「自分が勝利したと感じるかどうかを決めるのは自分自身。他人が決めることじゃない。自分が勝利を感じたらそれは勝利なんだ」トビアス・ガスタフソン(NESTOR)インタビュー
デビュー・アルバム「Kids In A Ghost Town」が世界中のメロディック・ロック・ファンに衝撃を与えてから早2年半。NESTORが新作「Teenage Rebel」を携え帰ってきた。デビュー後の彼らは、正にシンデレラ・ストーリーと言って良い程、新人バンドらしからぬ急激な成長を見せ、ここ数年で活動の場を大きく広げ、知名度もうなぎ上りとなった。ただそれに比例してバンドを取り巻く周囲の期待とプレッシャーはかなりのものだったに違いない。しかし、本作を聞いて頂ければ、彼らはそれに屈することなく、ファンの期待に十二分に応える、デビュー作に勝るとも劣らない傑作を完成させたことをご納得頂けるはずだ。ノスタルジーと哀愁を感じさせる珠玉のメロディが満載された楽曲が溢れ出るほど収録され、正に最後まで隙が無いと言えるこの作品。彼らの才能は偽りのない本物であることを本作は証明したと言っていいだろう。
今回も前回に引き続き、バンドのメインソングライターであるトビアス・ガスタフソンに、デビュー・アルバムのリリース後のバンドを取り巻く環境の変化を伺いつつ、新作完成までのプロセスについて語ってもらった。
※デビュー以前のバンドの歴史については、デビュー直後の2021年に弊社インタビューで公開しているので、未読の方は是非以下から先にご覧頂きたい。
Q: 先ず新作について尋ねる前に、ファースト・アルバムをリリースした後について教えて下さい。デビュー・アルバムを出した頃には、既に世界的にコロナ・パンデミックの影響で多くのミュージシャンはツアーが出来ない状況でした。スウェーデンは積極的にロックダウンを実施せず他の国に比べて自由に行動できたそうですが、あなた達はその時期に行動を制限されていましたか?それとも特に変わりませんでしたか?
トビアス・ガスタフソン(以下T): 確かにスウェーデンでは監禁のようなことは無かったけど、ライヴなどを行うことは許可されていなかったよ。ただそれのお陰でツアーに行く前にリハーサルをする時間が沢山出来たから、それは俺たちにとって良かったね。
Q: デビュー作は世界中のメロディック・ロック・ファンから注目を集めたと思いますが、どの時点から今まで自分がプレイしていたバンドに比べて世間の反応が違うぞと思いましたか?
T: かなり早い段階でだったのは間違い無いね。アルバムをリリースした日にリリース記念ライヴをしたけど、ライヴの2週間前にチケットがソールド・アウトになったのは、俺たちが正しいことをやっているという素晴らしい指標になったよ。
Q: そのデビュー・ライヴは2021年10月にストックホルムで行われたと思います。そのライヴには大勢のファンだけでなく、ミュージシャンなどの音楽業界の人間も来たと聞きました。今振り返ってそのライヴについてあなたが感じたことを教えて下さい。今までのライヴとは何が違いましたか?
T: 俺たちが演奏したのは 6 曲だけで、観客はもっと演奏するよう求めてきたことを覚えているよ。裏方の人間(ラジオの司会者のような人)もいて、もしステージに戻ってもっと曲を演奏しないと、おそらくNESTORは終わるぞと脅されたよ(笑)
Q: デビュー翌年以降はMonsters of Rock Cruiseを始め、ベテラン・バンドが数多く出演しているWacken Open Airなどヨーロッパの有名なフェスティヴァルに呼ばれていますが、デビューしたての新人バンドとしては異例の抜擢だと思います。デビュー後早い段階から出演のオファーは来ていましたか?
T: オファーが届いたのは、デビュー・アルバムをリリースしてから約 6 か月位してからだったと思う。
Q: あなた方は地元ファルシェーピングで2022年からNestorFestを開催しています。このフェスティヴァルを始めた経緯を教えて下さい。また出演する他のバンドはどういう基準で選んでいますか?
