FACTFULNESS
今回紹介するのは、
言わずと知れた名著である「FACTFULNESS」です!
書店でも目にすることが多く、読んでみたかったのですが、本の厚み故に手を出しておりませんでした。
実際は、本というよりも資料に近い感覚で読むことができ、そこまでカロリーを使わない内容になっております。
統計に基づく正確なデータをもとに、世界の実情を教えてくれるわけですが、何よりも重要なのは「10の思い込み」を防ぐ方法です。
世界は常に変化しており、FACTFULNESSが出版されたのはコロナが流行する前の2019年ですから、数字は変わっているでしょう。
私たちには何万何千年かけて生き延びるために培われた本能があります。
お腹がすくと、食べたいと感じたり、疲れていたら眠くなるということです。
そして、本能を利用したビジネスは多いと思います。
回転ずしチェーン店に行きたいと思うようになるのは、お寿司がおいしいという理由もありますが、シャリに多くの砂糖が使用されているからだという説を聞いたことがあります。
糖分は活動に必要なものです。いまでこそ、簡単に糖分をとることができるようになったものの、つい数百年前までは糖は貴重なものでした。
そのため、脳は糖分を摂取できる食べ物を本能的に求めてしまうわけです。
似たように、メディアも私たちの本能を利用しているようです。
テレビや新聞、ネットで氾濫している情報に対して、私たちの本能は正しくとらえることはできていません。
そして、本書はそのような認知の歪みを正してくれる教科書だと感じました。
今回は、紹介されている10の思い込みについて紹介します!ほとんど私のメモに近いです!
それではいってみましょう!
1.分断本能
本書で取り上げられているのは、「先進国」と「途上国」の区別です。もはやこの分け方は通用しないと述べられています。
世界中の国の女性一人当たりのこどもの数と、こどもの5歳までの生存率をチャートに表したデータでは、1965年の段階では確かに大きく二つに分かれるように分布しています。
しかし、1995年には、その差はなくなり、途上国とされていた国の多くは先進国と同じ水準になっていました。
それから約25年の月日が経っているので最新の情報ではないものの、2つのデータからは先進国と途上国の区別は昔の話だということです。
もちろん、先進国の中でも日本のような公共インフラの整っている環境で生活している人口は世界の1/7だと言われており、特別裕福な国もあれば、その逆に、いまだに一日1ドル以下で生活している極度の貧困の国も存在していることも事実で、私たちはこれらの国々に「先進国」「途上国」という冠をかぶせているようですが、私たちの頭にはない中間の国が大きく発展しています。
つまり、全体としてはよくなっているものの、先進国や途上国といった二項対立に意識が向けられ、事態を悲観的に捉えてしまうのです。
平均や極端な数字には見えてないデータが存在することを忘れてはいけません。
世界中で貧富の格差が大きいことが問題視されることが多々ありますが、確かに貧富の差はあるものの、その差は縮まっており、よくなっているというのです。
「悪い」状態と「良くなっている」状態は共存することが可能ですが、メディアで取り上げられるのは前者のみなので、つい悪いイメージをもってしまうのかもしれませんが。
2.ネガティブ本能
上記でもお話した通りです。
必ずしも「世界は悪くなっている」なんてことはないようです。
地球温暖化、生態系の破壊、核兵器の脅威、パンデミック…普段耳にするのが悪いニュースばかりかもしれませんが、このような恐怖が私にはありました。
いつか核戦争が起こって、地球上の環境が破壊され、火星に移住する日が来るのだろうか…。などと考えることもしばしばあります(笑)。
しかし、それ以上に進化していることも多いですし、私たちの生活は豊かになる一方です。
「昔はよかった」などと記憶を美化するのも人間の本能です。
筆者の経験談で面白いものがありました。
毎日何キロもの山道を往復して水を汲み、着る服も十分にない生活をしていたある村が20年で、決して豊かではないものの、家にはテレビが設置されるまで発展しました。
ある時、筆者が村人に20年前の極貧の生活の写真を見せたところ、
「私たちの村がこんなに貧しかったわけがない!」と、不思議なことに誰も信じてくれなかったようです。
それほど、過去の記憶というのは曖昧なものです。
一年前の悩みを私たちのほとんどは思い出せないと思いますが、嬉しいことは覚えているはずです。
