見出し画像

Bloodywood 『RAKSHAK』(2022)

RAKSHAK


インドはニューデリー発、2021年に突如としてシーンに現れたインディアンフォークメタルバンド、Bloodywood

マニアックなファンの間ではすでに2019年頃から「ポップミュージックを高品質なメタルカバーをしてYoutubeに上げてる変なインド人バンドがいる!」と話題になっていたようだが、日本人の多くの目に触れることになったのは2022年のFUJIROCKでの圧倒的なパフォーマンスだろう。
実際現場で見たが、実に鮮烈な日本デビューだった。
アルバムもたった一枚しか出しておらず、しかもお世辞にもロックやメタルが盛んとはいえないインド出身で、いきなりFUJIのグリーンステージにあげるとは、Smashの担当の慧眼をただ尊敬するだけだが、
しかしとにかく、その吹き荒れるエナジーと遠くインドの山奥から漂ってくるかのようなオリエンタルなサウンドは、謎に満ち溢れた魅力に引き寄せられた群衆の五感を満足させるには充分だった。
翌年2023には再び日本に戻ってきてO-Eastを興奮の渦に巻き込んだし、いまだに勢いは衰えることなくワールドツアーを続けている。

そんな彼らのデビュー作にして、世界を席巻しつつあるアルバム『Rakshak』をレビューしていきたいと思う。

---------
Karen Katiyar – guitar, flute
Jayant Bhadula – vocals, growls
Raoul Kerr– rap vocals
Sarthak Pahwa – dhol
Roshan Roy– bass
Vishesh Singh-drums
--------

▪️Gaddaar
純度100%の怪しさに満ち溢れたラップからパーカッション、シタールとインド感丸出しのリフに思わず口元が緩む。
しかしサウンド自体はヘヴィでタイトだ。
ヒンドゥー語担当のJayant(ジェアント)のグロウルとコーラス、ラップ、英語ラップ担当のRaoulの絡みがいきなり炸裂し、一曲目から興奮の渦に叩き込まれる。

▪️Aaj
インド山奥から届けられたフルートの美しい調べとともに幕を開け、ヘヴィなメタルサウンドの洪水がすぐに押し寄せてくる。
フルートの音は曲全般にわたって美しく鳴り響いており、それを演奏しているのは激しいリフをかき鳴らしているギターのKarenというではないか!
しかもこの方、本職は企業弁護士という三刀流アーティスト。さすがインド。なんでもありだ。
この曲でもRaoul のインド訛り英語ラップとJayantのヒンドゥーラップとシンガロングが絶妙に絡み合い、とてつもないグルーブを生み出している。


▪️Zanjeero Se
90年代ハードロックのような軽快なリフが今までの雰囲気をガラッと変える。
Jayantの高音ウィスパーの入りからの、伸びやかなシンガロングでBloodywoodさを取り戻すが、全体を覆うインドのローカル感とはまた違った、洗練された曲になっている。
コーラスではブレイクダウンしつつ奏でる美しいメロディに、涙腺がゆるむゆるむ。
すげえなBloodywood、こういうのも出来るんだ。

▪️Machi Bhasad
シタールの東洋風メロディで幕が上がり、
ブリッジ部分ではシンセ風のバッキングが入り、謎のグルーヴを生み出したかと思えば、コーラスではしっかりニューメタル感のあるダウンが効いたリズムでヘドバンを誘発する。
中間部ではドゥール(インドの民族楽器の太鼓みたいなやつ)のソロもあり…

これが様々な香辛料を配合したマサラ・メタルなのか…!

▪️Dana-Dan
アルバム一ヘヴィな曲。
RaoulとJayantの超高速ラップが交互に狂気の渦を巻き起こし勢いそのままに地に叩きつけるかのような「Dai da Dan dan 」の嵐に雪崩れ込む。
ライブではモッシュ必至の彼らのアンセム的な位置付けになるだろう曲。

▪️Jee Veerey
メロディックなフルート、軽快なドゥール、そしてJayant の迫力のあるヴォイスとRaoulの力強いラップに間違いなく勇気づけられる。
タイトルは、パンジャブ語で “勇者よ生きろ” という意味らしい。
その名の通り、勇敢でエモーショナルな曲。

▪️Endurant
アルバム全体を通して伝えられる
困難と向き合う勇気、絶望に立ち向かう力、壊れやすいものを守る信念
というメッセージがよく現れた曲。
ヒンディー語のタイトル “Rakshak” は “保護者” と訳され、これらのこの曲にもまたこのテーマが宿っている。
MVもぜひ見て欲しい。

▪️Yaad
感動すら呼び起こすJayant の懐の深いヴォイスが終始響き渡る慈愛に満ちた曲。
メロディックで良質なインディアンパワーバラードです。


▪️BSDK.exe
無機質なコンピュータサウンドからの、東洋的な香りを伴いながら攻撃的なラップを刻む。
インドゾウが威厳高く歩を進めるような重々しいグルーヴがモダンな雰囲気もある。


▪️ Chakh Le
シタールの音に乗りながら「チャケラー♪」をみんなで大合唱。
楽しい笑


総合満足度 88点(極上のカレーとナンを食べながら永遠に聴いていたいレベル)

いいなと思ったら応援しよう!