何もしていないトムヤムクン。
好きなものがある。
カップヌードルのトムヤムクン味である。
何を隠そう、僕はトムヤムクンが好きで好きで、好きという気持ちだけで夢が叶うのならば総理大臣になっていてもおかしくない。
そうなれば主食を米からレモングラスに変える計画を立てている。
あの独特な酸っぱさと辛さは僕の舌を唸らせ、喉を天界に運び、胃を昇天させる。
幸せとはこういうことなのだ、と君が好きだと叫びたいぐらい叫びたい。
が、いかんせん評判があまり良くない。
僕の周りで食べてる人を見かけないし、周りに薦てみても、一生に一度見るか見ないかのしかめ面をされてしまう。
なぜこんな村八分的な扱いを受けなくてはいけないのだ。
トムヤムクンが何をしたというのか。
僕の記憶が正しければ、トムヤムクンはテロを起こしてもいないし、犯罪行為に手を染めたわけでもないし、闇営業に勤しんでいたわけでもない。
ただ真っ当にトムヤムクンとしての務めを果たしているたけだ。
…でも待てよ。
こいつ、もはやレギュラー商品として毎回のようにコンビニに居座っているではないか。
ひょっとして僕の周りが嫌いなだけで、大人気商品なのでは…?
そうだ、きっとそうだ。
まだ見ぬ同胞たちは必ずいるのだ。
同胞たちのためにも、僕は今日もトムヤムクン味を食べ続ける。
例え臭いがきつい、と言われようとも。
変な味がする、と言われようとも。
共に頑張ろうではないか。
トムヤムクン味がBIGになるその日まで。