I Killed the Prom Queen 『Music for the Recently Deceased』(2006)
オーストラリア アデレードにて2000年に結成されたメロデス/メタルコアバンド。
メンバー交替と解散と再結成を繰り返しながら3枚のアルバムを出し、2017年を最後に活動休止をしてしまった。
オリジナルメンバーはBen Engel(bass guitar)、Simon O'Gorman(guitar)、JJ Peters (drums)、 Lee Stacy(vocals)、 Jona Weinhofen (guitar)の4人で結成当時はまだ皆学生。
結成当初はThe Rubik's EquationやChild Left Burningといったバンド名で活動する事もあったが、Michael Crafter がVoとして加入した2001年頃からI Killed The Prom Queenというバンド名を使い始める。
2004年にEVERGREED TERRACEのメンバーの後押しでHAND OF HOPE RECORDSより1stアルバム『WHEN GOODBYE MEANS FOREVER』でデビュー、Poison the Well,やConverge、HatebreedといったアメリカンデスコアとAt the Gates、Soilwork、In Flamesといったスウェディッシュデスメタルを組み合わせたサウンドで、地元アデレードのチャートで数週間1位を継続するという上々のデビューを飾る。
HELLFESTをはじめ、数々の世界的に大きなフェスに参戦し評判を高めていき、オーストラリア国内のネクストカミング最有力だった
さなか、バンド最大の功労者だったVo のMichael Crafterが2006年に、EP『Your Past Comes Back To Haunt You』のレコーディング後に急遽脱退。
後任としてThe Hunt For Ida WaveのEd Butcherが加入し制作されたのが本作
『Music for the Recently Deceased』で、日本国内で発売されると、前任からのプレッシャーも跳ねのけるパフォーマンスを見せつけ、たちまち日本でもファンが増えはじめる。
しかしその後は、2007年にそのEdもまさかの脱退という悲劇にバンドは耐えきれず崩壊、2014年に再活動するも、すぐに活動休止してしまい、さらには元ベースの逝去などもあり、現在では完全に沈黙してしまっている。
その短い活動期間の割には印象的なアルバムとサウンドを残しており、多くのメタルコアファンの記憶に残るバンドだと思う。
そんな惜しいバンドが生み出したゴリゴリなコアチューン、メロデスナンバーが詰まった一枚、レビューしたいと思う。
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* Ed Butcher – vocals
* Jona Weinhofen – guitar, keyboards, vocals
* Kevin Cameron – guitar
* Sean Kennedy – bass
* J. J. Peters – drums
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■Sharks in Your Mouth
勇壮なイントロに導かれ地の底から這い出してきたかのようなグロウルが響き渡る。
時にブラストビートに乗せて激走し、奈落の底に叩き落とすブレイクダウンと情緒的なギターソロも織り交ぜ、息つく暇も与えぬ程ひたすら攻撃的な空間を創出する。
■Say Goodbye
鋼鉄感溢れるリフがゴリゴリと押し寄せ、Say Goodbye〜のクリーンコーラスがひとときの清涼感を運んでくるデスメタル。
ザラっとしつつも奥行きのある音作りで初期のSoilworkの手触りを感じる。
■€666
テンポの展開が忙しいデスコア。
ブラスト炸裂→重々しいスローテンポ→再び疾走→バスドラダブルペダルが映えるミドルテンポ、と次々に変化するが、それに負けじとこのアルバムから加わったEd Butcherのガテラルスクリームが所狭しと叫び回る。
■Your Shirt Would Look Better with a Columbian Neck-tie
クリーンパートのシンガロングは正真正銘のアメリカ西海岸メタルコアなのに、バッキングギターワークとギターソロがスウェーデン直輸入なハイブリッドチューン。
■The Deepest Sleep
北欧メロデスとアメリカンメタルコアの高次元の融合がこのバンドの特徴だが、まさにそれを形にしたメロデス/メタルコア。
流麗なギターイントロから始まるイェーテボリスタイルに、ドスっと響くブレイクダウンと主張強めのギターソロが組み合わさり、両文化の奇跡の邂逅を見る。
■Bet It All on Black
メロデスヘッドバンガー達が挙って首を振り出し、フロアをモッシュの海に変える強力なデスメタルチューン。
印象的なザクザクピロピロしたバッキングはもはやDjentの領域にも進出しており、メシュガーのFredrik Thordendalや、切れ味で言えばダートラ時代のMartin Henrikssonあたりのプレイを想起させる。
■Headfirst from a Hangman's Noose
哀愁メロディをさらりと組み込んだ骨太メタルコア。
ソリッドな音像とタイトな演奏の中にふと現れる”揺れ”みたいな展開がまた奥深い。
■Sleepless Nights and City Lights
前のめりなガチャガチャした展開からリズムを変えつつ最後まで走り切るエナージティックなチューン。
一曲通じてガテラルのみで押し通す。
■Slain Upon My Faithful Sword
疾走とブレイクダウンを繰り返しながら荒々しく進む単音トレモロを基調としたスラッシーなデスメタル。
正直、似たような曲調が続き、多少の飽きを感じるが、デスボイスまみれの混沌とした世界に突然ぶち込んでくるクリーンボイスのタイミングを待ちながらずっと聴いちゃう。
■Like Nails to a Casket
鋼鉄感のあるギターリフに加えて、2ビートと16ビートを頻繁に行き来するドラミングで煽り、グリッサンド風のハーモニクスを合図に、さらに4ビートに落としてヘヴィネスを体感させる鉄板の構成。
叙情フレーズをユニゾンで奏でながら哀愁を振りかけることも忘れずに。
■There Will Be No Violins When You Die
アルバムを壮大にアトモスフェリックに締めくくるインストナンバー。
総合満足度 83点