの歪みだけでは表現しきれないモダンヘヴィネスの”鳴り”は、新世代メタルコアバンドの代表格ERRAやSPRITBOXに通じるものがある。


■Imprint
Djent感溢れるギターノイズを多分に使用し、瞬間疾走ブラストも混ぜ込みながら、猛々しく突き進むモダンな音作り。
クリーンパートも弱々しい様子は全くなく鋼鉄感マシマシのソリッドなチューン。


■Bloom
鋼鉄の華が開くかのごとく、優雅に活き活きと、時に生命の生まれる時の騒々しさすら表現している曲。
コーラス含む全編通してグロウルが響き渡るデスコア。



■Sleepless
地を浚うような重心の低いサウンドから、ピーキーノイズ一歩手前のようなハイフレットを滑る高音、そしてミドル音程での刻み、中間部でのクリーンサウンド・・・多弦ギターの上から下まで、全てを使用したモダンギターの教則曲のような一曲。


■Road Journal
テイストは全曲と同じだが、クリーンコーラスでカウンタテナーのような(若干弱々しい)ハイトーンエッジボイスが入る。
ここまでの流れの中ではちょっとした違和感を放つ一曲。


■Burdens
シンセピロピロイントロにDjentlyなギターワークが複雑に絡むThe Modern Metal Sound。
曲全体を荒々しく引っ張るグロウルは力強いだけに、クリーンコーラスがやや物足りなさをかんじてしまうのは仕方ないと思います。
だってバンドサウンドが強すぎる。


■Lethargy
3曲連続で似たようなテンポとサウンドで、流れ的に同じような曲に聞こえてしまうのでアルバム内での位置的に損なポジションだが、
しっかり聞いてみると、憧憬感あるクリーンギターと歪んだ多弦ギターが暴れまわり、どこか北欧メタルを感じる慟哭グロウルと叙情フレーズが交わる、あらゆるメタルコア要素「全部のせ」の完成度の高い曲。
後半は思い出したような落とすブレイクダウンと、物憂げなピアノがしっとりと締めて最後までスキがない。



総合満足度 81点

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