業務出張と称してアイルランド西部を巡る10日間の一人旅2023
今回「楽器の買い付け」という名目で、アイルランドに旅行をしてきた。西部の都市ゴールウェイに古い友人が住んでおり、そこを拠点として約10日間の一人旅。
これからアイルランド旅行を計画している人にも、少しくらいは参考になればという期待を込めて旅行記を残そうと思う。
まず手っ取り早く、今回の旅の教訓から。
ヒースローは魔境である。乗り継ぎの手順を事前によく調べること。夜明かしは出来ない前提で考えるべし。特にターミナルはよく確認。
現金はほとんどいらない。ICチップ付きのクレジットカードが一番便利。
現地到着した夜にあまり大切な予定は入れてはいけない。時差ぼけで眠いから。
レンタカーは超便利。できればiPhoneがあるといい。
ガソリンスタンドは、UNLEADED(ガソリン)かDIESEL(軽油)を最初に選んで自分で入れたらポンプナンバーをレジの人に伝えて精算
運転は最高速度を常にチェック。煽ってくる車には左に寄って抜いてもらう。(ただし中央線が実線の時は追い越し禁止。)
アイルランドはパンと乳製品が美味しい。あとフィッシュ&チップスNO.1はKillybegのSeafood Shack。
アラン諸島の土産屋のセーターの毛糸はオーストラリア産だったりする。
Galwayで安い服を買いたければPENNYSへ。
アイリッシュパブでの音楽セッション情報は現地のミュージシャンなど詳しい人に教えてもらおう。特に観光客向けのセッションでは満足できない方は。
6月3日(土) ヒースローは魔境である
9時に家を出て空港に向かう。チェックインは難なく済んで出発を待つ。13:15の出発予定。少し早すぎた。
飛行機は日本人が少ない。隣の青年はとても若い感じの白人の青年。ずっと小さくなってじっとしている。全然眠らないしもぞもぞしたりもしない。あまり人が得意じゃ無いのかな。
とにかく15時間この狭い空間にじっとしているというのが想像できない。
二、三日前から腰が痛く、耐えられないんじゃ無いか、と思っていたが、それを超越している。こんなに長い間同じ姿勢でじっとしていたら腰痛も治ってしまうのでは無いか。もしくは全然動けなくなってしまうかどちらかだ。
窓際なのでなかなかトイレに行きづらい。しかし窓からの景色は圧巻だ。アラスカを超えて北極海を行く。雲が晴れると流氷が見える。
ヒースローには現地時間の夜20時に着く感じ。その後13時間も待ち時間がある。何をして過ごせばいいのか全く見当もつかない。横になれる場所を探すか、とにかく飲んで食べて過ごすか。直前までそんなふうに考えていた。しかし・・・
ロンドンヒースローに到着し、飛行機から降りて、すぐにトイレを見つけて入って出たら、一緒だった乗客が誰もいない。人っ子一人いない長い廊下(半分以上動く歩道になっている)をひたすら歩いてARRIVALと書いてある方向に進む。
ようやく辿り着いた入国手続きの窓口で、驚愕の事実を知ることになる。
アイルランドへの乗り継ぎが明朝なので、空港には泊まれない、空港は閉まるので一旦外に出なければならない、と入国手続きのお姉さんにニコッと笑顔で言われてしまった。そもそもどこから外に出れられるのか、出たところでどこで過ごせばいいのか。
24時間やってるファミレスみたいな所があるのか、道端で座り込んでやり過ごせばいいのか。いやそんなことしてたら怖いお兄さんに囲まれたりしないのか。そんなことをぐずぐず考えていたが、ふと、今からホテル取れないのかな、と思いついた。
しかし、まず携帯が繋がらない。
ヒースロー空港のフリーWi-Fiがあるというが、これに繋げるのに苦労した。本人確認をメールでする、というのだが、そもそも繋がってないんだからメール届かないじゃ無いか!
