CODE ORANGE 『Underneath』(2020)
ハードコア激戦区アメリカが誇る最先端モダンラウドハードコアバンド、CODE ORANGE。
2008年にペンシルヴァニア州ピッツバーグで結成、2012年にDeathwish Inc.との契約を結ぶと、同年に初のフル・アルバム『Love Is Love / Return To The Dust』を発表し、瞬く間にシーンでの評判が広まる。
当初はCode Orange Kidsというバンド名だったが、なんとその頃バンドメンバーの大半はその名前の通り学生。
しかしその若さに似合わず高度に濃縮されたハードなコアサウンドは高品質で、当然批評家達の間で「おそるべき10代」と噂になる。
その獰猛かつストレートなハードコアサウンドとエネルギー溢れる逞しい演奏スキルは、Every Time I Die といった若手有望株なバンドとともに業界での評価が鰻登り。2017年にはビッグレーベルであるRoadrunner Recordsと契約を勝ち獲る事になる。
2017年にリリースされたアルバム『FOREVER』は、Rolling Stone's誌やRevolver誌等の有名誌でその年の年間最優秀アルバムTop20に輝き、一躍アメリカのハードコアを代表するバンドに躍り出る。
コロナ禍に差し掛かっていた2020年リリースされた本作『UNDERNEATH』は、前作『FOREVER』まではドラム兼ヴォーカルだった Jami Morganがヴォーカル専任になり、Dominic Landolina(Gt,Vo)が加入した事によりギターサウンドがさらに厚く、さらに積極的にノイズや電子音を載せる事により、また一層モダンでメインストリーム感が増した一枚。
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* Jami Morgan – lead vocals、drums(レコーディングのみ)
* Eric "Shade" Balderose – backing vocals、keyboards
* Reba Meyers – backing vocals、lead vocals、guitar
* Joe Goldman – bass
* Dominic Landolina – guitar
* Max Portnoy – drums
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■(Deeperthanbefore)
不安感を煽るSEから少女の不気味な呟き、そしてノイズが騒ぎ出すアルバムの開幕を告げるインスト
■Swallowing The Rabbit Whole
クリーンなキーボードが煌めくイントロからヘヴィなギターリフとスクラッチノイズの波が押し寄せる。
まず驚くのが、前作では申し訳程度にしか入ってなかったさまざまな効果音、ノイズ、電子音がメインを張る勢いでそこかしこに散りばめられている事。
ポストハードコアバンドとしての矜持、自分達が最先端モダンラウドサウンドを切り開いていくんだという気概が漲る一曲。
■In Fear
電子音ノイズとともにフックのあるギターイントロが印象的なインダストリアルハードコア。サウンドの合間に完全に無音になる瞬間だったり、強烈なエフェクトを掛けたスクリームノイズがあってドキッとするが、その尖り切ったサウンドは彼らなりの「Fear」の表現方法。
■You And You Alone
「またヒトリ…」「タダヒトリ…」と呟く声が不気味に頭に残る激烈ノイジーチューン。
筋肉質なリズム隊とグロウルのぶつかり合いが生み出す空間が強烈。
最後には激悪にブレイクダウンして終了。
■Who I Am
トリップ感溢れるJami Morganの歌声とアトモスフェリックなサウンドと、たまに挟まるハードなエッジのギターサウンドがクセになりそうな曲。
OASISやBlurがいた90年代ブリットポップの雰囲気ある。
■Cold.Metal.Place
凶悪な落としとノイズで独特の「冷たさ」を演出するミクスチャーコア。
情報量の多さに比して不自然に遅いテンポが底知れぬ不安感を煽る。
■Sulfur Surrounding
クリーンVo担当のReba Meyersがフィーチャリングされている物悲しげな曲。
Jami Morganのグロウルと絡みながらも、ギターが歌う場面はアルバムで一番多く、バッキングの刻みもストレートなハードロック調。インダストリアルノイズがマシマシな本作に置いて逆に異彩を放っている。
■The Easy Way
Bullet for my ValentineやTriviumを感じる爽やかなハードコアナンバー。
2:30あたりからやや雰囲気が変わり、クリーンで空間的なギターサウンドが加わり、コーラスをアレンジしていく。
最後はノイズで包み込みフィニッシュ。
■Erasure Scan
頻繁にテンポチェンジしたり、ありとあらゆるノイズをまぶしまくり奇怪な音像に仕上げたチューン。
■Last Ones Left
メタルなギャロップリフをかましながら激進するギターインダストリアルな曲。
サークルピット不可避なコアチューン。
■Autumn And Carbine
Rebaがパンキッシュに、吐き捨てるように、ちょっとダレるように歌うロックな一曲。
デジタライズされたモダンなBlurみたいなサウンドイメージ。
■Back Inside The Glass
疾走とブレイクダウンを繰り返し、ゴリゴリのギターノイズをぶつけていくハードなチューン。
焦燥感のあるグロウルも漢臭くて良い。
2:30という短いながらも濃厚な曲。
■A Sliver
不穏なメインテーマをリピートしながらもキーボードが入ることでやや平静を保つことができるエクストリームな一曲。
神秘的にすら聞こえるクリーンボイスとカオティックに喚き散らすデスボイスの対比が美しい。
■Underneath
Rebaがリードを取るミドルテンポチューン。終始不安定なメロディとサウンドスケープに途中から煽るように入り込んでくるギター、そしてグロウル。
比較的ノイズやテンポチェンジは少なく、ひたすら同じメロディを繰り返す。
総合満足度 82点(目まぐるしいノイズが最高にクールな一枚)