Funeral for a Friend『Hours』(2005)
ウェールズで結成された5人組ポスト・ハードコアバンド。
2001年、前任VoのMichael Daviesが脱退し、後任を探していたギターのMatthew EvansとドラムのJohnny PhillipsがMatt Davies (後にDavies-Kreyeに改名)に新Voとして加入するよう声を掛け、加入。
デビュー時のバンドの形が固まる。
アメリカのバンド、Planes Mistaken for Starsの同名曲から取ったバンド名Funeral for a Friendに改名し、Mighty Atom Recordsとアルバム二枚契約を結ぶと、1stEP『Between Order and Model 』(2002)、2ndEP『Four Ways to Scream Your Name』(2003)をリリース。
これが各地の評判を呼び、Kerrang! 誌でThe Darknessを抑えて一枚もアルバムを出していないにも関わらず、2003年UK New Comerを獲得する。
2003年、満を持してデビューアルバム『Casually Dressed & Deep in Conversation』をリリース。
UKではすぐにゴールドディスク認定され、アメリカでは正式にリリースされなかったものの、1st2ndEPから曲を集めたミニアルバム『Seven Ways to Scream Your Name』が話題を呼ぶ。
このアルバムは、ハードコアパンクやメタルからemoやスクリーモといったジャンルを明確に独立させ、その地位を飛躍的に上昇させることに成功する。
続く本作『Hours』はその前作の空気感は踏襲しつつも、シャウトやグロウル成分を大幅にカットし、よりギターメロディに重きを置いた創りになっており、デビュー作で提示したemoやスクリーモのはっきりした輪郭から、逆にメタルやハードコアに接近した様子すら感じる、彼らのクリエイティビティの幅広さを伺わせる名盤。
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Kris Coombs-Roberts – guitar, backing vocals
Gareth Davies – bass guitar, backing vocals
Matt Davies – vocals
Ryan Richards – drums, percussion, unclean vocals
Darran Smith – guitar
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■All the Rage
鳴動するドラム、躍動するギター、そして若干の悲哀を孕みつつ弾ける様な爽やかな風を感じさせるMattのクリーンvo。
シャウトやグロウルはないが、充分聞き応えのあるオープニングトラック。
■Streetcar
ピロいギターとザクッと図太いサウンドの両輪で彩るスクリーモチューン。
Iron Maiden風味もありつつ、本家の勇壮さを際立たせる音というよりは、エモの爽快さに軸足を置いた音創りになっている。
途中でスローダウンします。
■Roses for the Dead
アルバム一キャッチーでライブ映えするであろうメロディックハードコア。
曲を絶え間なく流れる流麗なギターの音色と圧倒的なフレーズの美しさ。
前半の印象的なサウンドに耳を奪われがちだが、実は3:27からのトレモロギターに乗せた最後の一分間の爆発力もなかなか胸にクる。
■Hospitality
繰り返される「ズダダダダダダダ」の剛毅な8連符が曲にモーメンタムを与えつつ、強力なハイライトにもなるミドルテンポチューン。
■Drive
メランコリックなクリーンサウンドの上を滑る様に、ときに感情的にシンガロングしていくバラード。
■Monsters
ハードに叩きつけるビートが、荒々しいギターの鳴動を呼ぶ鋼鉄チューン。
低音の歪みとmake no sense と叫び続けるVoも共鳴し合い、離れ難い音の塊が耳に飛び込んでくる。
■History
熱気が冷めきらないまま、徐々に涼やになっていく夕暮れの風の様な曲。
切ないメロディラインが、甘さと少しの哀愁を混ぜあわせながら、夜の騒々しさへと導くバラード。
■Recovery
筋肉質で、それでいて研ぎ澄まされた刃のようなソリッドなギターがザクザク斬り回るメタルチューン。
突如、降り落ちてくる「Promise me…」のウィスパーにドキドキする。
■The End of Nothing
雄偉なグルーヴが流星の様に煌めくエナージティックなチューン。
このアルバム通して唯一のグロウルも満を持して飛び出し、メタリックな外容に華を添える。
■Alvarez
ギターの存在感がどうしても目立ってしまうメロディアスで哀愁に満ちたポップンハードコアバラード。
■Sonny
エレクトロ要素をフィーチャリングした酩酊感のあるサウンド。
揺られ、揺蕩い、引いては返す音の波がいつまでも去らない、そしてそれが快感ですらある麻薬的な曲。
総合満足度 82点
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