Wage War『Manic』(2021)
アメリカはフロリダ発のメタルコアバンドWAGE WARの通算4枚目となる2023年にFearless Recordsからリリースしたアルバム『Manic』
Cody Quistad(Gt/クリーンVo)とSeth Blake(Gt)が高校生の時に組んだEmpireというバンドが元になり、そこにBriton Bondがグロウル担当として加入し、Bass(Jordan Pierce→ Chris Gaylord)とDrums(David Rau → Stephen J. Kluesener)が加わりラインアップが完成した。
2015年にA Day To RememberのJeremy Wade McKinnon のプロデュースにより『Blueprints』でデビューする。
2017年にはA Day To Rmember主催のSelf Help Festivalに出演し、もはやベテランとなっているAugust Burns Redをはじめ、Chelsea Grin、I Prevail、The Amity Affliction、Every Time I Die、Parkway Drive といった勢いのあるメタルコアバンドに認知されるようになる。
キャリアを順調に重ねた彼らの円熟味すら感じる今作は
アグレッシブな所は前作より激しく、クリーンな箇所はよりメロディアスかつタイトに完成させたメタラー必聴の一枚。
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Briton Bond – lead vocals
Seth Blake – lead guitar, backing vocals
Cody Quistad – rhythm guitar, clean vocals
Chris Gaylord – bass, backing vocals
Stephen Kluesener – drums
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■Relapse
重く挑発的なリフに続いてCodyのウィスパーボーカルが流れ出し、間髪入れずにBritonの激圧グロウルパートが飛び出し、伸びやかなコーラスへと繋がる。
ちなみにコーラス終わりのRelapse!!!は全員合唱マストのシャウトパートです。
最後は思いっきり暴虐ブレイクダウンして終了。
■Teeth
メタルコア然とした分厚い音の塊が一挙に押し寄せ、Britonのラップ調の煽りVocalが絡まる。
コーラスはCodyの煌びやかなクリーンVoが、闇から光へ遷移する快感を、そう、言うなればメロコアの美しいところを全部体現している。
■Manic
EDM的な前半から不穏なデスラップで畳み掛ける後半に雪崩れ込む。
KORNやLimp Bizkit の雰囲気を感じる鬱屈した暗い感情を一気に爆発させたような激情型投げやりラップに興奮が抑えきれない。
3分に満たない短い曲だが、破壊力抜群。
■High Horse
ニューメタル風の単音で粒の揃ったリフで捲し立てつつ、SlipknotやLamb of godを思わせるような怪しくうねるグルーヴィなベースラインに焦燥感のあるドラムが煽る。
テンション的には、行き場のない暗黒エモーションを爆発させるような終始スクリームグロウルを続ける前曲に引き続きのパターン。
■Circle The Drain
Britonの語りかけるような落ち着いたVoに、Codyの爆発的に輝く、しかし同時にどこか儚さも孕んだコーラスが伸びやかに迫ってくる。
彼らが10年のキャリアの中で築き上げた切なさと激しさの中和反応が高次元で炸裂し、聴くものを陶酔の渦に巻き込んでいく。
アコースティックバージョンも素敵なのでぜひ見てほしい。
■Godspeed
無機質な電子音を使う事で心地よい違和感を演出し、ギターリフを主体にズシズシ進む厚みのあるグルーヴ感は、メタルコア界広しといえど彼らにしか出せない躍動感を備えている。
2:30〜3rdコーラスの裏側で伸びやかに対旋律を奏でるバッキングコーラスにも煌めきと鮮やかな才能を感じてならない。
■Death Roll
重いリフとリズムにギターノイズを絡ませて刺々しい威圧感を滲み出させるスローテンポチューン。
■Slow Burn
序盤は優しい歌唱が空間に広がるも、ファイナルコーラスではクリーンVoとグロウルが解け難くもつれあい劇的なサウンドスケープを作り出す良質なメタルコア。
■Never Said Goodbye
美しくもハードなバラード。
箸休めにしては感動的すぎる。
■True Colors
ヘヴィでグルーヴィで粒の揃ったリフに導かれようにBritonが芯の強いVoからグロウル、そしてコーラスではCodyが煌びやかに歌いあげるお決まりのパターン。
Britonの憤怒の雄叫びを合図に始まるブレイクダウンパートは激重。
■If Tomorrow Never Comes
ヘヴィネスに揺られる逸楽感と、耽美なコーラスに惑う陶酔感が渾然一体となり合法的なトリップを可能にする曲。
こういった「浮遊感ヘヴィネス」をウリにするバンドは数多いるものの、Wage Warはその最前線にいる事を再確認。
総合満足度 87点(manic状態でリピートするレベル)
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