Holding Absence『The Noble Art of Self Destruction』(2023)
ウェールズはCardiff 出身のハードコアバンド。
今月1月の来日公演を控えている楽しみなバンドの一つ。
2015年に前VoのZac Vernonによって結成されたが、彼自身はすぐにバンドを脱退、変わって入ったLucas Woodlandがバンドとして大きく飛躍させデビューシングル『Permanent』リリースに至る。
2017年SharpTone Recordsと契約。改めて『Permanent』『Dream of me』を両A面シングルという形でアメリカをはじめ全世界向けに発表すると同時に、Blood YouthやWe Are The OceanといったバンドとUKツアーを周り、Download Festivalに出演し、一気に知名度を上げる。
2017年から2019年にかけては、コンスタントに数曲をリリース、LoatheとのスプリットEPも発表し、Sleep TokenとUKツアーを経ていよいよアルバムリリースかという時に、ギターのFeisal El-Khazragiが脱退し、なんとLoatheのBasistとして加入する。引き抜きだったのか、自らだったのは不明だが、、ともかくファーストアルバムレコーディング中だったのでかなり大変だったったとLucasはインタビューで語っている。
2019年に無事に『Holding Absence』をリリースすると、Kerrang! やDead Press!、Lowdwireなどで軒並み高評価を獲得。
続く2022年には『The Greatest Mistake of My Life』がリリースされ、UKチャートで90位にランクインし、Afterlifeなどのヒット曲も生み出したバンドは、その勢いのまま2023年には本作『The Noble Art of Self Destruction』が短期スパンでリリースされる。
サウンド面では基本路線は変わらないものの、よりキャッチーでアップテンポの曲が増えて、アルバムとしてクオリティが上がっている。
UKランキングにも64位まで上がり、セールス的にも勢いにのっているバンド。
ちなみにアルバムのアートワークは日本の金継ぎを参考にしたとのこと。
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Lucas Woodland – vocals、keyboards、piano
Scott Carey – guitar、backing vocals
Benjamin Elliott – bass
Ashley Green - drums
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■Head Prison Blues
強烈グルーヴィなドラムンベースとともに紡ぎ出されるLucasの魂の叫び。
爽快なサウンドとは裏腹に歌詞はとても内省的で、誰かに救いを求めるような、強いジレンマを抱える開幕曲。
■A Crooked Melody
空間を意識した広がりのある音作りと、丁寧なメロディラインの高度なケミストリーが、今までのHolding Absenceの流れにはあるけども、新たなレベルに達したような感を抱かせる一曲。
■False Dawn
澄んだ空気を切り裂いて鮮烈な光を放つ朝日が昇るが如き爽やかハードロック。
スタジアムロックにもなりそうなキャッチーなフレーズの嵐が散りばめられていて、特にコーラスの突き抜けるような爽快サウンドは「解放感」を体現した一瞬。
■Scissors
前曲からシームレスに繋がるエモやスクリーモにも接近したメロディックハードコア。
Lucasのレンジの広い美声が遺憾無く魂を揺さぶり、遠くで聞こえるクリーンなアルペジオが優しく耳をなでて行く。
■Honey Moon
透き通るような美声が存在感の中心にあるハードなバラード。
■Death, Nonetheless
スクリーモ的な激情を振り撒きつつ、華やかなメロディがしっかりと胸を焦がしてくださる。
「Deaf to the beat of her drums, overarching!
Death, nonetheless, is constantly marching!」のフレーズは力一杯拳を振り上げシンガロング推奨。
■Her Wings
軽快に疾走しながら、色とりどりの激情哀愁を放ちまくるスピードチューン。
高音スクリームや魂のシャウトを容赦なく連続で織り交ぜると、ボルテージは最高潮に達する。
耳の全神経が興奮で総立ちになるパワー溢れる一曲。
■These New Dreams
マイルドに広がる甘い歌声と、時折強靭に激唱する強弱のコントラストに、ただ身を任せたい。最高にリラックスできる一曲。
■Liminal
スタートから勢いよく飛び出す若さ溢れるエネルギッシュなハードコア。
入りがエキサイティングだったので、コーラスもその勢いで行って欲しかったが、テンポダウンしシンガロングする王道パターンに。まぁ全然アリです。
■The Angel In The Marble
しっとりした長尺の大曲。
電子ピアノの硬質な鍵盤の響きとゆったりとしたメロディがアルバムの終焉を感じさせる。
総合満足度 85点