T: 俺たちの故郷ファルシェーピングからほど近い場所で開催されるTöreboda Festivalenというフェスティヴァルへの出演をオファーされたんだけど、そのオファーを受け取った時、俺たちは全てが始まった故郷で何か特別なことをしたいということについて話し合ったんだ。結局俺たちはそのフェスティヴァルに参加する代わりに、自分たちの故郷で何かをすべきだと決心した。単独のライヴではなく、フェスティヴァルのようなものにしたいということを話し合った結果、NestorFest が誕生したんだ。他のバンドを選ぶときは、自分たちの心に従ってだね。 俺たちが好きなバンドというのは、それくらいシンプルなんだ。
Q: NESTORはナパーム・レコードとワールドワイドのアルバムリリースの契約をしましたが、バンドの音楽性を考えると他のレーベルからもオファーがあったとは思います。何故ナパームを選んだのでしょうか。
T: 俺たちはディストリビューターが必要だったんだけど、ナパーム は素晴らしいディストリビューター/レーベルだと思ったから、彼らと提携することにしたんだ。
Q: そのナパーム・レコードからデビュー・アルバムをリリースする際に3曲ボーナス・トラックが追加されました。その3曲についてそれぞれコメントを下さい。
“Signed In Blood”と”A Losing Game”はいつ頃書かれた曲でしょうか。ファースト・アルバムに収録された曲と同じ時期ですか?それともNapalm と契約が決まった後に録音しましたか?また”I Wanna Dance With Somebody”はホイットニー・ヒューストンのカヴァーですがこの曲を選んだ理由を教えて下さい。
T: ”Signed In Blood”と”A Losing Game”は両方ともナパームと契約した後に書かれたもので、計画では3曲の新曲を書く予定だったけど、ツアー中だったからそれは無理だった。で、カヴァー曲である”I Wanna Dance With Somebody”を録音することにしたんだ。ただこれはどうしてもこれが良かったという明確な選択ではなかったけれど、それでも 80 年代を感じさせるカヴァーをしたかったから、この素晴らしい曲を選んだよ。
Q: デビュー・アルバムはほとんどの曲をあなたとジョニー・ウィメンステット(G)で作曲していましたが、新作では大部分の曲をあなたとホーカン・グランテで作曲しています。彼と新曲を作る時どのような話し合いをしましたか?このアルバムを作る際にもっとも意識したことは何でしょうか?
T: 先ず言いたいのが、このアルバムでもジョニーがソングライティングには大きく関わっている。ただ別の味付けが必要だと感じたから、ホーカンに連絡を取ったんだ。彼は素晴らしいプロデューサーであり、とても俺たちの助けになってくれた。
「パズル」(曲を作りアルバムを組み立てていくメタファー的な意味で)について考え始めたとき、俺とホーカンはすぐにアルバムの土台が見えてきたよ。ポジティヴな雰囲気のアップテンポのオープニング・ナンバーが必要で、哀愁のあるミッドテンポの曲も必要だとね。そして俺たちはそういった曲を書き始めたんだ(文字にすると簡単そうに聞こえるだろうけど、全然そんなことは無かったけどね)
Q: 新作への曲作りはいつ頃から始めて、どれくらいの期間を費やしましたか? 最初に完成した曲と最後に完成した曲を教え下さい。
T: 2022年11月から始めたよ。完成した最初の曲はAddicted to your love(仮題として”We got to go on”と呼ばれていた)だった。最後に完成した曲はアルバム最後の曲”Daughter”だったね。
Q: あなたが曲を書くときはどういう手順で行っていますか?歌詞を最初に書いたり、思いついたメロディからアイデアを広げていく形でしょうか?また作曲のインスピレーションはどこから得ていますか?
T: それは状況によるかな。タイトルが先に決まっている場合もあれば、フックやコードからの場合もある。ジョニーのギター・リフにインスピレーションを受けることも良くあるよ。
Q: あなたは今スペインに住んでいるようですね。クレジットを見ると新作のレコーディングもスペインで行われたようですが、メンバー全員がスペインに集まってレコーディングをしたのでしょうか?それはいつ頃でしたか?
T: その通り。俺はシッチェス(バルセロナ郊外)に住んでいて、そこにスタジオも持っているんだ。 Nordic Sound Labで録音したドラム以外のレコーディングはすべて俺のスタジオでやったよ。レコーディングは 2023 年 9 月から始めた。メンバーは 1 人ずつだったり、カップルでやって来た時もあった。その前には、全員が俺が作ったデモをリハーサル用に受け取ってね。
Q: アルバム全体の歌詞の内容を考慮して考察すると、今回のアルバムのコンセプトもやはりバンドを結成した1989年に焦点を当てて、夢を諦めずに追いかけることを訴えかけています。今後あなた方が更にアルバムを作ることになっても、このコンセプトは変わらないのでしょうか?
