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The Word Alive『Hard Reset』(2023)

アメリカ アリゾナ発のメタルコアバンドThe Word Alive

2008年にCraig Mabbitt (現Escape the Fate)、Zack Hansen (guitar) 、Tony Pizzuti (guitar)が中心となり、結成。

何枚かEPを作成する中で、Escape the Fateと兼任していたCraigのスケジュールに残りのメンバーが不満を持ち、Craigをクビに。
代わりにIn Fear and FaithのTyler Smith(Telle)を加入させ、2009年に大手インディーズレーベルFearless Recordsと契約を結び、ミニアルバム『Empire』でデビューを飾る。
このアルバムは、Billboard Heatseekerチャートで最高位15位まで登り詰めると同時に
Alesana、A Skylit Drive 、Silversteinといったバンドともツアーが決定、徐々にバンドの知名度も上がっていく。

しかし有名になれば求められるものも上がっていくもので、周囲からのすすめやバンド内での話し合いの後、長年ドラマーを務めていたTony Aguileraをスキル不足を問題に解雇、Scars of TomorrowのJustin Salinasを加入させ、バンドとしてさらなる高みに向けて動き出す。

しかし皮肉にも彼が在籍した最初で最後のミュージックビデオ『The Only Rule Is That There Are No Rules』が各地で好評を得て、デビュー•フルレンクス『Deceiver』のリリースへと繋がる。

その後も順調にツアーを続け、2ndアルバムリリースへとレコーディングをしている最中に設立時からのメンバーであったDusty Riach (keyboards)と、加入したてのSalinas(drums)が相次いで脱退、理由は不明だが、ツアーに疲れたとかそんな理由だったよう。

しかし新たに若干19歳ではあったが、スキルフルかつYoutubeで知名度も高かったLuke Hollandを加入させ、2012年に『Life Cycles』をリリース、無事にParkway DriveとのプロモーションツアーやVeil of MayWhile She Sleepsとの全米ツアーを成功させる。

2014年にはプロデューサーにSleeping With Sirens、Memphis May Fire、Woe Is Me、Machine Gun Kelly 、 Avril Lavigneと言った名だたるアーティストの作品を手がけてきたCameron Mizellを迎え『Real』をリリース。
このアルバムのツアーも大規模に及び、Chelsea Grinをはじめ様々なバンドのサポートやヘッドライニングツアーを行うのだが、そのツアー中にTelleが背骨を負傷、予定されていたいくつかの公演をキャンセルする事になる。
さらに、2016年に新アルバム『Dark Matter』をリリースするも、そのツアー中にLuke Hollandが脱退、そして翌年2017年Daniel Shapiroも脱退するという割と統制が効かなくなっていた危機的な状況にもあった。

2018年には『Monomania』をリリースし、一時は軌道を戻すも、2021年にはバンドのオリジナルメンバーであったTony Pizzutiが脱退、そして長年在籍したFearless Recordsを離れ、Thriller Recordsに移籍するという激流を乗り越えてリリースされた本作『Hard Reset』は、前作から3年ぶり7枚目となるアルバム。

色々なことがあった中での、Hard Reset。
なかなか思いの詰まったタイトルにしたな、と思うが、サウンドは基本前作を踏襲しつつも、よりメロディやドラムのビートが洗練された印象。

HARD RESET

前作までたまに見られた狂気的でアグレッシブな曲は多くないが、しかしゲストが多数参加しているため、バリエーションが増えてより大衆ウケしそうなアルバムではある。
特にEscape The Fateに移ったCraigがフィーチャリングされた『Fade Away』はエモさの極み。

——
* Tyler Smith – lead vocals
* Zack Hansen – guitars, backing vocals, keyboards, bass
* Jose DelRio – guitars, backing vocals, keyboards, bass
* Daniel Nelson – drums
—-

■The Word Alive Is Dead…
不穏な語りとともに展開されるバンド名を冠したインタールード。
タイトルの中に「Alive」と「Dead」が同居していて、なんとも複雑な空気を予想させる。
これから始まる旅路は希望に満ちたものなのか、それとも…


■Hard Reset
アグレッシブに躍動する強靭なサウンドが豪快に響くメタルコア。
強いベースラインに支えられて伸びやかに響く清澄なコーラスに、思わず首が振れてしまう。
今までのしがらみや過去の出来事を振り切るような、まさにハードにリセットをしていく突破力のある一曲。