周りにも「あの頃は~~。」と愚痴をこぼす人がいるかもしれませんが、それは記憶の一部分を切り取っているだけです。
もちろん、今の方がすべてよくなっているわけではないかもしれませんが、よい方向にむかっていることは確かなようです。
3.直線本能
世界の人口は増え続けているのは間違いないですし、2050年には総人口が100億を超えるとも言われています。
しかし、西暦に比例して人口が増え続けることはありません。
こどもの数は現在20億人と言われており、これは2050年も同じだと予想されています。
平均寿命が延びることで大人の数が増え、それが人口増加につながっているのです。
少子高齢化も進行しているわけではありますが、ずっと続くわけではないでしょう。
私たちは現在の状況を過去や未来に当てはめて考えがちですが、データが正しい知識を与えてくれます。
4.恐怖本能
私たちは恐怖に対して敏感です。
そして、恐怖の対象は大昔から変わっていません。
つまり、現代において恐怖と感じなくていいものですら、恐怖と受け取ってしまいます。
そして、筆者は恐怖と危険を区別することを勧めます。
危険なことには確かなリスクが存在しますが、恐怖の対象にはリスクがあるように見えるだけだというのです。
全死亡者数の0.1%を占める自然災害、0.001%を占める飛行機事故、0.7%を占める放射線被ばく、0.05%を占めるテロなど、年間の0.1%にも満たないリスクに私たちはおびえています。
人びとは恐怖に敏感で、恐怖を感じると判断力が鈍ります。メディアはこの恐怖本能をうまく利用しているのです。
リスクを正しく計算し、恐怖ではなく、危険を察知する力が必要なようです。
5.過大視本能
衝撃だったのは、世界の所得ごとの人口分布割合の推移についてです。
2017年時点で、私たちと同じような生活水準の国の60%が西洋諸国なのですが、2040年には40%まで減少すると言われています。
これは西洋諸国が衰退するわけではなく、アジアやアフリカ大陸の人口が増加することが予測されているからです。(国連は今世紀末の人口について、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸ではほとんど人口が変わらないが、アフリカ大陸では30億人、アジア大陸では10億人ほど人口が増えると予測しているのです。)
ここからわかることは、世界の市場の中心は西洋からアジア(やアフリカ)へ変化するということです。
2017年度の数字しか見ていなかった場合とは全く異なる見方ができると思います。
過大視本能を抑えるには、他の数字との比較が必要です。
6.パターン化本能
小さいときに、当時はやっていたポケモンをプレイしたく、親にゲームをねだったことがあります。
私「みんなポケモンやってるからぼくもやりたい!」
母「みんなって誰よ?言ってみな。」
そのときの私は5人程度しか名前をあげられませんでした。クラスには40人ほどの生徒がいたのにも関わらずです。
結局、母親を説得することはできず、ゲームを手に入れたのはポケモンのブームが過ぎた頃でした(笑)。
このときの私には5人の友達がみんなにも当てはまると思い込んでいたようです。
パターン化本能は私たちが集団で暮らす社会的な生き物だからこそ培われたものでしょう。
私が考えることはあの人にも通ずるだろうと考えて行動します。この社会で通用することはあの社会でも通用するだろうと考えがちなのはこの本能があるからです。
日常生活にパターン化は欠かせませんが、一つのパターンに全て当てはめることは危険です。
重要なのは、パターンを分類し、正しいパターンを認識することです。(パターンは文化や常識とも近い使われ方をしていますが、筆者はそもそも文化や常識よりも所得ごとの暮らしを基準に考えています。)
しかし、自分が持っているパターン以外を認識することは難しいと思います。
アフリカに行ったことがない人がアフリカで通用するパターンを置き換えることはできないでしょう。
実際に現地のパターンに触れる以外に認識する術はありません。(筆者は世界中を飛び回り、多様なパターンを経験していますが、多くの人には不可能でしょう(笑)。)
だからといって全てのパターンに触れる機会を作れるわけではないと思いますので、みんな違うパターンを持っていることを忘れずに前提を疑う視点を身につけたいものです。
7.宿命本能
日本に生まれた私はずっと平和だと、どこかで勘違いしていました。
逆にアフリカに住んでいる人はずっと貧しいのだと。
しかし、それは宿命本能による間違った考えでした。