T: どうだろうな。「Teenage Rebel」はある意味ファースト・アルバムの続編だけど、今後のアルバムでこういった「成長」をテーマについて書き続けるとは思えない。ただ、繰り返しなるけど、どうなるかは分からないよ。
Q: 新譜ではイントロの部分で"Law of Jante"(ヤンテの掟)を取り上げ、それを否定しています。これは周りと同調して自分を抑えることなく、自分らしい人生を目指すべきだということですか?つまりはあなた方のように年齢を重ねても夢を諦めるなという意味でしょうか?
T: そのとおり!小さな町の精神には素敵なものもあると思けど、君が言うように、それがお互いを抑圧すべきではないと思う。
Q: アルバム・タイトルは「Teenage Rebel」ですが、このタイトルが先に決まって、その後に曲を作りましたか?それとも曲が先に完成していて、後からタイトルをきめましたか?
T: 元々このアルバムの仮タイトルは、ピーター・パンと、成長を拒否する大人の男性を表す生理学的用語「ピーター・パン症候群」に因んだ「The Lost Boys」だったんだ。これは、ティーンエイジャーであることの全てを意味するというひねりを加えたコンセプトだった。ある意味、俺たちは常に成長することを拒否していたけれど、その一方では、常に責任感を持ち続けていたんだ。
Q: “Victorious”のミュージック・ビデオについて、Behind The Scenesの動画も公開していましたが、かなり細部まで拘った内容になっていますね。ユニフォームや小道具など全てオーダーして用意したと思います。Golden Monksの監督扮する ペル・ラグナルはあなた方のミュージック・ビデオには欠かせない俳優ですが、今回の彼の役割は何者ですか? また出演している大部分のホッケー選手は何者でしょう? 観客は役者の人達ですか?
T: 良い質問だ。ペル・ラグナルは、何らかの理由で俺たちの世代が反抗していた全てのもの(古い価値観や偏見など)を代表するNESTORの宿敵役だ。出演したホッケー選手の大部分はファルシェーピングのチーム、ブルー・ライダースさ。観客はそのビデオを撮影したグリモークラの地元の人々に参加してもらったよ。
Q: “Caroline”はセカンド・シングルで、これもミュージック・ビデオも作られましたが、あなた方を尊敬する部分として、あなた方のビデオには明確なコンセプトやメッセージ性があることと、またそれらは全て時間とお金と労力をかけて作り込まれているところだと思います。今後シングルをリリースする時も一貫して、リリック・ビデオのようなものではなくミュージック・ビデオを作り続けますか?
T: そうなることを願うよ。君が言ったように、撮影には多額の費用と準備に多くの時間が掛かる。それにツアーの間にどのくらいの時間があるか、そしてもちろん経済状況にもよると思う。ただ俺たちの目標というのは、間違い無くみんなが見たくなるようなミュージック・ビデオを作り続けることだね。
Q: 新作に収録されている各曲について解説をお願いします。
1. The Law of Jante
この曲というかイントロは、「自分が特別な存在だと信じるべきではない」などという小さな町の考え方はもう終わったと言っている自分について語ったもの。誰であれ自分に誇りを持つことが大切だとね。
2. We Come Alive
バンドと観客の間の魔法のようなつながりについての曲を書きたかった。俺たちは生きていく、それが全て。 君たちと一緒に俺らは生き生きとするんだ。
3. Teenage Rebel
この曲は、愛と理解が指針だった時代に俺たちが育ったことの、幸運と回想について語っている。
4. Last To Know
アルバムの中で俺のお気に入りの曲の 1 つ。クラシックなラブ・ストーリーだね。
5. Victorious
この曲では、自分が勝利したと感じるかどうかを決めるのは自分自身であるという意味で、「ヤンテの法則」の主題に関連している。他人が決めることじゃない、自分が勝利を感じたら勝利なんだとね。
6. Caroline
この曲はラブ・ストーリーのように見えるかもしれないし、ある意味そうなんだけど、サブ・タイトルには精神疾患と書いてあるんだ。
7. The One That Got Away
たらればの話。1992 年に別れを告げなかったらどうなっていたか? ファルシェーピングでの交換留学の後、彼女がアリゾナに戻らなかったらどうなっていたか。もし俺が君を追ってアリゾナまで行っていたらどうなっていたか。
