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Dymytry『Revolter』(2019)
チェコはプラハ出身の覆面メタルバンドDymytry(ディミトリー)。
チェコというと、日本にはなかなか馴染みが薄いが、Budweiser 発祥の国や、サッカーだとかつてネドベドやヤン•コラーといった世界的な選手を排出し、最近では野球でSamurai JAPANをリスペクトしてくれたスポーツマンシップあふれる国としても印象が強い。
このDymytryは同国のレジェンドバンドであるArakainのオリジナルメンバーであるJiri Urbanの息子のJiri Urban Jr.を中心に2003年に結成。
彼らは自分たちの音楽性をサイ・コア(psy-core)と表現しているが、その真意は不明。
サウンドとしてはパワフルなギター・リフに漢声Voが雄々しく歌う純メロディアスハードロックな様子で、系統やビジュアル的にLordiが近いかも。
ちなみに彼らの仮面のイメージは、国立劇場の昆虫の仮面とのことで、バンド名の "Dymytry "はロシアの機関車に由来。
2003年にプラハにて、前述のJiří „Dymo“ Urban (ギター)を中心に、Rudolf „Dr. Molitanov“ Neumann(ギター)、Ondřej Černý(ヴォーカル)、Michal „Chali“ Chalupka (ドラム)、 Petr „Ozz“ Štochl (ベース)というメンバーで結成。
2005年にVoがJan „ Protheus“ Mackůにチェンジするとバンドのサウンドの方向性が固まり、2007年にマルチシングルデビュー作『Psy-core』を発表し、チェコ共和国の大きな音楽フェスティバルやその他の小規模なイベントで多数出演するようになる。
この時期からプラハのエデンで毎年開催されるアラカイン・コンサートのサポート・アクトも務めている。
2010年にフルレングス『Neser』でアルバムデビュー。
全編チェコ語で歌われているにも関わらず、ヨーロッパ各国で話題になり、海外のフェスにも呼ばれるようになる。
その後、メンバーをチェンジしながらもチェコ語のアルバムを発表し続け、チェコ発のメタルバンドとして存在感を放っていたが、ついに世界進出を目指し、2022年に国内レーベルから離れ、メジャーレーベルAFM Recordsから『Revolt』という全編英語詞のアルバムをリリース。
これは2019年にチェコ語で発表された本作『Revolter』の全曲を英語で歌いなおしたアルバムであり、彼らが本格的に世界を狙う狼煙となったアルバムである。
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哀愁あふれるメロハーサウンドにチェコの望郷の情緒が乗る高クオリティ楽曲が並ぶ素晴らしい一枚なので、あえてチェコ語で発表された原作の方をレビューしたい。
ちなみに彼らは2017年のチェコ国内Mattoni Czech NightingaleのLadderではバンド・オブ・ザ・イヤー部門で2位となるなど、国内での人気は不動のものとなっている。
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Jiří „Dymo“ Urban - Guitar
Jan „Protheus“ Macků- Vocal
Jan „Gorgy“ Görgel - Guitar
Artur „R2R“ Mikhaylov - Bass
Miloš „Mildor“ Meier - Drum
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■Revolter
エネルギッシュで軽快なオープニングチューン。
ズシリと重いギターリフに続いて朗らかに歌い出すProtheusのどこか民族情緒を感じさせる節回しはKorpiklaaniのJonneにも通ずる所がある。
チェコ語は分からないけど、コーラスはキャッチーで十分にシンガロングできる。
■Zůstaň Stejná
テルミンにも似た電子音をリフに配し、その繊細な音を分厚いバンドサウンドで包み込みら勇ましく進行していくミドルテンポチューン。
■Není Cesty Ven
グルーヴィなベースラインに乗せてツーバスドコドコアップテンポに進むハードロックスタイルなチューン。
ギターソロはスウィープを混ぜてエモ味を混ぜ、コーラスのチャントはインドのメタルバンドBloodywoodの民族シンガロングの香りすら感じる。
■Komu Zvoní Hrana
ピョンピョンした電子音が跳ね回る中、野太いダミ声がキャッチーな旋律を歌い上げていくスタイル。
■Volám Jméno Tvý
ピヨピヨしたシンセ音と表裏を成すような深重なProteusのナイスミドルボイスが冒頭で楽しめる。
男臭さを撒き散らすヴァースからのコーラスはクリーンギターに乗せてシンガロングできるフレーズがなんとも心地良い。
ギターソロでは突如天空に昇るスカイギターが登場。
■Pot A Krev
「ぽったっくれぶ!」
巻き舌を混ぜながらオペラティックに大仰に歌い出すチャントメタル。
■300
300と言えば言わずもがなあの映画が思い浮かぶが、まるでスパルタ軍の進軍を想起させるような地鳴りの如きドラムとベースとギターが渾然一体となり雄々しく迫るサウンド。
■S Nadějí
チェコ語で紡ぎ出すメロウな雰囲気に鋼鉄感溢れるメタルなサウンドが重なり、懐かしくも新鮮な世界観。
■Klub Rváčů
歪み切ったギターサウンドが軽快にザク切りリフを放ち、トレモロリードが雄々しく駆け巡る爽快なハードロックチューン。
そこはかとなくLordi感があってパーティタイムを繰り広げたい気持ちになる。
■Pravda A Lež
物悲しいクリーンギターの調べに乗せてしんみりと語り出し、徐々に激情に変化していく心情が描かれるハードバラード。
■Chernobyl
「ダダダ〜ダ〜ダ〜♪」から始まる大仰で重厚なヘヴィメタル。
このテーマを歌えるのはRammsteinか、このDymytryといった旧東側バンドしかいないと思う。
この文字の意味する所は、自分には到底理解できない複雑で深淵なる意味がある事はなんとなく分かるが、ただ表面的なサウンドを聞いただけでもチャントしたくなる力強さと微かな物悲しさを持っている。
総合満足度 85点