見出し画像

Jien Takahashi × Kelly SIMONZ MAJUSTICE 1st アルバム「Ancestral Recall」発売決定記念 12,000字超え対談インタビュー(前編)

(前編)

Interviewer : YG (MARQUEE AVALON A&R MAJUSTICE担当 矢作 亮磨)

Interview place : SURAJI

取材場所となったエスニック・レストラン SURAJI外観

YG : 今回はJienとKellyさんの対談ということで、まずはバンドのバイオグラフィーを教えてもらえますか?

Jien Takahashi(以下J): 2020年の1月くらいにMAJUSTICEの母体となるライヴ・ツアーの企画があって、その時期はまだコロナウィルスが問題化していなかったんですが、徐々にコロナが蔓延してきて企画実現が難しくなってしまったんですね。その時点でユーリ・サンソンやKellyさんなどのメンバーは揃っていたし、 「せっかく素晴らしいメンバーがいるのに何もやらないのは勿体ないから作品を作ってみたら?」 と進言を頂いて、ライヴ用のメンバーがバンドになったというのがざっくりとした流れですね。 

Kelly SIMONZ(以下K) : 思い出しました。最初はライヴでしたね。海外から呼んだメンバーと国内のメンバーで演奏するバンドで、そこに僕やKelly SIMONZ's BLIND FAITHのメンバーも参加して大きめの会場でやれないか?という相談がキッカケでしたね。それが2020年の2月から…

J : コロナが物凄い勢いで蔓延してしまって、終わりも見えない暗い世の中にもかかわらず、こんなメンバーが一同に会する事は素晴らしいし、作品を作る方向にスイッチしてバンド化しましたね。

YG : そうしてスーパー・スターが結集したわけですね。少し遡る話になりますが、お二人の出会いについて聞かせてください。

K : 僕は長い間音楽学校の講師を務めていて、その後に音楽の教本を何冊か出して全国的にファンが増えてきて「これはまた本格的に音楽活動をするべきだな」と考えて、2011年に再度上京したんですね。
そして音楽学校時代の教え子でもあるKazとYosukeを迎えてKelly SIMONZ's BLIND FAITHとして活動する傍らギター・レッスンも行なっていたんです。そこへJienがやってきまして…。彼が中学生くらいのときかな、1,2回なんですけど色々話をしていて中々大人びた子供だな…と。Jienは今23歳?

J : 24歳になりました。

K : じゃあ丁度10年前になりますね。そのときにJienが僕のところにやってきて。大人っぽかったけど、かわいいもんでしたよ。(笑) でも、それから長い間疎遠になってたんだよね。

YG : そうだったんですか?意外に感じます。

K : それこそ久しぶりに会ったのは2019年に、僕がトリロジー復刻アニバーサリー・ジャパン・ツアーに参加して、マーク・ボールズとライヴをしたときに4,5年以上ぶりに再会したんだよね。

J : そうです。その後に“Temple of the Divided World”や“Now Your Turn”といった楽曲で、ドラムを担当している田中康太郎君という、Kellyさんと昔から接点のあるミュージシャンが僕のバンドに加入したきっかけで、僕とKellyさんとの接点も復活し始めて…。

K : 康太郎君も僕が関係した音楽学校の卒業生で、彼が上京したときにバンドに紹介したりもしたんだけど図らずも、Jienも彼に目をつけていたんだよね。

YG : お二人の関係性は10年以上にもなる深い関係なのですね。それではJienが、最初にKellyさんの音楽を聴いたときの印象はどのようなものでしたか?

J : Kellyさんのレッスンを受けに行く前に、楽器系のイベントでKellyさんのライヴ演奏を観る機会があって、そのときに “Fly Away”という楽曲をギター・ボーカルで演奏されていたんですね。サビの部分でスウィープ・ピッキングをしながら歌うセクションがあって、その直前にLOUD PARK2013でイングヴェイ・マルムスティーンのライヴを観ていたので、当時中学生の僕は「なんだ!この人はイングヴェイより超絶じゃないか!」 と感じて、この人から何かを得たいという一心でKellyさんのレッスンへ伺う事にしたんです。中学生には刺激の強すぎる体験でしたね…。(笑) 今でもいないじゃないですか、Kellyさんほどクオリティの高い楽曲を作ってあれだけのスキルでライヴも素晴らしい…なんならライヴの方が凄いし。

YG : 僕もそれは同じく思いました (笑)

K : いつもやりすぎて問題になるという…。(笑)

