Beyond the Black『Beyond the Black』(2023)
ドイツが誇る急成長シンフォニックメタルバンド。
ドイツ南部の都市、Mannheimにて、若干19歳で類稀なる才能を示し始めていたJennifer Habenという女性シンガーを中心に結成された「Saphir」というガールズバンドが母体。
2014年、バンドを脱退したJenniferは、Nils Lesser (lead guitar)、Christopher Hummels (rhythm guitar)、Michael Hauser (keyboards)、Erwin Schmidt (bass) そしてTobias Derer (drums)と共に新たなバンド、Beyond the Blackを結成する。
結成当初からJenniferをはじめ、バンドのレベルの高さに目をつけたプロモーターからオファーが相次ぎSAXONのサポートや、WACKENへの出演など順調にその認知度を拡大していく。
2015年、Edguyなどのプロデューサーでも知られるSascha Pethのサポートにより、1stアルバム『Songs of Love and Death』でデビューし、ドイツ国内の音楽誌から軒並み高評価を受けた。
2016年、2ndアルバム『Lost In Forever』を発表。
国内のアルバムチャートで前作を上回る4位を記録。欧州でも知名度が広まり、作品のワールドワイドな配給も始まる。
しかし、結成当初から「Jenniferとその他のバンドメンバー」的な見方が強く、2016年にはJennifer以外のメンバーを刷新し、作風もより洗練されシンフォニック要素が強くなっていく。
2017年にLoudParkにて初来日、2018年には3rdアルバム『Heart of the Hurricane』を発表。
2020年、コロナ禍の中発表された4thアルバム『Hørizøns』は、ドイツ国内チャートでは最高位となる3位を記録、
2023年、ついに欧州の大手レーベルNuclear Blastに移籍し、渾身のセルフタイトル、『Beyond the Black』を発表。
チャート最高位2位まで上昇し、商業的にも成功。さらにシンフォニック度を増したそのサウンドは、バンドとしてのアイデンティティも固まったように思える。
現在、ドイツのシンフォニックメタル界の最前線にいるアクト。
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* Jennifer Haben -Vo
* Kai Tschierschky -Dr
* Tobi Lodes -Gt
* Chris Hermsdörfer - Gt
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■Is There Anybody Out There?
ケルティックの香りを感じるトラッド風味の音色に王道ハードロックのギターを絡ませた大物バンド然の堂々としたイントロで始まる開幕チューン。
ゴシック的な要素もあるはあるが、基本は骨太のハードロックサウンドを幹にして押し切る「ボディのある」曲。
■Reincarnation
輪廻転生をテーマにした壮大な曲。
構成自体は複雑性はあまりなく、ロックらしいコード進行やブレイクを丁寧に作り常道をハードに突き進むミドルテンポチューン。
■Free Me
しっとりとした雄大なバラード。
もはやゴシックメタルのレジェンド、Within TemptationやNightwishリスペクトを感じるサウンドではあるが、ただし、この道のオリジネイターが切り開いたスタイルをただ模倣、剽窃するだけの凡俗のそれとは圧倒的に違う、説得力のある曲。
■Winter Is Coming
ディストーションの効いた緊張感のあるギターリフに、ゴシックメタル御用達、ベルサウンド(鐘の音)を適宜挟み、ミドル〜ハイテンポで軽快に走る北欧メタルな曲。
Jenifferの透明感ある伸びやかな美声に自然に胸が高鳴ってしまう。
■Into The Light
逞しいベースラインが牽引するゴツゴツした手触りのハードチューン。
短いながら印象的なフレーズを一発キメるChrisの職人的なギターソロにも注目せざるを得ない。
■Wide Awake
天性の気高さを誇るJenniferの美声が響き渡り、ただその優雅さと豊麗な音の流れに身を任せるだけの圧倒的昇天バラード。
■Dancing In The Dark
雄偉に闊歩する骨太なビート、壮大かつ鮮鋭化したギターサウンド、、、それには間違いなくGamma RayやPrimal Fear、Freedom Callといったジャーマンメタルの中でもガッシリめの音像を得意とする大先輩達の血脈が流れている。
■Raise Your Head
ややダークなストリングスが大々的に配されることで、シンフォニックテイストを増幅しつつ、ベースのグルーヴ感は地を這う大蛇の如くうねる。
オランダのゴシックバンドAfter Foreverの雰囲気ある。
■Not In Our Name
民族的、シャーマン的なイントロからの男性野太いデス声が突然バッキングコーラスで加わるEvanescence的なロックサウンド。
ストレートでコンパクトで、ダイナミックなバウンス感が最短距離で脳髄に到達する心地よい曲。
■I Remember Dying
美空間を意識した広がりのある美しき調べを漂わせつつ、エピック的な儚さも全面に押し出し、しかし確実にフィジカルな塊感のあるサウンドがそこに存在する。
シンフォニックバラードの最高級品。
総合満足度 88点