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Hypocrisy『The Arrival』(2004)
スウェーデンLudvika発のスラッシュデスメタル、メロディックデスメタルバンド。
活動は30年以上に及び、ラインナップを変更しながらもスタジオアルバム17枚、EPやライブアルバムをあわせると30枚近くコンスタントに音源をリリースしている多作なバンドとしても有名。
初期は、至って一般的なデスメタルを演奏するバンドであったが、1990年代後半からは、叙情メロディを取り入れ、立派なメロデスメタルバンドに変貌。
第一次スウェディッシュメロデスブームを支えるバンドの一つである。
始まりは1990年、かの有名なアビス・スタジオ (Abyss Studio)のオーナーであり、のちのバンドのフロントマンとなるPeter Tägtgrenが自身のソロプロジェクトとして活動を開始。
1992年から、バンド体制に移行し、Masse Broberg (Vo)、Jonas Österberg(G)、Mikael Hedlund (B)、Lars Szöke (Ds)が加入。
1stアルバム『Penetralia』をNuclear Blastからリリースし、デビューする。
しかしリリース後、Jonasが脱退、翌1993年に2ndアルバム『Osculum Obscenum』をリリースするも、その後、Masse Brobergも脱退、Peter Tägtgrenがボーカルを兼任することになる。
1994年に、3rdアルバム『The Fourth Dimension』、1996年に4thアルバム『Abducted』をリリースするなど、順調に活動しているかに見えたが、Nuclear Blastとの関係が悪化。
1997年にリリースされた5thアルバム『The Final Chapter』のアルバムタイトルからもわかる通り、バンドはもうほぼ解散を想定していたらしい。
しかし、この『The Final Chapter』リリース後、Nuclear Blastとバンドメンバーの対応が変わったことから、関係は徐々に良化、翌1998年に行われた、Wacken Open Airでの成功で、解散を撤回した。
1999年にバンド名を冠した『Hypocrisy』、2000年に『Into the Abyss』、2002年に『Catch 22』を順調にリリースし、復活を遂げた勢いそのままに、本作
『The Arrival』を2004年にリリース。
彼らのライブ定番曲でもあるEraserやStill Born、War Withinも収録されており、セールスとは関係なくファンの間でも評価が高いアルバムである。(ジャケット以外は)
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Peter Tägtgren − vocals、guitar、keyboards
Mikael Hedlund − bass
Lars Szöke − drums
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■Born Dead Buried Alive
おどろおどろしく、そして騒々しく高ピッチのギターが掻き鳴らされたかと思いきや、突如としてスラッシーに走り出す開幕チューン。
今となってはオールドスクールになってしまったこのパターンだが、デスラッシュバンドのオリジネイターの一人として圧倒的な存在感を見せつける一曲。
■Eraser
Hypocrisyの代表曲とも言えるメロデス界のアンセム。
ユニゾンギターリフや、コーラスでリードギターがハイフレット付近で忙しいフレーズを弾き散らすスタイルは、2004年当時でも、モダン志向に次々と軸足を移すデスメタルバンドが増えている中、すでにやや古いサウンドに聞こえた。
しかしながら、その硬派なスタイルこそが、むしろ様々な北欧メタルバンドに影響を与えているとも言われており、これはその典型的な一曲。
■Stillborn
寒々しい刻みの中に業火のようなベースラインがうねる鋼鉄曲。
BPM以上に彼らの放つスラッシングな疾走感がビシビシと突き刺さってくるスピードチューン。
■Slave to the Parasites
叙情的なギターに導かれてPeter Tägtgren の吐き捨て型グロウルが大気に充満していくスローテンポでメロウなメロデス。
■New World
無機質なリフと、聞いているだけで足首が腱鞘炎になりそうな高速ダブルペダルの応酬で鋼鉄感のあるテンションを生み出している。
頻繁にテンポチェンジすることによる複雑性も加え、曲構造に厚みを持たせている所もメロデスの巨人としてスキが無い。
■The Abyss
悪魔の賛美歌のような汚泥の中の暗黒美旋律。
足が地面に吸い込まれそうな錯覚さえ覚える重音鈍重のメタリックなスローチューン。
■Dead Sky Dawning
ややキャッチーさを見せるメロディアスチューン。
トレモロしている(?)かどうか微妙なのに、しかし一音一音にしっかりと「揺れ」を感じる。
ブリッジミュートを効かせてバッキングを刻むという基本テクのお手本にもなるサウンド。
■Departure
悲劇的なヒステリックデスシャウトが耳をつんざく鋼鉄感極まりないチューン。
ユニゾンギターソロが哀愁たっぷりに乱舞。
■War Within
軍歌感をほんのり醸し出す縦ノリリズムにトレモロリフが折り重なる焦燥感のあるメタル重厚曲。
総合満足度 78点