アフリカは大きな発展を遂げており、新たな投資先として注目されていると言います。
しかし、アフリカが発展することなんてないという宿命本能により目を向けない人が多いようです。
変化の激しい現代においては特に、日々の変化に目を向け、常に知識をアップロードすることが求めらています。
8.単純化本能
わかりやすいものの方が理解しやすいですし、信じやすいです。
特に、不安を感じていることに対しては、安心を求めてわかりやすいものに飛びつきやすいと思います。
世の中のさまざまな問題に、ひとつの原因とひとつの解答を当てはめてしまう傾向を筆者は単純化本能と呼んでいます。
本書では「こどもにトンカチを持たせると、なんでもくぎに見える」ということわざを紹介しています。
専門知識を持っていたら、それを使いたくなるのは当たり前ですが、それを専門分野以外にも使おうと考えてしまいがちなのです。
一つのトンカチではなく、さまざまな工具を備えた人間になりたいものです。
また、物事には表裏があることを忘れてはいけません。
筆者がキューバで、健康と富のバブルチャートを使ってグローバルな視点から見たキューバの健康という題目の講演を行った際の話です。
キューバは、所得はアメリカの1/4なのに、子供の生存率はアメリカと同じくらい高いことを紹介すると、キューバの厚生大臣が壇上にでて次のようにまとめ上げました。
「キューバ人は貧乏人の中でいちばん健康だ!」
講演は大きな拍手で締め括られましたが、講演後にある若者が筆者にこう伝えました。
「キューバ人は健康な人たちの中でいちばん貧乏なだけです。」
確かに!!!!厚生大臣の言葉にうまく丸め込まれてしまうところでした...。
聞こえのいい(都合のいい)言葉に懐疑的になることは難しいです。
しかし、複雑で重要なもなことほど、単純な見方に注意したいと思います。
9.犯人捜し本能
ミスがあったら、私たちは何かと理由を探すでしょう。
もちろん、それは再びミスが起きないようにするために大切なことではありますが、時にミスの責任を誰かに押し付けてしまうこともあると思います。
誰かのせいにすることは楽なことです。
もし自分でも同じミスをしていたら、と考えることは、私たちにとってストレスになるでしょうから、この犯人捜し本能が働くのです。
しかし、それはその人だから起きたミスだったのでしょうか?他の人だったら同じようなことが起きなかったのでしょうか?
筆者が紹介するファクトフルネスは、犯人ではなく、原因を探すことです。これは悪いことだけではありません。素晴らしい功績を挙げた人がいたとして、功績を上げることができた原因を追究することが大切だと言います。
いつまでも誰かのせいにしていては、自分も同じ過ちをしてしまうでしょうし、進歩もしないでしょう。
10.焦り本能
焦っているときも私たちの判断力は鈍ります。
私は古着を見て回るのが好きなのですが、店員さんとお話していて、「この服はなかなか入荷されない珍しい品だよ。人気のタイプだし。」と言われたら、つい衝動買いをしてしまうことがあります。
家に帰って戦利品を眺めていると、ふと我に返ったように、「店員さんに勧められなければ買うことはなかっただろう。」と思うこともしばしばです。
ただ、買ったことが後悔につながることはないので、特に不利益を被ったと感じないのですが、まさに焦り本能が刺激されている例だなと感じました。
世の中には、「今しかない」「今のタイミングが一番いい」と誘惑してくるものがあると思います。
しかし、未来がどうなるかについては誰も確かな予想はできません。実は少し待った方がいい結果になることも考えられます。
本当に今決断しなければいけないのかを客観的に捉える術を身につけたいものです。
まとめ
少々長くなってしまいましたが、以上になります!
10の本能については、私たちが太古の昔から培ってきた生き延びるための生存本能でした。
しかし、この100年で社会が劇的に変わり、人々の生活が豊かになる中で
、生存本能の必要性は下がるどころか、もはや私たちの思考を邪魔するものになっています。
だからといって生存本能を取り除くことはできないので、生存本能を認識し、うまく付き合っていくことが重要です。
ただ、常に「正しさ」を求め続けるのもストレスになりますよね…。
データに基づいて比較分析をすることはもちろん大切ですが、思い切って前に進むことも大切にしたいと思います!
長々と失礼しました!ではまた!
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