たのしく作り続けるために
つくるのはたのしい。私なんてつくってみたかったものを作りはじめたら、世界が広がった。私は私の作ったモノに救われた。もう生きていて後にも先にももうこんな事はないかもしれない。
と、かなり豪語しきっていますが、まさにそうで、私が作っているタペストリー、最初は自分が欲しくて作りはじめたことがきっかけです。
当時私はInstagramにはまっていて、いい感じに写真をとってレイアウトするという行為がとても楽しかったんですね。色んな人のページを見にネット上をまるでフィールドワークするように徘徊する。とにかく膨大な数の画像を見ては、試行錯誤して自分のアカウントのフィールドを「自分ナイズ」していきました。
その自分のフィールドには制作途中のものもどんどん載せていきました。そうしたら私以外の結構色んな人もタペストリー作りに興味があったみたいで、道具や素材について質問されることがありました。私も見よう見まねで作っているので、「教える」というより「口コミ」するっていう感じでした。そうやって途中経過やおぼつかない手つきでなんとか作り上げたものも、自分の中では「お披露目」といってどんどん画像をUPしていったし、せっかく作ったからにはちゃんとおめかししたいよね、という親心のような気持ちから、手探りで作ったそれをディスプレイやレイアウトをして「発表」していきました。
上手にできなかったから、恥ずかしいから見せない、とか本当はもっと良く作れるはずだからもう少しうまくなってから発表する。
といった感情は持たなかった。これは今思うとけっこう不思議な気がする。もしかしたら「けっこうイケてる」って本当に思っていたのかもしれない。なんでかは分からないけれど、たぶんそれは楽しかったからじゃないかな。
内容が重複しそうなので、さらに詳しい経緯は↓の記事をどうぞ。
そして、つくり続けていると「たのしい」ばかりではどうにもならない事にも出くわす。今回はそんな失敗とか、微妙に後味の悪かった体験を少しだけど書いてみようと思う。
とはいえ、結構年月が経って「そろそろ時効かな…」と私は感じていても、他はそうではない可能性もある。(その一方で、すでに忘れられているという可能性も考えておきたい)
そのため詳細はぼかしつつ、話の筋がわかる程度に書いていくことにする。
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最初の頃は、制作過程もなにもすべてオープンに、あーでもないこーでもない、とまるで制作日記の独り言のように書いていた。そこに興味のある人から質問がきて、答えたりしていた。とは先にも書いた通りです。
とはいえ、この頃にはもういわゆる「アマチュア作家」(と言っていいか分からないけれど)として、自作のWebshopもこしらえていたし、販売実績もあったし、小さい規模ながらも取り扱ってくれるお店やなども出てきていた。なので、曲がりなりにも「商品(もしくは作品)」を販売している作り手なので、作り方とか、道具とか、教えて欲しいと言われてそれに応える行為って、「圧倒的にこちらの善意」で成り立っていると思うのです。
だって、レストランにいってシェフに「これどうやって作ってるんですか?」とか、セレクトショップのバイヤーに「どこで仕入れているんですか?」と聞くのとそう大差ない行為だと思うから。
その時私は、「失礼だな」とまでは思わなかったけれど、なんか後味が悪かったのは否めません。そういうことが色んな時や場所で起こったこれはネットでもリアルな現場でも変わらなかった。もし今の私がいきなりこうやって聞かれたら「無礼だな」とは思ってしまうかも。これはキャリアを積んだから(まだ途中ですよ!)そう思えるのかもしれない。
もしかしたら、もう私なりのプロ意識というものがあるのかもしれない。良くも悪くもプロとアマチュアの意識を行ったり来たりするのは大事なことだと思うし。
それでもワークショップをやって欲しいという要望は純粋に嬉しかったです。なぜなら「ちゃんと講師として扱ってもらえる」と思ったからです。やはり若輩者とはいえど、敬意は大事です。それって何かを教わることの基本なのでは。
そんな感じで、モヤモヤしている期間がけっこうありました。
何件かワークショップの依頼の案件もあって商談をしに行ったりもしましたが、条件がそろわず、実現することのない日々が続きました。
そこでその頃の私の心の中のつぶやき
って、そもそも私は私が作ったモノを誰かに届けたくてはじめた事なのにな。(そして私は先生になりたくてはじめた事ではない)
というか私が作ったモノを買ってくれ!!
と思った気持ちは今でも強く覚えています。心の叫び!
とはいえ、自分も最初は「タペストリーを作ってみたい!」という気持ちからスタートしたので、そういった声はすごくわかるんですよ…。
自分で作ってみたいよねぇ…わかる(2回目)
↓はそんなモヤモヤ期に出展した合同展示会roomsイエローブースでのインタビューシーン(懐かしい…)
このイエローブースというのはブランド設立3年未満の若手を対象にしたインキュベーションスペースです。(今は名前が変わっているようで当時とは趣旨が違うのかもしれない)過去出展者は錚々たる顔ぶれで、登竜門としても有名。けっこう気合いれて臨みました。(けど今改めて見るともう少し予算かけて壁面装飾すればよかったな…と思っても後の祭り!)
