En|交差点に立つ研究者&実務家

The Art of Being. The Art of Living. A Reader, Data Scientist, Martial Artist, and Meditator. 計算機科学/コミュニケーション技術×制度の交差点をウロウロしている博士学生@London🇬🇧

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最近の記事

【備忘録】欧米のTechエリートはAIの逆襲を本気で恐れている!?

GitHub CopilotというAIツールを用いたコーディングの演習中に、教授が面白い発言をした。教授は、非常に丁寧な敬語でプロンプトに書き込みながら言った。 すると、生徒の中から「Add 'Please.'(Pleaseがないので付けた方がいいです)」という声が上がり始めた。その指摘を受けて、プロンプトは更に礼儀正しくなった。 ここまでするか!?というくらい、仰々しい敬語である。 この教授は、MIT(マサチューセッツ工科大学)で博士号を取り、米Tech企業でデータサ

    • 【映画】ルックバック ~クリエイターは人を救っている~

      現実世界で何も役に立っていない、人を救えない、無力感に苛まれるクリエイターに届いて欲しい。 あなたは、絶望の中にいる人を救っているし、現実世界で命を救っている。あなたに救われた人が、現実世界でまた他の人を救っている。あなたは救済の連鎖の中にいるから、物語を創ることをやめないで、と。 作品に影響されて進んだ道で死んだとしても、作品に出会わなければよかったとは思わない。 1. 来週の連載を見るために生き延びた幼少期私は、幼少期に少し危険な環境に身を置いていた。その時の心の支えは

      • 【読書】How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing by Paul J. Silvia

        あらすじ1. スケジュール(ルーティン)に組み込む著者は、連休や夏休みにまとめて書くのではなく、平日の一定時間を「執筆の時間」としてスケジュールに組み込み、毎日少しずつ書くこと、つまり執筆のルーティン化を推奨している。 例えば、「月曜日から金曜日の朝8〜10時は執筆の時間」として、あらかじめスケジュールに入れ、毎日淡々とその時間は執筆をするということである。 このとき、よくある言い訳として、「書く前には、読む必要がある」というものがある。論文を書く際には、先行研究を読み

        • 【読書】パノラマ島綺譚 by 江戸川乱歩

          あらすじ1. 後のウォ◯ト・ディズニ◯である・・・主人公は、地上の楽園の建設を夢見ている。 冒頭では、その想像上の楽園の様子が描写される。彼は、政治上、経済上のことには無関心で、美と夢の国としての理想郷をひたすらに夢見ている。 その描写を読みながら、私は「後のウォル◯・ディズ◯ーである…」と、一人ナレーションを入れていた。 奇しくも、本書が雑誌に連載されたのは1926年〜1927年にかけてである。ウォル◯・ディズ◯ーの人生は1901年〜1966年であるから、本書の発表当

        マガジン

        • 【研究】計算機社会科学(CSS)
          0本
        • 【読書】書痴万葉庵
          13本

        記事

          【読書】進化のからくり 現代のダーウィンたちの物語 by 千葉 聡

          あらすじ1. 一流の学者は、一流のストーリーテラーであるなんとなく「理系研究者」と聞くと、黙々と実験をしている、内向的な人物をイメージするのではないだろうか。もちろん、そういう人柄の人もいるだろう。しかし、この本を読むと、研究者として一流の人物とは、高いコミュニケーション能力と発信力を持つ、一流のストーリーテラーであり、マーケターなのだとわかる。 一例は、「ひとりぼっちのジェレミー」である。 ある種のカタツムリ(ヒメリンゴマイマイ)は、基本右巻きである。しかし、非常に稀に

          【読書】進化のからくり 現代のダーウィンたちの物語 by 千葉 聡

          【備忘録】フォークと櫛、先に発明されたのはどっち?

          1. 動機人類の歴史において、身近な道具が思わぬ発明の種となることは多く見られる。既存の物の使用法を変えることで何らかの問題解決ができることに気づくことがある。それが発明である。 ただの平らな木の板を見て、食材を切るときに下に敷けば便利だと思いつくと、まな板の発明である。 そろばんを見て、ローラースケートができて楽しそうだと思いつくのも発明である。 ディズニー映画『リトルマーメイド』では、主人公の人魚アリエルがフォークを櫛に見立てて髪を梳かすシーンがある。この場面は、異な

          【備忘録】フォークと櫛、先に発明されたのはどっち?

          【読書】センス・オブ・ワンダー by レイチェル・カーソン

          あらすじ1. 目を塞ぎ、耳を塞ぐ現代人への警鐘私は最近、移動中やジムでの筋トレ中、家事中など、基本何をする時もAirPodsを着けて、サブスクで音楽を聴いたり、論文読み上げアプリで論文を聞いていたり、レクチャーの動画を流して復習したりしている。信号の待ち時間やちょっとした空き時間は、すぐにMacBookを開くかiPhoneを開いて、メールチェックと情報収集をしている。 発展し続けなければいけない、動き続けなければならないという思いに囚われて、空白を塗りつぶすように、仕事や

          【読書】センス・オブ・ワンダー by レイチェル・カーソン

          【備忘録】英国博士学生の典型的な1週間

          ※あくまで一例です。 1. 要旨私は、この秋(2024年)から英国で博士学生として研究を始めた。 2020年に日本で理系分野の修士号を取得し、2020年〜2024年夏までの約4年半は社会人として研究を離れていたが、職務内容についてより深く学術的に研究したいと思うようになり、日本で修士号を取得した分野とは関連がないが、職務経験とは関連している分野の博士課程に進学した。 渡航して以降バタバタしていたが、段々と無理のないルーティンが確立できてきたので記録しておく。 2. 色分

