ブランドロイヤルティ
我々マーケティングに関わる人間はブランドロイヤリティやロイヤルユーザーという用語を気軽につかう。ここで改めて、ロイヤリティとかロイヤルユーザーについて考える。
<ロイヤルユーザーはヘビーユーザーか>
ヘビーユーザーは購入量(頻度)の数値の大きさで規定できるが、ロイヤルユーザーは数量ではなく、情緒、情動の心理傾向を指標とするので定義が難しい。
そんな中で、我々は商品ジャンルの大量購入者をヘビーユーザーとし、個別ブランドのヘビーユーザーをロイヤルユーザーと言い慣れている。
ロイヤリティという情動と購入量という数量を安易に連動させる無分別さに気づくことは少ない。
<ロイヤルティとは>
ロイヤルティは直訳では忠誠心である。宗教・政治的概念であり、競技、競争、闘争、更には戦争の時の集団心理である。マーケティングではそれを避けるためもあって、執着心と言い換える事が多い。
Wikiには「ブランド・ロイヤルティ(brand loyalty)とは、消費者が、他の代替となるブランドがあるにもかかわらずある特定のブランドを購買し続けることをいう」とある。
ブランドに製品、サービスだけでなく企業、産地、店舗なども含めれば、マーケティング的に十分な定義である。
ただ、この定義もロイヤルティを行動結果(数量)から見ているので、なぜ、「他の代替となるブランドがあっても」という肝心の情動の分析には使えない。ロイヤルティ行動を起こす「契機、理由」が分析できないと分析結果とマーケティング施策をつなぐことができない。
<ノンロイヤルユーザー>
ジャンルの購入頻度は高いのに購入ブランドがバラついている行動がノンロイヤルである。
前に述べたようにランダムウォークとバラエティシーキングに分けて考えられる。
ランダムウォークは文字通りランダムであるから、マーケティング的には接触機会の増大が基本施策になる。店頭なら大量陳列、WebならSEO対策やカタログ最初のページ掲載が施策になるだろう。
バラエティシーキングは消費者側の「飽き対策」や「新刺激欲求」の深層心理で説明ができる。毎回、新しい体験がしたいのである。
ただ、これには前回購入ブランドを記憶している必要があるので、バラエティシーキングはランダムウォークと同一視してよいと考えられる。
当の消費者にとって新ジャンルの購買行動で、自分のお気に入り(ロイヤルブランド)を探す行動としてのバラエティシーキングは考えられる。
<ブランドロイヤルティの契機>
企業ブランドのロイヤルティは製品サービスの高評価とともに「ストーリー性」が必要である。
ホンダ、ソニーに特徴的な創業者ストーリ、製品開発ストーリーなどがロイヤルティの契機となる。
ネット通販を含めた店舗のロイヤリティはクーポン、ポイント制のユーザー囲い込み戦略が有効だが、店頭(ネットならページ)での買い物客とのコミュニケーションの質が契機になる。その方法論を開発した企業はまだない。
住宅、クルマなどの耐久財のロイヤルティは前述のストーリー性が時間的継続性をもち、親から子への垂直伝播もある。
飲食品のロイヤルティは味覚だけでなく、他の感覚も統合したものにロックインさせる必要があるが、この方法もまだ開発されていない。
マーケティングを競争、闘争のアナロジーとするときにロイヤルティ概念は有効性を発揮するのだが、富澤先生が言うように「No Peace No Marketing!」であることを我々は忘れてはならない。
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