記憶のダイナミックス性

前回、習慣性依存症:正のアディクション概念から、新製品ではない既存品の消費者行動モデルDAMAを提案した。
今回は、DAMAモデルのM:Memoryの特徴について述べる。
<消費者行動モデルの記憶:Memoryとは>
富澤先生によるとAIDMAはいつ誰が言い出したかわからない謎の名称らしく、起源がはっきりたどれるのはAIDAらしい。*富澤のnote参照https://note.com/tomizawa/
AIDAにM:Memoryが挟まれた経緯について、エビデンスはないが、テレビCMの大量投下マーケティングが始まったとき、某広告会社の営業が、広告効果としてブランド名や広告が記憶されたという指標を挟み込んだと憶測している。
このMがないと知名率調査も成立せず調査会社のメシの種もないというわけである。
暗黙的か明示的ははっきりしないがAIDAもAIDMAも新製品の消費者行動モデルであろう。
新製品の浸透には広告効果が高いことは誰しも認める。「知られていない製品は買われない」原則は認めざるをえない。
また、多くの新製品が「既存品」になれずに消えていく。どんな新製品もやがて既存品になることで市場に定着したことになる。
古い例だがアンハイザーブッシュが全米をいくつかの地域に分け、バドワイザーのCM投下効果測定をおこなった。結果は既存品であるバドワイザーの広告を継続投下した地域と一切の広告を1年間打たなかった地域の比較で売上に差がなかった。交絡因子の分析もないのではっきりしたことはいえないが、既存品と認知されたブランドの追加広告投下は「無駄」かもしれないということである。
ここで、DAMAのM:Memoryを単に記憶とするのでなく、既存品への態度、嗜好、イメージ、購入・使用体験、その評価、周囲の評判の集合体と定義する。既存品への広告投下はこの意味の広告効果、消費者の態度・姿勢の維持・変容に効果的である。
<DAMAのM:記憶は態度・姿勢である>
朝、目覚めて「仕事をどうするか」考えても、体はカーテンを開け、スマホチェックして、歯磨き、、」と自然に動くのが普通である。
この習慣性の行動パターンが既存品の買物行動にも見られるとしたのがDAMAモデルである。
DAMAのMとAIDMAのMには大きな違いがある。
AIDMAのMは広告を見てブランドを知り、欲しくなったという心理が記憶されて行動に結びつくとしている。
DAMAのMは欲求が発生したとき、トップダウン注意として気づきに働きかける逆伝播の機能を記憶:Memoryが持つ。
Mは確信的態度・姿勢であるから当のブランドだけを想起(気づき)させる。このようにピンポイントの想起であり、数ブランドを想起(エボークトセット)させ、比較検討の後、意思決定するという遷移はない。
前回あげた例のように「カップ麺を探す」ではなく「カップヌードルを探す」という注意機構が働くのである。
以上のようにDAMAでは単なる記憶ではなく、自ブランドを差別的優位性
をもった記憶を作る必要がある。
差別的優位性は製品、デザイン、ネーミング、価格、購入・使用体験など
の総合力として表現され、その中に広告やキャンペーンなどの新しい刺激
を与え続ける事ができればMの差別的優位性は維持される。

DAMAモデル

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