新婚生活と初めてのアパート暮らし
いろんなnoteを見て回っていたら、#初めて借りたあの部屋 というハッシュタグを見つけた。
見つけたら頭の中にもう文章がぐーるぐるしてきて大変だったので、書いてしまうことにする。
いつもよりちょっと長い文章になるけれど、仕方ない。
これを短くは書けない。
それまで実家を出たことがなかった私は、不動産屋を回るのが楽しくて、最初はうきうきしていた。
でも二人の仕事場に通いやす駅、駅まで歩いていける距離、家賃、間取り、日当たり、駐車場の有無など意見をまとめる作業はなかなか大変で、それまで「あなたの良いように」というスタンスで彼とお付き合いしていた私にとって、自分の意見を言うということだけでも大変だったし、ノーと言うのはもっと大変だった。
初めてのことは、大変なことばかりではもちろんなかったけれど、そんな小さな負担が積み重なって、私は日常生活に支障が出るほど気持ちの浮き沈みが激しくなって、アパートの契約更新が来る前に、結婚生活は終わりを迎える。
ただ、あんなに辛いことがたくさんあった部屋なのに、元夫とのエピソードは記憶からどんどん抜けていくのに、私の頭の中には、妙にきれいに部屋の映像が残っている。
まず玄関を入ると台所。左側には出し入れするにはしゃがまないといけない高さの食器棚があって、隣にはどんど焼きでもらった火事避けのお守りの飾ってあるコンロ。私が使いやすいようにものの配置を整えた、ちょっと大きめの流し台に白い冷蔵庫。
玄関の右側には風水の飾りをのせたシューズボックスがあって、その向こうがお手洗いで、次が着替えが見えないようにカーテンをつけた流し台。洗面所の奥がお風呂。
玄関の真正面にはカラーボックスの上に板を置いたお手製のカウンター。
そのカラーボックスには、いろいろな調味料を入れていたなぁ。手作りのハチミツ漬けとか、意気込んで作っていた覚えがある。
カウンターの奥にごみ箱が置いてあって、それはちゃんと木でできた密閉性のいい、上に電話を置けるちょっといいものを奮発して買った。
このカウンターの辺りによくいたなぁ。
料理なんてほとんどしたことなかったから、毎日本を開いて調べてた。
ケータイのサイトもみた。
確かキューピーのサイトが使いやすかったんじゃないかなぁ。仕事帰りの電車の中で毎日お味噌汁の具を考えてるって職場で話したら、そんなの生協でお味噌汁の具っていうの売ってるから買ってきて使えばいいのよって言われたの。
仕事しているんだからうまく手を抜きなさいって。
台所の奥には畳の部屋が二部屋あって、どちらも通りに面して日当たりがよく、明るくて大好きだった。ベランダも両方の部屋をつなぐようにあって大きかったから、二人分のお布団をよく並べて干した。
そうそう。
小さくてかわいいピンクの花がたくさん咲く植木を衝動買いして、ベランダに置いてあった。それからガーデニングがしたくなって、少しずつかわいいシャベルとかバケツを買いそろえたよ。
お天気のいい日に、よくそのピンクの花を眺めてた。話し相手のいない部屋で、私をすごく癒してくれた。
押入れを棚にしたこととか、そこに100均で買ったいれものにばんそうこうとか体温計とか入れて置いていたこと、こたつの上にお茶セットを置いたこと、私のパソコンはテレビの左側に置いてあったこととか。
まったくさぁ。
本当に細かいところまで映像が残りすぎなのよ。もう10年以上前のことだというのに。
辛くなるのは嫌だから、しばらくその部屋の近くには寄り付かなかったけど、ある日うっかり部屋が見える道を通らなくてはいけなくなって、ヤバいと思ったけど不思議とそうはならなかった。
ならないことにびっくりした。
町にはられていた結界がとけて、出入り自由になったような気分だった。
今は近くの図書館に行くことが増えたので、あの頃窓から眺めていた通りを車でよく通る。
その時は、これまで書いたような映像が頭の中に流れてくるのを、淡々と味わっている。
あんなに辛いことがたくさんあったのに、変な感じ。
時間が解決してくれたことももちろんあるんだろうけど、そればかりじゃないはず。元夫のことを、友達にまだ許せないと話したのはちょうど去年の今頃の話だから。
そう。
そうだ。
そうだよね。
私はきっと、あの部屋での生活が好きだったんだろう。
じゃなきゃあんなクリアな映像が残っていることの説明がつかない。
自分で身の回りのことを全てするのは大変だったけど、なんでも好きにできる自由さはとても心地よかった。
実家を出たくて出たくて仕方なかったのに実家に舞い戻ってしまった現在、実現するかわからない希望ではあるけれど。
いつか、独り暮らしがしてみたい。
あの頃は、自分の生活を自分でコントロールしている実感があって良かったなぁ。衣食住をコントロールすることって、生きていく根幹だから。
独り暮らしって、生きていくこととまっすぐ向き合える感じがする。
チャレンジできたら楽しいだろうな。
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