■Strange Love
重厚かつ前のめりに叩き出す圧強めのビート、足元から全てを包み込んで轟音の渦に巻き込むモダンミクスチャーサウンド。
VoのTelleのクリーンボイスは線は太いのに高音も綺麗に出るし、吐き出すようなシャウトも強烈な圧をともなうので、轟音バンドサウンドの中でも全く埋もれていない。
後半、強烈にブレイクダウンする箇所は上下幅の大きなヘドバンで対応推奨。


■One Of Us (feat. Bad Omens)
Bad OmensのNoahが参加する王道ミドルテンポメタルコア。
重心の低いベースを鳴らしながら、不思議に浮遊感のある歌声を被せることでモダンヘヴィネスとは何かを問いかける一曲。
このあたりはさすがのBad Omensの影響か。
2:13あたりからヒステリックに喚き散らす箇所は叫び系メタルが好きなキッズにはたまらん時間でしょう。


■New Reality
KORN由来のNu Metalの風が漂う怪しげな熱気を帯びたヴァースに続き、コーラスではTelleのクリーンボイスが熱烈な爽やかさを連れてくる。
コンパクトながら聞き応えのあるメタルコア。


■Hate Me (feat. Loveless)
キャッチーさに見事に振り切ったチューン。
なんか妙にタイトルの強烈さとは真逆にも聞こえる爽やかさが漂ってないか?と思ったらLovelessのJulianが参加ということで納得。
ポップすぎて、軽やかすぎて、何度でもさらりと聴けてしまう。


■Slow Burn
ハードなスローチューン。
テンポこそスローだが、しっかりと音圧は強いし、短いギターソロもあるボリューミーなチューン。


■Fade Away (feat. Escape The Fate)
Escape The FateのCraig Mabbittがゲスト参加。
Telleと前任Voがまさかの共演とのことで、それだけで手汗だくだくですよ。
実際、アルバム中イチくらいのヘヴィなサウンドでスクリームやら、うねるようなリフを間断なくかまし、心臓にダイレクトに響くアグレッシブなビートが煽ってくるもんだからもう全身フル発汗待った無し。
最後の音割れ寸前のロングトーンデスシャウトは圧巻。


■A New Empty (feat. Philip Strand)
細かく刻みながら緊張感を高めていく重いギターリフ、スラップベースも顔を出しながら、ゲストのPhilip StrandとTelleはしっかりとシンガロング。
曲全体に芳醇な轟音が隙間なく漂い、なんとも贅沢な時間を届けてくれる。
こういう王道ヘヴィメタルコアでしっかりと胸を焦がさせてくれるから、TWAへの信頼は揺るぎないものに。


■Static Rain
何層にも重なるぎっしりと重量感のあるサウンドで全体を包みながら、ミドルテンポでしっかりと芯のあるメロディを聴かせてくる華のあるメタルコア。
特殊な事をやっているわけではないが、あくまで王道的に音を積み上げていっている事が分かる濃度が高い楽曲。


■Invisible Army
ニューメタル的なヘヴィネスはあるが、コーラスが明るい感じなので、退廃的な雰囲気はほぼなく、アメリカ西海岸の風を感じる、むしろカラッとしたポストハードコア寄りのサウンドスケープ。
ブリッブリのベースはハードに響いていて間違いなく激烈音空間を想像するのに一役買っている。


■Nocturnal Future
テクニカルなギターリフで開幕し、扇情感のあるクワイヤを差し込んで、クリアな歌声でアップテンポに駆け抜けるCrossfaithやColdrain感満載のコアチューン。
音像的には筋肉質なモダンサウンドだが、時たま鋭い刃を思わせるギターや地をうねり散らすベース、破壊力のあるシャウトが躍り出てくるソリッドな一面もあり、アドレナリンが止めどなく噴出し続ける。


■War With You (feat. From First To Last)
クリーンなシンセサウンドとストリングスを配し荘厳さを演出しつつ、遮るものとてない鳥の飛翔のような無縫の響きが鮮やかに飛び回る、アルバム最後を飾るゴージャスなメタルコア。
ここに来てこのクオリティのメロディを繰り出してくるバンドのクリエイティビティに、ただひたすら拍手と力いっぱいのヘドバンで応えたい。
ゲスト参加のFrom First To LastTravis Richterがピッグスクイールに似たヒステリックなシャウトをかます中、しれっと最後に半音転調してリスナーの心を動かしてくるのも罪深い。


総合満足度 84点

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