嫁のため、僕は海に出る。
嫁のぎっくり腰は順調に回復の兆しを見せている。
立ったり座ったりする際、ほとんど子鹿状態だったのが、今ではそれなりに人間らしくなった。
僕がつけさせていたコルセットも、自分の匙加減でつけられるようになった。
これでお腹を、ぎゅん!としなくても済む。
なのに違う障害の数々が彼女を襲いはじめた。
コルセットをつけていた場所がかゆくなり、かいていたら目も当てられない悲惨な状況に。
新しい地図がそこには描かれていた。
この地図やけに赤い。
それと以前湿布を貼った左側の尻が痛いらしく、そこを庇って生活していたら、お次は右足が痛くなってきたらしい。
歩くのが向いていないのかもしれない。
更にはここ最近の動けない自粛生活がたたり、肌はボロボロ、身体は豊満さを増すばかり。
誰か嫁をもう許してあげてほしい。
そんな嫁を見ていると居た堪れなくなってしまう。
どうにか僕がその苦しみの半分でも変わることができないだろうか。
そこでハッとあることが頭をよぎった。
ワンピース(漫画)に出てくるバジルホーキンスというキャラがいる。
彼はワラワラの実を食べ、自分に襲いかかるダメージをどこかの誰かに分散するという能力をもっている。
なんだ、その能力は、最強ではないか。
なのになんでローに負けたの?
…これだ。
この実を嫁が食べれば痛みを分散できるではないか。
なんという名案。
僕はいそいそと航海の準備をはじめる。
何が必要だろうか。長旅になるだろうから食料と航海技術の勉強が必要かもしれない。あ、そもそも船。事情をはなして自治体にかけあってみるか。それともクラウドファンディングに頼ろうか。そういえば仲間も必要かもしれない。ルフィが言っていた。音楽家は絶対に必要だと。よしいける。大変だろうけれど夢のために頑張らなければ。グランドラインへ向けて、今僕の旅が始まろうとしている。
というところで我にかえり仕事へ出かけた。
嫁には強く生きてほしいと思う。