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富士へ ①松原
松原の富士塚
2023年1月3日。わたしは世田谷区松原にある「扶桑教」本部の敷地内にある富士塚の前にいた。
扶桑教は、江戸中期に爆発的に広がった「富士講」の流れをくむ神道系の教団だ。「講」とは結社のことで、富士講は「富士の信仰結社」英語で「Cult of Fuji」という。正月早々わたしがここを訪れたのは、そこに「富士塚」があると知って一度実物を見てみたかったからだ。
偶然だが世田谷区松原はオウム真理教ゆかりの地でもある。ずいぶん昔、わたしは松原にあった東京本部、通称世田谷道場で入信手続きをして信徒になった。ここはわたしの修行の始まりの場所だった。
「松原のお富士さん」と呼ばれる扶桑の富士塚は、本物の富士山の千分の一の縮尺で造営された高さ3メートル70センチのミニチュア富士だ。だれもいない境内にある富士塚は、想像していたよりもずっと小さかった。
現在の富士塚は平成27年に造られた新しいもので、江戸時代に造営された富士塚は高さ10メートルもあったというが、昭和20年の空襲で破壊された。扶桑教のホームページに掲載されている昭和初期の写真を見ると、大勢の正装した人たちが富士塚の上に立ち並んで、その大きさと不思議な存在感に驚かされる。
扶桑教のホームページには富士塚の要件が記載されている。
富士塚の三大要件とされる「一、富士山の黒ボク石(溶岩)を使用する。二、頂上に浅間社(木花開耶姫大神)を祀る。三、登山道を配し登れる」を満たし、且つ西方には富士山の開祖 角行さまが修行をされた人穴(富士宮市)また八合目には蓬莱山亀の岩八大龍王社を配置した本格的な富士塚といたしました。
人穴と富士山
「富士山の開祖 角行さまが修行された人穴」とあるが、富士宮市人穴はオウム真理教富士山総本部道場があった場所でもある。わたしのように、松原の世田谷道場と人穴の総本部で修行した信者はたくさんいたはずだ。扶桑教ゆかりの地が人穴と松原だと聞いたら、「へえ…」と少し奇妙に思うかもしれない。しかし、オウム真理教はヨーガ、仏教・チベット密教を柱にした宗教団体で神道的な要素はない。
扶桑教の開祖角行(1541~1646)は、富士宮の人穴洞窟を拠点に修行した半ば伝説的な人物で、扶桑教だけでなく「富士講」の流れをくむ集団の開祖とされる。
わたしは、松原と人穴の不思議な縁を思って本殿に参拝すると、境内を出て正面の鳥居の前に立った。
見上げると扁額には「富士山」と書かれている。
「そうだよね、この宗教は富士山を信仰している…」
富士山麓にはオウム真理教の総本部道場をはじめ、サティアンと呼ばれる多くの施設があった。出家していた当時、わたしは第6サティアンまでは生活圏内だったのでよく知っているが、どのサティアンからもすぐそこに大きな富士山が見えていた。
「松原、人穴、そして富士山か…」
鳥居を見上げながら、奇妙な感じを覚えた。
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右手に富士塚が見えている