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1984年版 『吹雪の星の子どもたち』を読んだ時のこと。

 山口泉著『吹雪の星の子どもたち』を私が手にしたのは、版元の小さな出版社でのことでした。私は、中・高生のころは、それなりに小説を読んだのですが、その後、学生自治会や全共闘運動に関わるようになってからは、ノンフィクション、あるいは、何々論といったものしか読まなくなりました。『世界』のような総合雑誌には必ず連載小説があるのですが、それだけはいつも飛ばしていました。
 紆余曲折ののち、34歳のとき小さな出版社に時給アルバイトとして仕事を得て、何日が通勤したころ、そこの営業のおじさんに「これ読んだ?」と聞かれました。「すごい小説だから絶対読んだ方がいいよ」と、その本を私にくださいました。
 それが、『吹雪の星の子どもたち』でした。著者の山口泉さんは、わりと頻繁に、午後になると、途中で買ってきたサンドイッチの小袋をぶら下げて、その出版社にやってきていたので、あの人かと思いました。
 『吹雪の星の子どもたち』は、この出版社が刊行している総合雑誌に連載されていて、私は、以前からその雑誌の山代巴さん関連の情報を読むために定期的に購読していたのですが、小説だけは飛ばしていたので、読んでいなかったのです。
 これが、『吹雪の星の子どもたち』との出会いでもあり、山口泉さんとの出会いでもありました。

1998年に出版された『吹雪の星の子どもたち』書影

 私がその出版社を知ったのは、1980年12月「戦争への道を許さない女たちの会」主催の集会が、東京・渋谷の山手教会で開催されたときです。会場入口で配布されていた出版社のPR誌に、山代巴さんの自伝小説『囚われの女たち』のことが載っていたことによります。
 私は、かねてより治安維持法による犠牲者の名誉回復や国家補償などが、戦後、なぜなされないのかと疑問に思っていたので、治安維持法で囚われた人びとのことに関心を寄せていました。『囚われの女たち』は、治安維持法により逮捕され女性刑務所に収監された山代巴さんが、当時そこに囚われている女性たちから学んだことを中心に、自伝小説として著したものです。さっそく本を取り寄せて読みはじめました。
 これについては、いずれ、まとめて書こうとは思っていますが、3年余り後、その出版社で働くことになったのです。 

 山口泉著『吹雪の星の子どもたち』は、一言でいえば、「この世の希望は、あなたへの信頼にある」ということだと思いました。そして、お互いに信頼出来る関係は、それぞれが、何者にもよらない「個」として自立していることが、最初にあるという、私のよって立つ立場というか、姿勢というか、信条というか、それに重なるような内容だったのです。
 登場する人物の中心はみな12歳前後なので、ある意味で易しい言葉で行きつ戻りつしながら、核心に迫る発言をします。それが、当時、脆弱な人間関係や想像を絶する裏切りなどで疲れていた私が、「希望への道」に引き返すきっかけとなりました。

 『吹雪の星の子どもたち』は1984年です。当初から後編があり、それは『翡翠の天の子どもたち』というのだと言われていました。しかし、いったいいつになったらその後編は出版されるのだろうと、思っていた方は少なくないと思います。
 今回、その続編『翡翠の天の子どもたち』と合わせた本が世に出ます。版元は、私が主宰するオーロラ自由アトリエです。併せて992ページという厚さの書籍になりました。
 ご注文いただければ、全国どこの書店でもお求めいただけますが、BASEにてご注文いただければ、直接お送りいたします。また、お電話やファックスにてご注文いただくことも可能です。

書店向けのチラシ。
『吹雪の星の子どもたち』『翡翠の天の子どもたち』合本書影


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