Alexisonfire 『Crisis』(2006)
カナダ発のポストハードコアバンド。
2013年に一旦解散し、またリユニオンして現在まで活動中。
2001年、それぞれ別のバンドで活動していたギターのWade MacNeil、George Pettit、ヴォーカルのDallas Greenの3人が所属するバンドが偶然にも同時期に解散したことで、メンバーが集結、新たにAlexisonfireを結成する。
2002年に『Math Sheets Demo』を作成、これがDistort Entertainmentを立ち上げたばかりのMitch Joelの目に留まり、デビューアルバムのレコーディングがスタートする。
当時彼はEMIにも所属していたこともあり、2002年にEMIからリリースされたバンドセルフタイトル『Alexisonfire』でデビュー。
アルバムの評価は口コミで広がり、2003年にはカナダ国内で50,000枚を売りゴールドディスクに輝く。
2004年にはアルバムに収録されていた『Pulmonary Archery』のMVが、Canadian Independent Music Awardsに輝き、その勢いをかって2ndアルバム『Watch Out!』を2004年にリリース。
Vans Warped Tourをはじめプロモーションツアーを各所で行うなど、順調に活動を続けるうちに、バンド内の温度差が徐々に広がり、2005年に創設メンバーであったJesse Ingelevicsが脱退、Jordan Hastingsにチェンジとなる。
その後リリースされた本作『Crisis』が大ヒット。
ワールドツアー含め数々のフェスに出演し、一気に世界的なバンドとしての知名度を得る事になるが、ここが彼らの初期のピーク、この後は数枚のアルバムをリリースし、2013年に一時解散することになる。
本作はさすが世界でヒットしただけあり、彼らの満ち溢れるクリエイティビティ、エナジーがひしひしと感じられる一枚で、1stのうるささをいい感じに昇華して、彼らの良さを存分に引き出した広がりのあるパンクサウンドになっている。
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George Pettit – vocals
Dallas Green – vocals、guitar、keyboards
Wade MacNeil – vocals, guitar
Chris Steele – bass 、backing vocals
Jordan Hastings – drums, percussion
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■Drunks, Lovers, Sinners And Saints
再生ボタンを押した瞬間から放たれる気合十分のシャウト。
開幕から勢いのあるスクリーモ寄りのパンクサウンドとエモコーラス。
この一曲ですでに良盤の香りが漂ってくる。
■This Could Be Anywhere In The World
絶妙な間が緊張感を生み出すヘヴィなリフが印象的なスクリーモチューン。
George PettitのデスシャウトとDallas Greenのクリーンボーカルが絶妙に絡み合うシンプルにして隙のないサウンド。
■Mailbox Arson
みなさまお馴染み、空耳アワーで日本のお茶の間に広がった曲。
空耳の辛辣な歌詞(?)とはかけ離れた激しくも透明感のある叙情性を振り撒くメロコアの良質チューンです。
■Boiled Frogs
日本でも人気の高いパンク要素が全面に出た曲。
よくポストハードコアというと前衛的で複雑な試みをするジャンルをイメージするが、このバンドが生み出すサウンドは、シンプルかつ刺さりやすいキャッチーメロディを軸にした分かりやすい王道パンクサウンド。
ある意味ジャンルづけの無意味さを感じる一瞬だが、良い意味でギャップに裏切られる事の快感さもあると思う。
■We Are The Sound
ディストーションギターかき鳴らしリフと、うねるベースがリードするパンキッシュな爽快チューン。
■You Burn First
重々しいスローチューン。
途中からブラックメタル風のカオス展開にも突入。
業火に焼き焦がれるような苦しみに包まれた曲。
■We Are The End
ドライブ感のあるギター、ベースが前へ前へと推進していくパンキッシュサウンド。
楽器隊の漲るダイナミズムに耳を奪われがちだが、2人のシンガーによる厚みのあるヴォーカルワークにも瞠目。
■Crisis
アルバムタイトルトラックにしてはあまり印象に残らない地味な展開の曲。
シャウトパートはクライシス感はあるが。
■Keep It On Wax
ミドルテンポの男臭いパンク。
同郷のSUM41やNickelbackの影響も遠くで感じつつ、シンプルなメロディーラインで押し切っている。
■To A Friend
メロディックで分かりやすいモダンパンク。
もはやメロコアと呼んでも差し支えない程、強いメロディと鮮やかなサウンド展開が絶妙なバランスで配合されている。
1stにあった、ひたすらヒステリックでガチャガチャした感じも好きだが、ちょっと大人になったこういうサウンドはバンドの新たな魅力。
■Rough Hands
優しいギターの音色にピアノを交えた穏やかなイントロから始まるスローなナンバー。
クリーン、アンクリーンボイス共に激唱。
アルバムを締めくくる聴かせる系のパンクバラード。
総合満足度 85点