エリア担当者の方と相談して、制作の実演をすることになりました。
@rooms_experience の思い出
rooms出展時、海外向けの独自チャンネルLOTUSTVにてインタビューしてもらいました。
ドギマギしてます 笑
2018.2.20 Instagramより
そしてそのroomsさんもnoteをはじめていて嬉しい。当時は大変お世話になりました。↓がroomsさんのnote。
ついでにこちらも、
@rooms_experience 36
会期初日の朝から制作をはじめて、完成するかな? と思っていたら有り難い事に忙しくさせて貰ったのもあり、ここまでしか進みませんでした。
そして、まだ完成もしていないこの子の嫁ぎ先もほぼ決定して、嬉しいやら恐縮してしまうような。 作品名は「波打ち際」
打ち寄せる波とその先の大海原、これから先の自分のやりたい事とやるべき事。 色んな想いがこもってます。 自分で言うのも何ですが、肝は座ってるタイプ。 でも体がビビってる。(特に胃) 武者震いとはこの事かー
でもとっても楽しいことを考えてます。 あとは形にするためのやり方と仕組み。 がんばろー。
2018.2.22 Instagramより
(↑の作品が売れることを巷では「嫁に行く」という慣用句があったのですが、昨今このワードが話題になり、今ではこういう表現はしなくなりました。けれど、そういう風潮もあったんだという記録としてここに載せておきますね。。)
そしてこの展示がきっかけとなってこの次の展示会ではroomsさんとの共同企画ブースにてワークショップを実現することができました。(やっと!足掛け2年!)
1枚目 ワークショップ風景
2枚目 机に並べた糸たち。 ちょっとずつ色んな糸が綺麗に並べられて、しかもすごい可愛い。
3枚目 ワークショップ概要
4枚目 親子でのワークショップ参加でチビッコ同士意気投合。 資材の流木でキャンプファイヤーのゲタ?を作って火を起こそうとしてました。(火気厳禁) 近くのブースで風船もらって来たりと満喫の様子。 可愛かった。
そして沢山のお立ち寄りありがとうございました。
なかなかお一人ずつ丁寧にお話しする事が出来なかったり至らない事もあったかと思いますが今後ともどうぞ暖かく長い目で見守って頂けると幸いです。
お受けしたオーダーにつきましても会期後、改めてご連絡差し上げますので少しお待ち下さいませ。あと二日間、よろしくお願いします。
なんか余計な情報も入っていますが、(火起こし…)活動自体は一人ですべて行っているためか、情報が雑多です。それを見越して声をかけてくださることのありがたさは身に染みて感じています。
そしてこういうイベント系は家族の応援・協力があってのことで、親子で店番をすることがよくあります笑
ですのでその事情含めて、環境を整えてくださったroomsさんには感謝です。(このすぐ近くに出展者用のキッズスペースが配置してあり、我が家の他にも数組が利用していて、子ども同士仲良く遊んでいた。途中子どもたちにお菓子の差し入れまでしてもらえて至れり尽くせりでした)
こうして苦い・報われない日々を経たものの、最後にこういった素晴らしい機会を得ることができたので喜びもひとしお。そして、この機会が「ワークショップ実現できた!私しあわせ!もう満足!」にしたくなかったので、このイベントに間に合うようにこちらのnoteでタペストリーの作り方を書き起こしたマガジンを作りました。
ワークショップでは補えない部分も含めて、一から作ることが出来るようにテキストとして、制作工程の写真も100枚以上用意しました。
当日はこのテキストを読んでから来場してくださった方もいて、大変だったけれど、意地でも作り上げてよかったです。何よりだれかの「作ってみたい」気持ちにより添えるという経験をもらった気がします。
そして先生の気持ちというか教える喜びもすこしだけ、ここで知ることができました。
こうして、いままでの失敗やら後味の悪かった経験も良い思い出として昇華することもできたし、色々悩んでいた経緯というか思いもこうやって文章にすることによって、この経験を私の過去にするというか、成仏させることができたような気もします。
そう、この有料テキストを作ったことの副産物というのか、格段に質問コメントが減ったのです。それでもまだちらほら来る「作り方教えて」というコメントには「テキストがあるのでそちらで…」と言えば済むようになったのです。返答に悩むというストレスがなくなったんです。
そして、これは無料公開ではなく、有料にしたのがさらに良い効果だったと思います。(時々期間限定で無料公開とかはしていました)
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最後に、作るのはたのしいです。けれど、作り続けるには、楽しいことばかりではないし、作り続けるためにはなるべくいやな思いもしたくない。その嫌な思いも、やり方次第では避けることができるという事がわかりました。
そのストレスを避けることができるということは、自分を守ることでもあります。やっぱり作るときは楽しい気持ちで作りたいですからね。
これが私の「つくるのはたのしい」そしてその楽しい環境を作るための意気込みでした。
そして今回で、noteの通算記事が500になりました。500回も自分が作ったモノ・考えたコト・撮ったモノを紹介し続けることが出来たのは嬉しい。
これからも楽しんで作っていきたいなと思うのでした。
サポートは個展の費用や学費・研究のための書籍の購入として大事に使わせて頂きます。他、応援してるアーティスト・作家のサポートにも使いたいです。