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「人生の意味」について考える

2022年の世界幸福度ランキングの上位5か国は、フィンランド、デンマーク、アイスランド、スイス、オランダで、これは前年度と順位は変わっているものの、北欧やヨーロッパの幸福度が高いことを示しています。

特にフィンランドは「世界一幸福な国」としても有名です。

しかし、驚くべきことに、「国民が幸福と感じているかどうか」だけでランキングを見ると、フィンランドは一位ではありません。

それどころか、フィンランドではうつ病に悩む国民がEUの平均以上存在すると言われていて、青年の死亡原因の1/3は自殺らしいのです。日本の10代の死亡原因における自殺が占める割合は2割ちょいですから、フィンランドでは深刻な問題のようです。

少し脱線しましたが、世界一幸福だと言われている国でうつが問題になっているのはいささか違和感を感じます。

これには「幸福」の定義の違いが関係しています。

調査で用いる「幸福」度は、「あなたは幸福ですか?」という質問の回答結果の平均だけでなく、GDPや社会保障、健康寿命や国への信頼度など、判断基準は多岐にわたります。

ランキング上での幸福度というのは、「その人が幸福と感じているか」ではなく、「客観的に見て、生活するのに困らない条件がそろっているか」だということです。

では、国民の多くが幸福だと感じている国はどこかというと、パラグアイ、グアテマラ、コスタリカなどの中南米の地域だと言います。

彼らは決して経済的に豊かだとは言えないのにも関わらず、幸福だと感じているのです。これについて少し掘り下げてみます。

お待たせしました!

今回紹介する本は、
「世界一しあわせなフィンランド人は幸福を追い求めない」です!

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そもそも「幸福」って何かと言われれば難しいですよね。個人の感情でしかないために、この状態が幸福だ!という普遍的な定義はありません。

しかも、「幸福」には「慣れ」がありますし、追求しだしたらキリがないものです。

大豪邸に住んだとしても、最初は新鮮な日々に幸福を感じるかもしれませんが、数か月後にはその生活が当たり前になって気がつけば幸福度は下がって元の状態に戻るでしょう。

本の題名にもある「幸せを追い求めない」とはそういうことです。個人的な解釈になりますが、幸せは追い求めるものではありません。あとから勝手についてくるものです。

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本書では、「幸福になること」ではなく「人生に意味を知る」ことに価値があると言います。

人生の意味を感じながら生きることで、生活への満足度は上がり、結果的に幸福になるというのです。

注意すべきなのは、筆者によれば「人生の意味」とは普遍的なものは存在せず、個人的なものでしかないと言います。

そもそも、幸福を追いかけることもそうですが、人生に意味があるはずだという考え方は、近代になり、封建的な社会が崩れ、神の存在がいなくなったときにロマン主義から端を発した歴史上で見るとここ最近生まれた考え方です。

私たち人間は「内省」する能力を持ち合わせているので、自身の言動に意味を求めてしまうのですが、近代全の社会では、所属している集団や神がその意味を与えてくれました。

しかし、近代にはいると、個が強調されるようになり、人生の意味を与えてくれる存在がいなくなってしまい、自分で見つけなければいけなくなってしまったのです。

経済的に裕福だとは判断することのできない国々で幸福度が高いのは、未だに近代以前のような地域コミュニティでの生活が維持されていることが関係していそうです。

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人生に意味を見出すには、「他者とつながること」「自分自身とつながること」が重要だと述べられています。

「他者とつながること」とは、他者と緊密な関係を築き、その人にいい貢献をすることで、

「自分自身とつながること」とは、自分らしく生き、能力を高め、日常生活で生かすことによって自己実現を果たすことです。

筆者にとっての人生の意味とは、「自分にとって意味のあることをし、同時に自分を他人にとって意味ある存在にすること」だと言います。

具体的にどうすればいいかはひとそれぞれになります。ただ、現代は「自分自身とつながること」ばかりが強調されがちな気がしますが、「他者とつながること」とバランスをとることが重要な気がしました。

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おわりに

はじめはフィンランド人の特性を紹介するものかと思って読み進めていましたが、箱を開けてみれば、もっと根源的な問いを考えさせられる本でした。

特に、「他者とつながること」に関して説得力がありました。

誰かと認め合って生活するというのは人間本来の営みであって、現代ではそれがSNSによって過剰に刺激され、みずしらずの誰かが認めてくれることに快感を覚えている人も多いと思います。

しかし、その快楽はいっときのはかないもので、やはり、SNSに依存しない確固たる人間関係を築いておくことって大切だなと思いました。

身の回りの家族、友人、パートナーとの関係性を改めて考えさせられる一冊でした!

ではまた!


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