映画パンフ感想:白日青春 ―生きてこそ―
映画『白日青春 ―生きてこそ―』の映画パンフレット感想。
※ヘッダ画像
ザハル・ザマン(林諾) (※香港電影金像奨受賞時の画像をトリミングして表示)
クリエイティブコモンズ3.0
出典:https://www.youtube.com/watch?v=M1VWBpiFEyY
【基本情報】
・判型:B5縦(左綴じ)
・ページ数:24ページ
・価格:1000円(税込)
・発行日:2024年1月26日
・発行:武蔵野エンタテインメント株式会社
・宣伝美術/パンフレットデザイン:大西真平
【構成】
・2ページ:『苔』(袁枚)(映画内に引用される詩の採録)
・3ページ:イントロダクション
・4ページ:ストーリー
・5ページ:プロダクションノート
・6-7ページ:レビュー 夜の香港の灯りが映し出す、二人の父と二人の息子の物語(久保玲子)
・8-9ページ:キャスト&スタッフ
・10-11ページ:アンソニー・ウォン(黄秋生)インタビュー
・12-13ページ:レビュー アンソニー・ウォン 香港映画そのものの役者人生(江戸木純)
・14-16、19-20ページ:映画スチル
・17-18ページ:エッセイ 『誰もが香港を目指した…その果てに』(世良田のり子)
・21ページ:袁枚『苔』(杉野元子)
・22ページ:クレジット
・23ページ:受賞歴
【内容】
・プロダクションノート…じゃねええ!!! が、作品の背景が分かる監督コメント
一応パンフにプロダクションノートって書いてあるんだが、これプロダクションノートじゃないじゃん。プロダクションノートって企画の始まりがどうとか、脚本開発がどうとか、このシーンはこう撮った、あのシーンはああ撮ったとか
書いてあるもんじゃねーの?
これただの監督コメントじゃん。
プロダクションノートではなく監督コメントと思えば、監督の背景が伺えて映画の理解が深まるページにはなっている。
監督は中華系マレーシア4世で、インドネシア人の家政婦、会社のミャンマー人従業員、シンガポールへ働きに行く親戚、台湾の大学へ進学した姉というように、異国出身の人々に囲まれて、異国へ行く家族・親族を見送る半生
を送ったようである。
監督もまた高校卒業後香港に渡り映画を学んだ。
『白日青春 ―生きてこそ―』には大きく二つのテーマがある。
「難民」と「父と子」だ。
二つとも監督自身の経験に根差したテーマとなっている。
育った環境の影響から「難民」については常に関心があったのだろう。
(難民の記録映画も撮っているようだ。)
また成人前にマレーシアから香港に移住して、父親との結びつきがほとんどなくなった、という経験から「父と子」というテーマが浮かび上がってきたのだろう。
本作『白日青春 ―生きてこそ―』はその二つのテーマが結実した、香港という都市に向けた監督の心情が伺える一本となっている。
なお、このパンフに実質的なプロダクションノートのページはありません。
制作日誌があるなら読みたかったところ。
※なお、上記公式サイトではメイキング映像を見ることが出来る。
・レビュー 「二人の父と二人の息子」に着目した映画ジャーナリストによるレビュー
ベテランの映画ジャーナリストの方によるレビュー。
冒頭でケン・ローチ、アキ・カウリスマキ、ダルデンヌ兄弟、レオス・カラックスら映画で移民・難民を描いてきた監督(※)たちを取り上げ、アフリカや南米、また紛争国からの難民を映画に描く現状の動きも踏まえつつ、日本の香港映画の観客が今までほぼ意識しなかった香港の難民を描いた本作に繋げている。
※ケン・ローチだと『この自由な世界で』(新作も)、アキ・カウリスマキだと難民3部作、ダルデンヌ兄弟だと『イゴールの約束』他あたりだろうか
(レオス・カラックス作品にはあまり移民・難民のイメージはないが…)
華やかな香港の街並みでなく、街灯に照らされた夜の世界で映画が展開されることを指摘し、その中で本土から海を渡ってきたパクヤッ(白日)と、パキスタンから香港に渡ってきたアフメドという二人の父親を対比させる。
密航者だったパクヤッは今や香港市民だがパキスタン人たちを”不法滞在者”扱いしている。(オールドカマ―がニューカマーたちを遠ざけるのは移民・難民問題の常である。同族でも問題が起きているのに、文化や習慣が違う異民族ではなおさらだろう。)
アフメドは働くことを許されず、将来不安と生活苦の責任を背負っている。
ここからの映画の展開について、物語中盤の衝撃的な出来事へのあからさまな言及を避けつつ、演じた俳優の背景を交えながら、当映画について、二人の父と二人の息子の切ない物語として、しかし未来の希望の物語として本作への批評を締めくくっている。
・キャスト&スタッフ
ハッサンは、香港名がモク・チンチョン(莫青春)という設定(小学校教師に名付けられる)で、パクヤッと合わせて「白日青春」となる仕掛け。
・アンソニー・ウォン(黄秋生)インタビュー
実質一ページ。パクヤッ役のイメージと引き受けた決め手、パクヤッと息子ホン(康)の関係性、パクヤッとハッサン(青春)の関係性、ハッサンを演じたザハル・ザマンとのエピソード、監督の印象、日本へのメッセージ等で構成。
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