Dark Tranquility 『Endtime Signals』(2024)
スウェーデンを代表するイェーテボリスタイルの体現者、Dark Tranquility。
---------
★関連レビュー
Dark Tranquility『FICTION』(2007)
----------
来年10年ぶりに待望の来日が発表されたので、2024年8月に発表された最新作をレビュー。
前作『Moment』がChristopher Amottが在籍していた影響か、叙情的でかつテクニカルキャッチーな良盤ではあったので、この路線を踏襲して欲しいと思っていたが、なんとChristopherがこの一枚のみで脱退、さらに長年ダートラのベースだったAnders Iwers(In FlamesのPeterの兄)、最近入ったばかりだと思っていたドラムのAnders Jivarpも変わっており、若干の不安を覚えながらの視聴。
結論、前作の延長線上にある良盤。
超絶キラーチューンはないものの、新加入メンバーがしっかりと存在感を示しており、かつ今までのダートラがしっかり生きていて、安心できる一枚。
ミカエルスタンネの声がまた一段と深みを増している。
——
・Mikael Stanne - Vocals
・Johan Reinholdz - Guitar
・Martin Brändström - Electronics
・Christian Jansson - Bass
・Joakim Strandberg Nilsson - Drums
——
■Shivers and Voids
クリーントーンで語る物悲しい旋律から、哀愁リードにシームレスに繋がるいつもの荒涼激情ダートラ節をまずは確認。
新加入のギター、Johan Reinholdは、クリストファーの後任というプレッシャーがかかる中、ギターソロの表現もなかなかテク&叙情的で一安心。トーンも張りがあって、すごく良いです。
往年のダートラニキが勢揃いでガッツポーズ不可避の開幕曲。
■Unforgivable
ツーバスドコドコ疾走チューン。
Mikael Stanneの言葉を借りるなら、「創造性の新鮮なうねりと新たな活力が火花を散らすこの曲の歌詞は、抑圧に直面した時のフラストレーションと無力感の中から強靭さを引き出す」
まさに言い得て妙です。
リードギター、ソロがまばゆい光を放ち過ぎて、思わず値踏みするようにホール後方で腕組みしているオーディエンスも最前に雪崩れ込んでくるレベル。
■Neuronal Fire
曲を支配するトレモロギターが世紀末を知らせるホーンサウンドの如く大気に漂うダークな透明感あるチューン。
JohanがChristopherに対抗心むき出しでテクいフレーズを惜しげもなく繰り出してくるのも大歓喜です。
今作から参加のJoakim Strandberg Nilssonの手堅いドラミングもタイトで良き。
■Not Nothing
スローに、しかし緊張感を持って突き進むチューン。
相変わらずMikael Stanneの嘆きのクリーンボイスは健在で、終末の絶望感と諦観を併せ持った混沌さをライトアップしたような歌声。
前作までと比べて、ベースが強くなっている気がする。
これも新加入のChristian Janssonの影響か。
■Drowned Out Voices
ボトムから湧き上がるような重厚リフに、テクニカルに叙情的に絡みつくギター、そして寒々しい空間を切り裂く印象的なリードフレーズ。
これぞ大好きだった「あの頃」のイェーテボリスタイルが詰まっている。
2:26あたりから聴ける「ナイスミドルな賢者ボイス」は、ファンタジックな世界観を創り出すMikael Stanneの本領発揮ポイント。
これを聞くためだけにこのアルバムを購入する価値ある。
■One of Us Is Gone
深淵に引き込まれていくように体の芯に染み渡るMikael Stanneのディープなボイス。
怪しく包み込まれるような幻想サウンド。
■The Last Imagination
メタリックな刻みリフに乗せて疾走気味に進む伝統的なダートラスタイルチューン。
コーラスでは透き通るようなピアノの旋律も絡み合い、増幅した荒涼感を感じる度、胸が息苦しく高鳴ってしまう。
■Enforced Perspective
ツービート疾走チューン。
ギターはピロピロ緊張感のあるリードフレーズを繰り出し、ドラムはタイトなリズムで突き進む。
イントロからヴァースまでの流れは完璧だったが、しかしコーラスはさほど盛り上がらず、な惜しい曲。
■Our Disconnect
Martin Brändströmの奏でる、荘厳かつAmorphis的なトリップを誘うシンセ音の偉大さに気づく、メランコリックに漂うチューン。
突然取り憑かれたように弾き倒すギターソロは感嘆のため息が漏れる。
■Wayward Eyes
ヘヴィかつ耽美的なサウンドに包まれたギターを背に、Mikael Stanneは深みのある低音クリーンボイスとグロウルを使い分け深淵なる世界観を丁寧に構築していく。
Martinのシンセが近未来的な音質を与えると思いきや、どうやってもファンタジックな方向にしか行かなくて、そんな所も含めてダートラらしくて好き。
■A Bleaker Sun
ゴリゴリしたギターでアグレッシブに最後まで攻めきるかと思いきや、2:26からの幻想的に号泣するギターソロで全てを持っていく淡い鋼鉄感を秘めたチューン。
■False Reflection
歴を経るごとに深みを増すMikael Stanneがひたすらにいい声で物語を紡ぐ重厚幻想曲。
恐怖すら覚える耽美なひととき。
■Zero Sum
ボーナストラックにしておくのは惜しすぎるメタルチューン。
軽佻に駆けるビートを緩やかに追いかけるようなシンセサウンドとギターが躍動する。
本編に入れて欲しかった。
総合満足度 84点