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ATREYU『THE BEAUTIFUL DARK OF LIFE』(2023)

アメリカ出身のメタルバンド。
1998年に、カリフォルニア州南部のオレンジ郡にてAlex Varkatzas(Vo.)、Dan Jacobs(Gt.)、Travis Miguel (Gt.)、Brian O'Donnell(Ba.)の4人で結成。ベースのBrianは直後にChris Thomsonにチェンジしている。
1stEP『Visions』をリリース直後にBrandon Sallerがドラムとして加入。(現在は色々あってクリーンVo担当)

2002年にアメリカ大手のインディーズレーベルVictory Recordsから1stフルレンクスアルバム『Suicide Notes and Butterfly Kisses』をリリース。
この初期アルバムから実は”歌えるドラマー”Brandon Sallerが爆誕している。

その後、ベーシストのクリスが脱退したため、Marc McKnightが新たに加入し
2004年に2ndアルバム『The Curse』をリリース。全米で30万枚以上のヒットとなり、ozzfest やWarped Tour 2005など大型フェスへの出演が増えて行く。

2006年には3rdフルアルバム『A Death-Grip on Yesterday』をリリースし、前作を超える全米アルバムチャートにて初登場9位を記録、34万枚以上を売り上げた。

2007年には初のベストアルバム『The Best Of... Atreyu』をリリースし、
レーベルをRoadrunnerに移した後、4thアルバム『Lead Sails Paper Anchor』を発表、
全米チャート初登場8位を記録し、20万枚以上を売り上げた。

2011年から3年間の活動休止を経て、2014年にフェス出演、2015年9月、6thフルアルバム『Long Live』を発表し、お茶の間に返り咲いたが、
2020年9月、長年バンドのクリーン&スクリーミングヴォーカルを支えてきたAlexが脱退。
同時にドラマーとクリーンボーカルを兼任していたバンド一イカつい見た目が故に後ろでドラムを叩いているくらいがちょうどよかったBrandonがなんとクリーンVo専任として最前線に。
代わりに専任ドラマーとしてKyle Rosaが加入した。
一方、スクリーミングヴォーカルはベースのMarcが引き継いだ。

そんな新体制で作成された『Baptize』(2021)はヘヴィなメロコア路線に軸足を置きすぎた実験的な音作りが上手くハマらず、各誌から酷評されてしまったが、個人的には新生Atreyuを印象づけるには十分に強力な一枚だったと思う。

そして本作『THE BEAUTIFUL DARK OF LIFE』は人生の葛藤や抑鬱などダークサイドに焦点を当てて切り出された一枚。2021-2023年に出されたEPをまとめたもので、彼ら自身も言うように、彼らのルーツや影響を受けた音楽を素直に表現したという作品。
メロディのキャッチーさ、サウンドのモダンさのバランスは相変わらず高いクオリティだし、加えて楽曲のバラエティがポップなものからHiphop、メロコア、クサめのメタル…など広がった気がする。

そして彼らのお決まりが、曲毎にクオリティの高いおふざけMV。
今回も気合い入ってます。

The Beautiful Dark Of Life

—-
* Brandon Saller – clean vocals, keyboards, piano
* Dan Jacobs – guitar
* Travis Miguel – guitar
* Marc "Porter" McKnight – bass, unclean vocals
* Kyle Rosa – drums
—-

■Drowning
オーオー系の漢クワイヤに導かれ筋肉質なリフとともに走り出す強靭なメタルナンバー。
コーラスではテンポを落としつつもBrandonの魂のシンガロングとバンド隊のタイトなプレイがAs I Lay Dyingにも通じるような臨場感のある音の塊となり一挙に襲ってくる。
まさか水中エクササイズの展開になるとは…


■Insomnia
コントラバスのスタッカート混じりのイントロからコーラスの「インソムニアああ〜ああ〜!!」が天まで突き抜けるような深刻なinsomnia(睡眠不足)とは裏腹に、爽快極まりないロック。
スタジアムを巻き込むシンガロングチューン。
アルバム最初のハイライト曲。
PVも最高に狂気じみているので是非。


■Capital F
漢臭いシャウトの連続と図太いギターリフでズシズシ空間を切り裂いて行くヘヴィチューン。

■God/Devil
骨太で鋼鉄感漂うインダストリアルメタル。
エッジの利いたギターをはじめ、初期のアルバムにあった、いやそれ以上に上昇した攻撃性を見せつけつつ、コーラスではエモいシンガロングがこだまする。
PVのボケは控えめ。


■Watch Me Burn
雄々しい咆哮と勇壮に踏み鳴らすドラムビートが天地を揺るがす。
空気をビリビリと震わすような、質量のある音が全身に降りかかる。
感電、全身大火傷などメンバーが満身創痍になりまくるPVも必見。


■Good Enough
高鳴る心臓の鼓動のようなバスドラが打ちつけ、ソリッドなギターが刻みつけ、ネガティブなワードが並ぶ歌詞とは裏腹に爽快キャッチーメロディラインが脳に強烈に叩き込まれる。

■Dancing With My Demons
アメリカン王道メタルコアサウンドを軸にモダンハードな手触りを混ぜ込み、突き落とすようなブレイクダウンへと連なる構成美は、ありがちな展開だけにさらっと流してしまいがちだが、Atreyuはそこにキャッチーさとサウンドのクオリティが伴う隙がない一品に仕上がっている。

■Gone
前曲と同じテイストだが、ポップさ、メロディの聴きやすさがややマシマシになってるか…?
2:16辺りからのギターソロがかつてのAtreyuのテイストに戻ったというか、往年のメロハーバンドの弾きまくり大会の香りを一瞬で連れてきてくれて、何故か涙が。
こういう先人をリスペクトする姿勢って大事よね。


■I Don’t Wanna Die
泣きのギターでしっとりと歌いあげるスイートなバラード。
これもScorpionsやFair Warningといったメロハー大御所感あって安心するテイスト。

■Immortal
ハードなバッキングサウンドながら、のっかるメロディは極めてストレートで、Brandonの愚直で広がりのある声質が直線的に響いてくる。

■(i)
耳に残るメロディとモダンヘヴィネスグルーヴの高いレベルでの融合が美しい。
耳障りのいい爽やかなコーラスから、突如のブレイクダウンが急激に凶暴化し、思わず真顔。

■Death Or Glory
シャウトしながら言葉を詰め込む前半、Bohemian Rhapsodyを思わせるオペラティックなアカペラパートを経て、Sierra Deatonの少女のような歌声にハッとしながらもエッジーなギターが泣きまくりな展開へと連なる、非常に情報量が多い楽曲。

■Forevermore
高音クリーンが印象的なバラード。
ただこの美しい旋律に身を任せたい。

■Come Down
ハードに吐き捨てるように紡ぐラップと明るいポップなコーラスが新機軸な一曲。
賛否あるかもだが、間違いなくアルバム後半のハイライト。


■The Beautiful Dark Of Life
アルバムタイトルトラック。

Beautifulというポジティブな形容詞とDark Of Lifeというネガティブでリアリスティックな言葉の対比から連想されるように、色とりどりな表情を持つ音がしっかりとしたまとまりを持って語りかけてくる。


総合満足度 87点

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