SDGs 水について考える(3/3完)
1回目からの最後
水について考える(1/3) >>リンク
水について考える(2/3) >>リンク
2015年を目標とした国際ミレニアム開発目標(MDGs)。安全な水へのアクセスがない人を半減する目標を達成した一方、安全な水にアクセスできない人を半減するという目標は達成できなかった。現在も安全な水へのアクセスがない人が世界に約7億人いると推定される。2016年、国連はMDGsの後を受けて「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択し、2030年を目標年と定め17の目標を掲げている。
17の目標の中に、「すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」を目標6として定めている。最後は、日本の役割についてです。
持続可能な開発目標達成に向けた日本の役割
戦後、高度経済成長を遂げ、その安定経済、バブル崩壊、ITバブルなど数々の今ないにあたりながら、先進諸国の先頭にたち世界を牽引してきた日本。過去、大規模な渇水及び高度成長による工業化が海水や河川への水質汚濁を経験してきた。
一方、上述の問題が顕在化しつつある多くの開発途上国に対する、水環境の改善による安全な飲料水の供給に向けた支援などを行うことが先進国には期待されている。これまでも日本は、政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)を通じて、多くの分野で世界でも最も多くの支援を行ってきた。これらの支援には、水道敷設や下水処理場の建設などの施設建設に加えて、上下水道事業に係る人材を育成する事業がある。通常は、施設を建設する支援と、それらの施設を運転管理する人材の育成を併せて行うことが多い。
これら支援通じ、ベトナムでは劣悪な経営状況から大幅な改善を見せ、いまや日本国内の水道事業と肩を並べる水道事業となった事例も多くなる。が一方で、それら事業に係る共通課題もある。その中でも最重要かつ困難なものに、水ガバナンスの改善がある。
水ガバナンス
持続的な水道事業を実施するため、収支のバランスを保ちつつ施設投資を継続的に行う必要がある。民間企業は当然であるが、国や地方自治体が行う上下水道事業ではそのガバナンスが適用されにくい現状がある。日本では、水道事業体に適用されている公営企業という仕組みがあるので問題ではない。しかし、上述の新興国ではそれがないため、必要な収入(上下水道料金)を確保し無駄な支出や非効率な仕組みを改善しょうというインセンティブ・動機が芽生えない。また、上下水道を利用する者の間で、水圧または使用量に関する不公平があるが、それら問題を積極的に改善しようという意欲に乏しい。
結果として、料金の低回収率かつ低水準の水道科金が長年にわたって改正されず、せっかくの投資による改善も断水や水質低下などの問題が多く発生する水道事業となるケースが断続的に発生している。
さらに、それらに係る利用者から苦情により水道事業体の職員の意欲が低下するという負のスパイラルを生起させている。この負のスパイラルを正のスパイラルに変えるため、水道事業体(その多くは地方公共団体)のガバナンスを改善する必要がある。
OECDでは、水ガバナンスの要素として透明性かつ効率性の要素を掲げるなど、他10項目、計12要素を挙げ活動しているそうである。が、それら要素により活動し評価すること以上に、ガバナンス改善の方法を検討・実行することが重要であると考える。
そのため、水供給事業者だけではなく、水の利用者及び政策決定者を含め幅広い関係者が問題意識を共有することが重要となる。都市内部における安全な水供給を実現し、各種の不平等を解消し、結果として水ガバナン スを改善すべきと考える。日本国内における経験を踏まえかつ参考に、各国や各都市の実情に即した支援を行うことで、水の不平等を解消、ガバナンス強化・改善を進め、SDG6及び10の達成に貢献することを期待している。