Within The Ruins『Black Heart』(2020)
アメリカ マサチューセッツ発のテクデス/プログレメタルコアバンド。
ギターのJoe CocchiとドラムのKevin McGuillを中心に2003年に結成。
2005年に発表されたEP『Driven by Fear』は、楽曲はイェーテボリスタイルを感じる作りだったので好きだったのだが、残念ながらサウンドクリエイションは最悪で、低音がブォーンと滲む聞きづらい音で敬遠せざるをえなかった。
2009年リリースしたデビューアルバム『Creature』ではかなり改善し、音数が多いながらもクリアに聞こえるようになっていたが、肝心の楽曲のクリエイティビティがどうも数多存在するPeripheryに端を発するプログレデスコアフォロワーの域を抜けられていない印象を受けた。
テクはすごいんだが、なんかテクだけで耳に残らないという…
しかし、Third Album『Elite』あたりから曲のクオリティもサウンドも格段に良くなり、印象的なピロピロギターがそこかしこで鳴るフックに満ちた曲を作り続けている。
そして本作『Black Heart』は2020年にリリースされた、テクとアグレッシブネスとキャッチーなフックが詰まったDjentテクデス/プログレメタルコアの最新系だと言い切れる。
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* Steve Tinnon – lead vocals
* Joe Cocchi – guitars, production
* Paolo Galang – bass, clean vocals
* Kevin McGuill – drums
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■Domination
静寂を切り裂く様に冷ややかなリードギターが一閃、多弦ギターとドラムの重厚で解け難くもつれあった音の集団が襲いかかる。
ダブルペダルで「ダダっ」とキレ良く刻む王道メタルコアビートが否が応でも昂揚感を煽るし、電子音混じりのバッキングも緊張感があって思わずエアギターが止まらない。
今作からジョインしたSteve Tinnonの声もしっかりハマっている印象。
■Deliverance
メキシカンな響きの軽やかなギターフレーズに導かれてアグレッシブで解像度の高い音塊が突進してくるチューン。
変幻自在なブラストビートに乗せてメカニカルなクリーンディレイやワウを使用した爽やかギターソロもまさに豊麗。
耳が喜び、血が沸る良質メタルコア。
■Black Heart
雑音の概念すら微塵もない純粋極まりないピロピロしたギターが電子音と混ざり合い、大地を砕かんばかりのドラムとベースと大合流を果たすタイトルトラック。
ギターは「キュルルン」というハーモニクス?スクラッチ?みたいな綺麗なノイズを多用し、その対比で曲に緊張感を与えている。
■Open Wounds
Joe Cocchiが紡ぐハイフレット多用系高音ギターリフが電子音ピコピコサウンドと重なり、容赦ない複雑性と狂気が一直線に向かってくる。
傷口が思わず開いちゃうような高速上昇フレーズも主張が出ちゃった感が垣間見えてで好きです。
Jason Richardsonパイセンリスペクトも感じられる。
■Eighty Sixed
ギターインスト曲。
カッティングやミュートなどの音の輪郭のハッキリしたモダンな音が並ぶ。
王道系の印象的な聞かせるフレーズを瞬間瞬間で鳴らしつつ、基本はノイズや落ち着かない変態リズムを絶え間なく繰り出す事で不穏な空気にさせて、気持ちよさだけを与えない、なんともドSな作り。
Joe Cocchi、やりおる。
■Devil in Me
ミドルテンポや疾走テンポを慌ただしく混ぜつつ、音の明度の高いカオス空間を繰り広げるテクデス。
絵で例えるとビビッドレッドとショッキングピンクとキャナリーイエローと…明度の高い色を全力でキャンバスに塗りたくる感じのアクの強さを感じる。
コーラスで広がるクリーンボイスの開放感は失禁注意。
■Hollow
音の輪郭に描かれる線が一々濃くて力強い。
7弦の歪みを感じられるギターワークがなかなか濃厚。
ブラスト疾走部The Black Dahlia Murderの香りも感じます。
■Outsider
メロデスの風を感じる一曲。
幾度となく無機質に繰り返される5連符の上昇メカニカルスウィープがフックとなり、
テクニカルながら広がりのあるメロディーラインのベースを創り出している。
コーラスはちょとナヨくて笑みが溢れでてしまった。
■RCKLSS
ジトっとしたメロデス。
メロディが強いわけではないが、ギターの哀愁漂うメインメロディにデスシャウトが絡みつくタイプの曲でライブでは映えそう。
■Ataxia
テクデスを振り回しながらメロスピの世界に進出してきたインスト曲。
このテの界隈はブラダリを始祖として、様々な個性を持ち込むバンドがたくさんいて面白い。
総合満足度 86点