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ベルリン学校事情-3 中学と高校
ベルリンでは、5年生または7年生から中高一貫校に進学しますが、進学先は、大きく分けて3種類あります。(州により異なります)
入試の方法などが変更になることがあります。記事内に書いた情報を参考にされる際は、必ず一次情報を調べてください。
ギムナジウム
5年生または7年生から12年生まで、大学入学資格試験(アビトゥア)合格を目指すための学校。朝8時から、早い日は13時半ごろ終わります。
勉強が得意な子供のための学校なので、できる子供に合わせて授業が進められます。将来は医者や研究者になりたい、勉強が大好き、得意という子供には最適の学校だと思いますが、日本の感覚でなんとなくみんな行くものだから、という理由で大学を目指す子供には大変な学校かと思います。要求されるレベルが高いので、特にドイツ語を母国語としない子供の場合、夜中までかかって宿題やテスト勉強をすることになるかもしれません。
最初の一年間は、トライアル期間で、この時期にギムナジウムのレベルに合ってないと思われる子供は、統合中学校へ転校することになります。
成績のつけ方が厳しいギムナジウムが多く、小学校の成績から1〜2段階落ちる子も珍しくありません。
トライアル期間終了後も、授業のレベルについていけない場合は、親呼び出し→警告の手紙→転校勧告、退学になります。ほとんどの学校で、できない子供に対するヘルプはないので、授業について行けない場合は、親が教えるか、家庭教師を頼むことになります。
特に理系では、大学入学資格試験で、ほぼ満点を取ることを目指す子供も多く在籍するので、勉強のストレスは高く、ストレスでメンタルの調子を崩す子やドラッグに手を出す子供の話も聞きます。
文系ギムナジウムでは、ドイツ語、英語に加え、第2外国語、第3外国語を勉強します。
ギムナジウムコース付き統合中学校
7年生から13年生までの全日制統合中等学校。朝8時から16時頃まで授業やクラブ活動などのカリキュラムがあります。
11年生から、大学入学資格試験を目指すためのギムナジウムコースと、目指さないコースに分かれます。このカテゴリーの学校にはインターナショナルバカロレアプログラムを実施している公立インター(Europa-Schule)なども含まれるので、学校によっては非常に人気があり、ギムナジウムよりも競争率が高い学校も多数あります。
一般的には、ギムナジウムよりも成績のつけ方が緩め、13年までとギムナジウムよりも一年多いので、ギムナジウムコースに行った場合、アビトゥア高得点取得のためにはこちらの方が楽だといわれています。(ただし、大学に入ってからついていけるかどうかは別の話です)
7年生入学後から、第二外国語または他の教科を選択しますが、第二外国語を取らないと、アビトゥア受験資格を得られません。学校によっては、第二外国語のクラスの定員が少なく、希望する生徒全員が選択できない場合もあります。
↑統合中学校の人気順リスト
統合中学校
受験時の成績がもっとも低い子供達が進学する学校。7年生から13年生までの全日制統合中等学校。朝8時から16時頃まで授業やクラブ活動などのカリキュラムがあります。職業訓練系のプログラムが充実している学校が多いです。
このカテゴリーの学校からも、成績がよければギムナジウムコース付き学校やギムナジウムに転校できるシステムがありますが、入学後のカリキュラムが全く異なること、授業のレベルが低いことから、現実的にはよほどの頑張りと頭の良さがない限り難しいと思います。
私が見学に行った学校の校長先生は、大学進学を少しでも念頭に入れているのであれば、うちの学校には来ないでください、と言われました。
私立
ベルリンでは、私立に通う子供が増えてきているそうです。(私立に通う子供の数は、2020/21 学年度、小中高合わせて38,792人)
ベルリン全体の小中高校生の数は、36万人(2018年)
宗教系私立
カトリック系、プロテスタント系、ユダヤ教系、イスラム教系などの宗教系私立学校があります。
