While She Sleeps『SELF HELL』(2024)
UKはシェフィールドで2006年に結成されたWhile She Sleeps。
VoのJordan Widdowsonをはじめ、drumのAdam Savage、bassのAaran McKenzie そしてguitarのMat WelshとSean Longという学校の級友で構成され、いくつかのEPをリリースするも、2009年にWiddowsonが脱退。
その後Lawrence Taylorが新Voとして加入すると、バンドは一気に加速して『The North Stands for Nothing』というEPをリリース、Sonisphere Festivalに出演、Bring Me The HorizonとUSツアーを企画されるなど(ビザの問題でツアー自体は不参加)メジャーシーンで徐々に認知されて行く事になる。
2012年にデビューアルバム『This Is the Six 』をリリースすると、2年起きにコンスタントにアルバムを発表、毎年のように各国のフェス出演やParkway Drive、Crossfaith、Cancer Batsといったバンドとツアーを回るなど着実に実力と人気をつけていくも、アルバムを経るごとに初期のアグレッシブさは薄れ、メロディ重視とアトモスフェリックな作風がフィーチャーされるようになってきている事に対しては賛否が巻き起こっている。
今年2024年に本作『Self Hell』をリリース。
メロディセンスとアグレッシブネスはそのままに、The Prodigy、Kendrick Lamarといった異ジャンルからの影響を多分に受け、またさらに進化したサウンドが楽しめるが、これまた大きく賛否が分かれるであろう一枚。
そしてなんと2023年の年末に来日したのに2024年にも再度来日予定。
どんだけ日本好きなんだ。
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* Lawrence "Loz" Taylor – lead vocals
* Sean Long – lead guitar, backing vocals, production
* Mat Welsh – rhythm guitar, vocals, piano
* Aaran McKenzie – bass, backing vocals
* Adam "Sav" Savage – drums, percussion
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■Peace Of Mind
焦燥感溢れるグロウルやシャウト混じりのプロローグ。
■Leave Me Alone
開幕から脳内モッシュ、サークルピット不可避の激しいギターリフが飛び出す。
クールなラップ調のヴァースが、強烈に落とすブレイクダウンが、自由自在に駆けずり回るシンセの近未来ノイズが、Nuメタルリバイバルの兆しを提示する。
■Rainbows
ギターオリエンテッドなキャッチー縦ノリエレクトロニコア。
BMTHやEnter Shikari、Attack,Attackと同じ空気を感じつつ、しかしちゃんとココで来い!という所でメタルメタルしたギターソロをねじ込んでくるのが彼ららしさを保つポイントか。
■Self Hell
図太く刺々しい豪奢ギターリフと空間を意識したエモコーラスが渾然一体となり誘引力を高めているメタルコア。
イタリアのDestrage的なテクニカル&ダイナミズムも感じるし、Artemaやベガス的なダンサブルなピコリーモ要素も確かにある。
■Wildfire
ダイナミックスタジアムサウンドをひけらかすOne OK RockやUberworld的な広がりのあるオーオー系イントロにザクッと入り込むギターソロが切れ味鋭くて快感。
WSSはパッと見メタルコア然としてて、チャラい自己満ギターソロなんかやりませんよ感を出してるのにしっかりとエモGソロを入れちゃってくれるので、ホント感謝しかないです。
■No Feelings Is Final
漂うヒーリングサウンド。
■Dopesick
STONEをフィーチャーした90年代ハードロックテイストが香るメタルコア。
ギターソロが聴かせるパートとテクいパートを分けてしっかりと曲の中で活きているし、コーラスはオーディエンスがシンガロングする姿が鮮やかに蘇るライブ向きの曲。
■Down
UK極悪ハードコアバンドMalevolenceをフィーチャリングした一気に治安が悪くなる激重チューン。
Malevolenceが担当するヴァースやブリッジの箇所はあからさまに重く凶悪で、コーラスでいくらキャッチーでメロディアスなシンガロングをしてみても、全体を覆うヘヴィネスは1㍉も中和される事なくむしろ際立ってしまう。
■To The Flowers
印象的なギターサウンドが主導するメタルコア。
コーラスではDown Down Down…をリピートし、色気を伴った浮遊感を醸し出す。
■Out Of The Blue
再びインスト。
ドラム全面に出ているエレクトロビートのインスト曲。
■Enemy Mentality
緩やかなエレクトロサウンドと際立つ軽快なビート、厚みのあるギター。
本アルバムの中で一番いままでのWSSの路線を踏襲している曲。初期に比べるとだいぶキャッチーで聞きやすくはなってるが。
■Radical Hatred / Radical Love
浮遊感のあるクリーンアルペジオに乗せて、慟哭に似た叫びを繰り返すLawrence Taylor。
透明な切なさと、抑えきれない情動、燃え盛る後悔、といっためぐるめく複雑な感情がふわりと美しい旋律に乗せて漂うエンディング。
総合満足度 85点(聴けばストレスがHellレベル)