YG : でも若い世代からするとKellyさんの"やりすぎ感"が凄く魅力的に映ると思います。

K : LOUDNESSとかイングヴェイとかヘヴィ・メタルがスタンダードだった時代には、僕のようにギター・ヒーローを志した人はいっぱいいたと思うんです。しかし、壁の高さに打ちのめされて挫折した人が沢山いたのもまた事実で。
僕は高崎晃さんやイングヴェイが目指した"アメリカ"にまずは挑戦して、現実を見た上で帰国して、アメリカにいるスタンスのまんま日本でやっていったので、それがやりすぎに見えてしまったのかもしれませんね。
しかしJienのような若い世代は、もっと純粋な視点で僕の音楽を評価してくれたから手ごたえを感じられたし、若者からの支持は僕が40代から再スタートを切る原動力にはなりましたね。

YG : このようなお話しを聞けて光栄に思います。そうしたら今度はKellyさんがJienの楽曲やギターを最初に聴いたときの印象を教えて頂けますか?

K : Jienは僕のレッスンに来たときも話をしただけなんですよ。自分のギターを僕に聴かせなかったんですよ 。(笑)

YG : ええ!そうなんですか 。(笑)

K : ギタリストには2パターンあるんですよ。頼んでもないのにやたら弾きまくって見せつけてくる奴か、全然弾かない子。Jienは完全に後者だったので、僕はJienの演奏をほとんど聴いたことがなかったんですよね。でも、その頃のJienが関わっていたギタリストは僕がよく知る人だったり、頭ひとつ抜けた存在になっているミュージシャンが彼の周りに多かったし、彼らから話も聞いていたので不安はなかったですね。
MAJUSTICEが始まった当所はティモ・トルキの楽曲がメインになっていて、僕もティモの音楽性は知っていたのですが、Jienの書く曲っていうのは僕には無い、アニメや同人文化などを取り入れた独自の世界観があったし、僕も曲を作ったのでティモとJienと僕という毛色の違う3人のソングライターが揃うのは、むしろ面白いなと思いましたね。ギターに関しても想像してたよりも真面目に弾くし、かなり上手かったですね。(笑)
とにかくJienは、圧倒的に若いし彼の世代の中でも圧倒的に突き抜けているので、それを僕は返り討ちにしてやろうと…。 (笑)

YG : (笑) でも実際にKellyさんとJienのツイン・ギターは、作品を通して余す事なく披露されてるし、作品をとても面白くしていると感じます。

K : 僕らの間には独特なケミストリーがありますよね。Jienは完全に7弦主体だし、僕もJienの曲を聴いているとかなり感化される部分があるし、次の自分の作品では7弦を取り入れようかなと思っています。7弦ギターを用いた彼のアプローチにはかなり影響されましたね。そういう意味でも僕は、今回MAJUSTICEに参加出来てかなりラッキーだったと思います。

YG : それでは次の話に移ろうと思います。1stシングルとしてリリースされた“Temple of the Divided World”はスピード感あふれるナンバーですが、これを最初のシングルにした理由やエピソードを聞かせて頂けますか?

J : 最初MAJUSTICEがアルバムを作るときは8曲入りの予定だったんですよ。その後にバンドのマネージャーからもう2曲増やして欲しいと要請を受けて急遽作った曲なんですよね。かなり焦って取り組んで楽曲自体は完成したんですが、歌詞とかアレンジなどが煮詰まらなくて発展途上な状態で、ドラム・レコーディングなどを進行していったんです。
それが自分の身の回りに様々な出来事が起きる過程で、僕が歌詞や楽曲のコンセプトを思いついたりしていったある日に、縁がありラルフ・シーパースと知り合って彼が楽曲のコンセプトに賛同してくれて参加を決めてくれたんです。ラルフの参加が決まった事によって全体の士気が高まって、信じられないほどのパワーを持つ楽曲へと進化していったんですね。
メジャー・キーでのKellyさんのギター・ソロから始まる曲っていうのもありそうでなかったし、トルキの曲を最初のシングルとして切ろうかという流れがあったものを断ち切ってでも、異彩とパワーを兼ね備えたこの楽曲を発表するべきだろうと。

YG : 僕も最初に“Temple of the Divided World”を聴いたときの印象として、ベースにあるのはパワー・メタルなんですが、X JAPANの影響を感じるリフや刻みと、それとまた異なるイングヴェイなどの影響下にあるギター・ヒーロー的な速弾きが耳を惹きましたね。
逆にKellyさんはこの曲に対してはどういう印象をお持ちでしょうか?

Kelly : とにかくこの曲最初はなかったんですよ。(笑) かなり後半に出来てきて… 実は僕はこの曲のリズム・ギターは弾いてないんだよね。あの曲は7弦だよね?