カトリック系の場合
学費は月80ユーロほど。
カトリックの子供のための学校なので、受洗証明書がある子供優先ですが、校風に合うと判断されれば、非カトリック教徒も入学可能です。
公立学校よりも先に受験のための面接などが行われます。成績が多少悪くても、校長先生の判断で入学できることがあります。
入学式・卒業式は教会で行う、月に一度全校礼拝がある、宗教の授業が必須などの特色があり、先生もほとんどがカトリック。他の学校と比べて、年配の先生が多い印象でした。
ドイツ人の場合は、親の代から同じ学校だったり、付属幼稚園、提携小学校から一緒という子供が多く、クラス替え無しに上がって来ているため、よく言えばアットホーム、悪く言えば排他的です。(提携カトリック小学校から上がってくる場合も、友達同士は、中学からも同じクラスを希望することが多いです)外国人生徒は、東欧から来た子供がほとんどでした。
娘が行っていたカトリック系ギムナジウムには先祖代々裕福な家庭の子供が多く、親の職業は弁護士、医者など。ベルリン内外に家が三軒あり、アラブのお姫様がわざわざ乗りに来る馬を持っている、子供の靴コレクションのための部屋(クローゼットではなく)がある子供などがいましたが、学校で見かける姿は地味でした。
インターナショナル系私立学校
インターナショナル系私立については、学校により、母国語と同等の英語力がある場合のみ受験可能なところと、学校で補習をしてくれるところがあります。授業料は、学校、学年により年間1万ユーロから2万ユーロ程度(130万から260万円)ですが親の収入証明により、大幅に減額される場合もあります。(義務教育が終わる11年生からは減免措置がなくなる学校も)音楽やスポーツなどの奨学金が充実している学校もあるそうなので、全員が2万ユーロの学費を払っているわけではありませんが、学費以外の面でもかなりかかることは確か。
ほとんどのインター系私立学校でIBプログラムが実施されています。
学校の選び方
下記リンクに、学校リスト、大学入学資格試験合格率、外国語を母国語とする生徒の率、第二外国語として取れる言語、人気、学校のWebサイトなどが掲載されています。
ベルリンの公立ギムナジウム
ベルリンの公立統合中等学校
ベルリンの私立学校
学校リストで注目するべきポイント
アビトゥア合格率と平均点などの順位(学校の学力レベル、授業の難しさなどがわかります)
家庭でドイツ語を第一言語として使わない子供の比率
この比率が高ければ高いほど、外国人比率が高い学校になります。ドイツ人とのハーフの子供は含まれません。この比率が非常に高い学校の場合、子供達の休み時間中の会話はアラビア語とトルコ語になります。逆に比率が非常に低い学校の場合は、外国ルーツの子供にとっては居心地が悪い学校である可能性があります。第二外国語として取れる言語
スペイン語、フランス語、日本語、トルコ語、アラビア語、ラテン語など学校により特色があります。この言語でアビトゥアを受験することになるので、本人の興味があり、高得点が取れそうな言語を選ぶことが大切です。音楽系、芸術系、情報処理系など
例えば音楽に特に力を入れているギムナジウム(いわゆる音高とは異なります)の場合、コンクール受賞歴がある、楽器の先生からの推薦状がある子供が入学しやすい、入学後も、学内オーケストラがあったり、音楽の授業が充実しているなどの特色があります。学校の環境と通学経路
中高生になると、週末に友達と遊びに行く様になります。夜中であっても安全に帰ってこれる環境かどうか、など。安全のために集団で行動しますが、あまり離れたところにある学校だと、一人で帰宅することになり危険です。
STYPS
ベルリン上院が公表している学校の格付けです。
教師の数、留年する子供の数、ドイツ語を母国語としない子供の数、生活保護を受ける家庭の数などから割り出されているそうです。
口コミとオープンディ
小学校の同級生の親や担任からの周辺の学校の評判を知ることは大事です。
仲の良い子供たちが同じ学校に進学することも多く、学校によっては、アンケート用紙に「同じクラスになりたい子供の名前」を書く欄があります。