8. Addicted To Your Love
この曲は一夜限りの情事のストーリーとファンに対する恋愛感情をミックスした曲。
9. 21
21 歳はポジティヴで若さが全て。どこに行くかわからない。けど進むんだ。自分の選択は正しくなかったかもしれないけど、選択したこと自体は正しかった。
10. Unchain My Heart
この曲のテーマは、恋が上手く行かなくなって、気づいたらもう手遅れだということ。君の愛は刑務所で、俺は延々と時間を消費し続けるんだ…
11. Daughter
この曲は自分の娘に宛てて書いたもので、俺にとってアルバムの中で最も重要な曲。それは、親として、俺たちが生きているこの厳しい世界で、彼女に準備させるのに十分な努力をしただろうかと自分を疑っているんだ。
Q: あなた方は日本のファンの為に、2022年のNestorfestから”On The Run”と”Stone Cold Eyes”のライヴ音源を日本盤ボーナスとして提供してくれました。この時のライヴを振り返って感じたことを教えて下さい。
T: そのライヴ音源は、俺たちが NestorFest を行った最初の年に、俺たちの故郷であるファルシェーピングで録音されたもの。だからとても特別なんだ。そのライヴはソールド・アウトしたんだけど、”Stone Cold Eyes”の中間部分で「ファルシェーピング!俺たちはまだ貴方たちの息子だろうか?」と叫んだことを覚えている。俺たちが受け取った答えは圧倒的だった!よっしゃー!!となったよ。
Q: クレジットを見ると本作にはかなり多くの人達がこのアルバムの作成に関わっていることが判りますが、そのゲスト参加している人たち何人かについての質問です。
フレイヤ・ミラー:”The Law Of Jante”で彼女が出演していますが、彼女を選んだ理由は?彼女は女優として有名ですが、あなたは昔から彼女もしくは彼女の作品のファンですか?
T: フレイヤは素晴らしい女優で、俺は数年間一緒に仕事をしてきたけど、ナレーション付きのイントロが必要だとわかったとき、即決断したね。
フレドリック・トーマンダー:何曲かで彼の名前がクレジットされています。どういうきっかけで彼を採用しましたか?
T: 俺はフレドリックのことを少なくとも 20 年前から知っているけど、彼は素晴らしいソングライターであり作詞家でもある (SCORPIONS / N’SYNC / AGNETHA FÄLTSKOG などね)。俺と俺たちのジャンルを知っている人が必要だと思ったんだ。フレドリックは、Palma Recordings の共同創設者兼 CEO でもあり、俺たちはファースト・ アルバムの曲を共作したんだ (ただ、そこで書かれた曲は残念ながらアルバムには収録されなかった)
アンダーズ・ヴィックストロム:一曲彼がクレジットされていますが、彼はTREATのアンダースでしょうか?もしそうなら、彼とは昔から付き合いがあったんでしょうか?
T: フレドリックを知っていたのと同じくらい前から、俺はアンダースのことを知っているよ(フレドリックとアンダースは以前チームを組んでいたからね)彼もフレドリックと同様に素晴らしいソングライターさ。
Q: もしあなたのようなミュージシャン・作曲家になりたいと思う若手ミュージシャンがいたとしたら、あなたはどのようなアドバイスを送りますか? ミュージシャンを続けるうえであなたが最も大事にしていることを教えて下さい。
T: 俺が彼または彼女にできる最善のアドバイスは、自分自身を信じ続け、一貫性を保つこと。自分がやっていることを正しい方法でやり続ければ、必ず勝利するはずさ。
Q: ここ数年でNESTORの認知度はかなり世界に広がったと思いますが、中にはあなた方の昔の曲、つまり90年代にリリースした2枚のEPを聞きたいと思うファンもいると思います。今後それらを正式にリリースする考えはありますか? もしくはそれらの曲をリレコーディングしてリリースする考えはありますか?
T: それに対する答えは「ノー」だ。 でもこうやって話題にしてくれるのはとてもうれしいよ。
Q: アルバムをリリースした後のバンドの予定を教えて下さい。
T: 今後の計画はツアーに出るんだけど、できればいつか日本に行きたいね。
ありがとうございました。
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