          【備忘録】英国博士学生の典型的な1週間

          【読書】センスの哲学 by 千葉 雅也

          あらすじ1. 私は、センスの人間ではない本書は、普遍的な定義ではなく、あくまで本書のために仮固定した定義だと前置きしつつ、センスとは何か、センスの目覚めとは何かについて以下のように記述している。 この定義に照らすと、自分はセンスの人間ではないことに気づいた。 というのも、なんでも言語化し、お気に入りの対象について、いつも好きな理由(社会的な意味)を論理的に説明してしまうからだ。 例えば、 「好きな邦人音楽家は澤野弘之、梶浦由記、久石譲など、アニメ音楽の大家。なぜなら、曲

          【読書】センスの哲学 by 千葉 雅也

          【読書】現役官僚の滞英日記 by 橘 宏樹

          あらすじ1. 決断することこそ'エリート'の仕事現在人類が直面している数々の課題は高度に複雑化しており、誰の痛みも伴わずに解決する方法はないと言っていい。気候変動などはこの状況を示すわかりやすい例だ。 だからこそ、高い知性や学歴を持ち、'解決する責任がない'人々は、「Aという側面があり、Bという側面がある。したがって、両者のバランスをとることが重要」などと発言する、正しいことを言う批評家になりがちである。 しかし、'解決する責任がある人々' すなわち、指導的地位につく人

          【読書】現役官僚の滞英日記 by 橘 宏樹

          【備忘録】朝散歩より朝武道の方が生産性が向上した

          ※この記事は、科学的な記事ではなく個人的体験談の共有の記事です。 1. 日本では毎日川辺を朝散歩していた朝の運動、とりわけ朝日を浴びながらの朝イチ散歩が健康維持と生産性向上に良い効果をもたらすことは知られている。そのため私は、日本では夏は朝5時頃、冬は6時頃に30分程度、近所の河辺の土手をウォーキング(コンディションによってはジョギング)することを日課としていた。 定量的に検証したわけではないが、この習慣により、一日中前向きで生産性が高い状態を維持することができると体験的

          【備忘録】朝散歩より朝武道の方が生産性が向上した

          【読書】ガンディー 獄中からの手紙 by ガンディー(森本達雄訳)

          あらすじ1. 宗教指導者かつ政治指導者として成功した稀な人物ガンディーは、近代において宗教指導者かつ政治指導者として成功した稀な人物である。 現代の多くの先進国では、宗教と政治は分離しており、それが正しく、先進的であると考えられている。少なくとも私は、政治指導者でありかつ宗教指導者であるような現代の人物の例を思い浮かべた時に、「胡散臭い」という印象を抱く。しかし、ガンディーは宗教と政治を切り離すことができないものと考え、宗教指導者かつ政治指導者として多くの人に尊敬された稀な

          【読書】ガンディー 獄中からの手紙 by ガンディー(森本達雄訳)

          【読書】まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書 by 阿部幸大

          あらすじ0. 私のアカデミックバックグラウンド本の著者(阿部幸大氏)のアカデミックバックグラウンドは人文学であり、この本は多様な分野の人から出版前にフィードバックを受け必要に応じて内容を発展させつつも、前提としては人文学の論文を想定している。また、アカデミックライティングの主要な教育は、博士論文を執筆した米国で受けたと推察される。 一方で、この記事の筆者(私)は、2015~2020年まで日本においてIMRAD形式で論文執筆をする自然科学分野で教育を受け、2024年~現在は

          【読書】まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書 by 阿部幸大

          【備忘録】もはや人間がやるべきことは瞑想、愛すること、冒険しか残されていない件

          新興テクノロジーによって、ほとんどの人間は生産者から消費者&デバッグ要因になるのか(並列に並べるべき語ではないが)AI、LLM、GPTといった新興テクノロジーに関連する語を聞かない日はなくなって久しい。チェスもオセロも、ついには碁も、人間は計算機に勝てなくなった。チューリング・テスト(1950年にアラン・チューリングが提唱)を踏まえると、「思考のようなもの」は生物の専売特許ではなくなった。 ほとんどの生産(Produce, Create, Generate)を、計算機の方

          【備忘録】もはや人間がやるべきことは瞑想、愛すること、冒険しか残されていない件

          【読書】忘れられた日本人 by 宮本 常一

          あらすじ1. 文化人類学と民俗学の違いこの本を、文化人類学の本だと思って読み進めていたが、読了後にインターネット検索で背景知識や分からなかったことを調べてみると、著者は「民俗学者」で、この本は民俗学の本であることがわかった。しかし、文化人類学と民俗学の違いがわからない。調べると以下のような記載を見つけた。 本来、世界に境目はほとんど存在せず、あくまでグラデーションの問題なのだが、分類とは常に人間の都合で決まるものである。 ひとまず、研究者を「主体」としたとき、以下のよう

          【読書】忘れられた日本人 by 宮本 常一

          【英国生活】ロンドンの美味しいレストラン(King's Cross周辺)

          イギリスのご飯は美味しくないという風評があるようだが、それはスターゲイジー・パイやジェリード・イール、ハギスといったイギリスの伝統料理が燦然と個性を放っており、好き嫌いが分かれるからだと考えている。 今日、イギリスは多文化国家であり、多種多様な文化の美味しいレストランは無数にある。レビューなどを事前に確認し100点満点中80点以上(例えば最高星5つのGoogle Mapでは星4以上)のレストランを選べば、少なくとも選択肢がある都市部においては、「イギリスのご飯が美味しくない」

          【英国生活】ロンドンの美味しいレストラン(King's Cross周辺)