12月から1月にかけて、学校開放日があるので第一志望校の校長との面談が可能な場合は予約を取り、熱意をアピールします。
学校訪問日には、教室や一般の設備などのツアーがありますが、必ずトイレを利用してみてください。学校のトイレが汚すぎて利用できない、我慢して病気になったなどの話を聞くことがあります。もちろんオープンディの前に掃除されているとは思いますが、普段から綺麗に使われているか分かると思います。
また、普通の日の下校時に学校の周りを歩いてみると、学生の雰囲気がよくわかります。学校の周辺道路にゴミや吸い殻が多い、酒ビンが放置されている、落書きが多いなど。落書きはベルリンの文化ですが、実はベルリン全体にあるわけではなく、安全に夜出歩けるような地域では、すぐに消されます。
進学先決定までの流れ~2023年8月から7年生に進学する場合
2022年夏頃から学校選びを開始、口コミやオープンデイの日付などを調べ始める。
2022年11月〜12月ごろ:カトリック系など私立の推薦・面接。小学校の先生との面接(子供の良い点をアピールして、できるだけ良い成績・コメントをもらえる様に)
2022年12月〜1月ごろ:オープンディ(予約制で校長先生と個人面談ができる学校も)
2023年1月:成績表・推薦状発行/私立学校の合格発表(郵送)
2023年2月:志望校登録
2023年5月末:郵送で結果発表 / 私立で枠がある学校のオープンディ&申し込み
2023年6月中:希望校に落ちた子供の学校割り当てをベルリン市が保護者に連絡/5月末に学校が決定している子供の元にメールや郵送で新学期に関するお知らせ
2023年7月から8月上旬:夏休み
2023年8月下旬:新学期
小学校の成績と推薦状
7年生から進学する場合、5年生後期・6年生前期の成績の平均点が
2.2までの場合、ギムナジウムへの推薦状
2.2から2.8の場合、ギムナジウムまたは統合中学校への推薦状
2.8以下の場合、統合中学校への推薦状
成績平均点の計算の仕方
が小学校から発行されます。
ギムナジウム・統合中学校には「校区」は無いため、自宅から遠く離れていても、進学希望を出すことが可能です。
学校によりますが、募集人数が100人だった場合
60人:成績順
20-30人:くじ引き
10-20人:在校生の弟妹、特別な理由がある子供への枠
などと決められています。(それぞれの学校のHPに記載)
ギムナジウムの場合、2.2以上で推薦状がもらえますが、人気のギムナジウムの場合、1.1でも通らなかったという例もありますし、2.8でも入れるギムナジウムもあるので、学校によります。統合中学校も、ギムナジウムコース付きの場合、1.8でも成績順で入れない場合もあります。
ベルリンでは、公立校に進学する場合、志望校を三校選び、第一志望の学校に申込書を出すことになっています。第一希望の成績順で落ちた場合、くじ引きになり、それでも落ちた場合、第二、第三志望の学校に回されます。
その時点で第二、第三志望の学校が定員に達して居た場合、希望した3校全てに不合格と言うことになります。
その場合、6月中に空きがある学校のリストがベルリン市から送られてくることになっていますが、人気がある学校は全て満席。ギムナジウムに入れる成績があるのに、学校のランクを落とすことになったり、1時間かけて通学することになったり、荒れていることで有名な学校に通うことになったりするなどの問題があります。学校の人気はある程度固定的なので、小学校の先生や希望校の校長先生との面談時に、「**学校を第二希望にした場合、入学できる可能性はありますか?第一志望にしないと難しいですか?」などの質問をして、情報収集しておくことが大事です。
2022年入学の場合、ウクライナからの難民の子供たちを受け入れたために学校の席が足りなくなり、6月になっても進学先が決まらない子供が100人以上出たことが報道されていました。
ドイツの義務教育は、10年生修了まで。10年生の間に、MSAという中学卒業資格試験があります。10年生修了で退学して、アビトゥアを取らずに、10年生終了時に大学に進む子もいますし、(音大など)働き始める子もいます。