J : 7弦目だけ1音半下げた半音下げチューニングの7弦ですね。

K : この曲のバッキングには、僕のサウンドやスタイルは合わないかな…と考えてJienにリズム・ギターは任せました。僕はリード・ギターに全力を注ごうと思って、レコーディングが完了していたラルフのシャウトに絡むようなギター・ソロをイントロから入れてみたんです。イントロは凄く独特なコード進行だったし、弾き倒したら面白いんじゃないかと思ってね。
こういう物凄い展開していく曲って考えすぎるとワザとらしくなるし、勢いで作り上げたんだろうなって感じはしましたね。凄く抑揚があって練られたようなイメージだったし…特に中間のセクションに関してですが、僕はまさかあそこにユーリが歌を入れるとは思ってなくて。(笑) 邪魔になるかな…とも思ったんですが、結果的にユーリの歌ともよく絡み合っているし革新的な泣きのアプローチが出来たんじゃないかと思っています。
後はやっぱりヴィタリ・クープリのピアノと7弦のドラマティックなセクションは、一聴するとX JAPANらしくもあるけど、毒々しいし、かなり新しいよね。

YG : 僕もあの曲を聴いてパンっと衝撃を受けました。凄く面白い曲だと思います。
続いては私も個人的に好きな“Give it Up”というKellyさん作曲の新曲がありますが、この曲を収録した経緯を教えて頂けませんか?

K : 最初はヴィタリもいるし、ツイン・ギターでネオクラシカルなインストゥルメンタルを作ろうかと思っていたんです。でも考えてみたら素晴らしいヴォーカリストもいるし、歌物を作ろうかと思い始めて…。だから今回インストゥルメンタルは入れてないよね?

J : そうですね、最初はOpus #1的なインストゥルメンタルを作ろうみたいな動きがありました。

YG : 私もARTENSION的なネオクラシカル・メタルの曲が来るのか?!と思っていたら無かったのが逆に新鮮に感じましたね。

K : それをやってしまうと僕のソロ活動との棲み分けが難しくなるなと感じたんですよね。僕自身、ルーツにはコーラスがはっきりした80年代的なポップソングがあるし、それは逆にJienは書かないだろうなと。Jienの曲はかなり速いX JAPAN以降のメタルだから、僕はメジャー・キーで、尚且つミッドテンポの曲を作ろうと決めて書き上げました。他の曲とは明らかに異彩を放っているし、関係者間でも凄く評判が良いんですよね。

YG : コントラストが違うと感じました。凄く煌びやかな楽曲ですよね。

K : まさに狙い通りにはなったなと思っています。TNTやSTRYPERのような、日本人好みなアレンジに凝ったメロウな洋楽テイストのメロディック・ハード・ロックですね。

YG : MARQUEE AVALON作品のリスナーの方々にとっても“Give it Up”は一つのハイライトになっているんじゃないかと思います! それでは今振り返って、MAJUSTICEと「Ancestral Recall」というアルバムに関してお二人はどう思われていますか?

J : まず言えることが今後この参加メンバーが1人も欠けずに揃う可能性は本当に低いし、この面子が揃ってることが奇跡に近い。それでいてKellyさんのファンが聴いても、ラルフのファンが聴いても、共感出来る間口の広い完成度の高いヘヴィ・メタルのアルバムが完成したな、と。このジャンルに於けるバイブルになるであろう作品を生み出せた、という確かな手答えがあります。

K : 僕もJienとは二回りも違うし、マイク・ヴェセーラは三回りくらいJienとは歳が離れている中で、これだけの面子が期待を持って参加した理由は、彼の持つ若者のパワーやエネルギーに惹かれた部分があると思うんですよね。僕も経験や実績から得たエネルギーはあるんですけど、自分が23,4歳の頃に持っていたエネルギーと、今のJienのエネルギー感は全く違うものがあるし、他のメンバーもそこに期待してるんじゃないかと感じています。
僕を含めてメンバー皆それぞれのバンドで成功してきている人達は、このバンドでセカンド・キャリアというか、もう一度爆発しようという、Jienを通して若き日の追体験をしようとしてるんじゃないかと…。僕も凄く楽しみにしているんですよね。
僕は日本で活躍したいわけではなくて、あくまでWACKEN OPEN AIRのような海外のビッグ・フェスに出て行きたいんですね。MAJUSTICEならその目標を実現出来るんじゃないかと強く思っています。

2023年開催予定 ''Wacken Open Air'' ラインナップ一覧

後編はこちら





いいなと思ったら応援しよう!