Polaris『The Mortal Coil』(2017)
オーストラリア シドニー発のプログレッシブメタルコアバンドPolaris。
日本に同名の人気バンドがいるが、全く別人です。
2012年にギター(当時、現在はベース)のJake SteinhauserとドラムのDaniel Furnariを中心にボーカルのJamie Hails、ギタリストRick Schneider、そしてJakeの弟Matt Steinhauserの 5人で結成。
デビューシングル『Summit』を発表すると同時にJakeがもっと歌いやすい環境にするため、という理由からギターからベースにチェンジ、バンドは新たなギタリストを探すため一般オーディションを実施し当時15歳であったRyan Siewが加入する。
2015年にシングル『Unfamiliar』を発表、続いてEP『The Guilt & The Grief』をリリースするとARIAチャートで34位まで上昇する。
2017年、待ちに待ったデビューアルバム、本作『The Mortal Coil』が発表され、期待の新人バンドとしてオーストラリアのメタルシーンを揺るがす。
2018年のARIA Award for Best Hard Rock or Heavy Metal Albumにノミネートされる程話題になったこのアルバムは、演奏技術の高さはもちろん、nu-metalへのリスペクトとともにリバイバルブームへ新たな境地を開いた一枚。
日本のバンドっぽい展開やサウンドもあり、聞きやすい。
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* Daniel Furnari – drums
* Jamie Hails – unclean vocals
* Rick Schneider – rhythm guitar
* Jake Steinhauser – bass, clean vocals
* Ryan Siew – lead guitar
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■Lucid
Jamieの絶叫シャウトで派手に幕を開けるハイテンションメタルコア。
大蛇が浅瀬を這いずり回るがごとくうねるギターが曲のダイナミズムを生み出し、コーラスではシンガロングの波が抑えきれない華やかな一曲。
■The Remedy
吐き捨て型のシャウトボイスが一発一発の音に乗る魂のミドルテンポチューン。
メロディラインが秀逸。
■Relapse
ギターが主張するポップでキャッチーなメロコアチューン。
ベガスやアルテマあたりのピコリーモ風味もあり、ワンオクやcoldrainのカッコ良さもある正統派の日本バンドっぽい曲。
■Consume
これはDjentの皮を被ったNu-Metalですわ。
無慈悲にザクザク刻むリフに、軽やかにギュンギュンピロピロ乗るギターソロに、否が応でも頭が勝手に振れてしまうやつですわ。
■Frailty
無骨で鋼鉄なリフを無表情で決めてきたかと思いきや、コーラスでおしゃれさとエモさが滲み出てしまう展開に腕組みしてしかめっつらのコアおじも思わずにっこり。
ブレイクダウンするところもしっかり決めてヘヴィネスネイティブなモダンキッズへのケアも欠かさない様子。
■In Somnus Veritas
静かに深海に沈んでいくようなギターサウンドに、突然嘆きのようなシャウトが響き渡るなんとも切ない曲。
■Dusk to Day
デスシャウトと切なさ乱れ打ちのクリーンボーカルが交互に主張を繰り広げるスローテンポなハードバラード。
流麗に指板を駆け巡るギターソロが涙を強引に誘ってくる。
■Casualty
マシンガンやガトリングガンの如き迫力と疾走感のある無機質なビートに、情感溢れる爽快なコーラスが乗る。
■The Slow Decay
スローにじんわりと展開したり、ちょっと疾走したり、落とすところはしっかりブレイクダウンしたり、クリーンで綺麗なメロディを紡いだり、七変化しながら表に出るはずのデスシャウトを背景のように使う情報量の多い曲。
下手するとバラバラになって何がしたいかよく分からなくなりがちな展開を、最近のメタルコアバンドはみんな上手く作ってくるから恐ろしい。
■Crooked Path
爽快なコーラスと絶叫シャウトが強靭な二本の柱となり、爽やかメロディを滑らかに掻き回すギターサウンドがバンド名の北極星の如く煌めく、これからのオージーのメタルシーンの羅針盤になるであろう一曲。
■Sonder
静かに、かつ豪快に激情をほとばしらせながら始動するそのドラマチックなサウンドとダイナミックな展開は同郷のParkway Driveを思わせる。
アルバム最後にして、彼らの野望を詰め込んで煮込んだこの一曲は、確実に希望に満ち溢れている。
総合満足度 89点(これからのAUメタルシーンの北極星になるレベル)