今回ソフトバンクの海外あんしん定額、という1日980円のサービスを利用した。(ギガに制限があるのだが、全然使いきらなかった。コストもレンタルwi-fiなんかと変わらないと思う。)携帯が繋がらないのは困ると思い、これに申し込んだ。wi-fiも繋がり、agodaで近くのホテルを検索し、なんとか予約が取れた。
次に困ったのが現金。持ってない。けど、イギリスはポンド、アイルランドはユーロ。今ここでポンドに換えても使い道がない。
でも結局のところ、タッチ決済のカードがあれば大丈夫だった。イギリスもアイルランドもキャッシュレスは日本より進んでいると思う。IC付きのクレジットカードやデビッドカードが主流のようだ。かざしてピッと支払うやつ。どこでも使える。タクシーも、ホテルも、ホテルのバーも、バスも。
あとこれは自分のせいだが英語が通じない。まだ日本から出てきたばかり、つい日本語が出てしまう。ロンドンのタクシー運転手相手に「クレジットカード使える?」などと日本語で聞いてしまった。
ちなみにこのヒースローでの宿泊により、タクシー代26ポンド4500円、ホテル代80ポンド12000円、ビール代9ポンド1500円、合計18000円くらい余計にかかってしまった。帰りも同様。アホみたい。
ヒースローのホテルは悪くなかった。だから帰りも予約した。時間的におんなじ感じだったので。しかし、実は帰りはもっと大変だった。
ヒースロー空港というのは巨大で、ターミナルが1から5まである。このターミナルがそれぞれ大変離れている。乗り継ぎでターミナルが違う場合は注意が必要だ。同じターミナル内でも発着エリアまで電車で移動する必要がある場所もある。地球の歩き方編集部には「ヒースローの歩き方」を作ってもらいたいくらいだ。ここで路頭に迷ったらもう出られないのでは無いだろうか。魔境である。
そもそも何でこんなに乗り継ぎに時間が空いているのか。今回はゴールウェイの友人から、ダブリンはやめておいた方がいい、シャノン空港入りの方が絶対にスムーズだ、とのアドバイスを受け、シャノン空港を使った。しかしそのせいで日本で通しチケットを探したらこのような便しかなかった。おそらく、ヒースローまでと、ヒースローからシャノンを別々に探せばもう少し乗り継ぎの短い組み合わせにできたかもしれない。またダブリンへの乗り継ぎならもっと沢山あったはず。しかし、海外旅行初心者の僕にはなかなかハードルが高かった。確かにシャノン空港は人も少なく、規模も小さく、ノンストレスであったが、結果的にはダブリンにした方が良かったのかもしれない。
6月4日(日) マーティン、居眠りしてごめんなさい
朝はホテルマンに教えてもらってヒースロー行きのバスに。それだって6.8ポンド、1,200円もする。
ヒースローに朝7時に着いたが思ったより出国検査が厳しい。靴もぬげ、ベルトも外せ、と仰々しい。
無事搭乗手続きも済みロンドンに着陸してから何にも食べていなかったので空港のカフェでビッグイングリッシュブレックファーストというのを頼んだ15ポンド、2,600円だ。紅茶も入れたら3,000円超えている。空港だからというのもあると思うが本当に物価が高い。
ヒースローを出発し、シャノン空港に向かう。席は横に6列の小さな飛行機。ひとつ気になることが。乗客の一人がどこからどう見ても、「イニシュリン島の精霊」のブレンダン・グリーソンなのである。他の人たちもみんなチラチラ見ているような気もする。飛行機の入り口側の広くていい席に座っている。しかし、降りるときにキャビンアテンダントのお姉さんに聞いてみた。この辺に座っていた彼は映画俳優ですか、と。彼女は、アイドントシンクソーと言っていた。しかし僕は彼だった、と今でも信じている。
そうして1時間もしないうちにシャノン空港に着いた。
着いたら、やることが二つ。一つはキャッシュをATMで下ろすこと。悩んだが300ポンド出した。これが正解。全然足りなくなかった。ほとんどクレジットカードで支払いができる。最後の方はむしろ余りそうなので、無理やり使った。
もう一個はレンタカーの受け渡し。ずらっとカウンターに並んでいるので自分の契約のところに行って手続き。済んだら、出口で待っているとバスが来て車の駐車場まで連れて行ってくれる。那覇空港などと違ってすぐ近く。非常にスムーズであった。
車は一番安い小型車の6速MT車。一日当たり8500円、8日間で65000円。交通費が全部賄えると思えば一人でもまあまあお得だと思う。複数人数ならもっとお得だ。今回は本当によく走った。元は取ったと思う。ガソリンも3回くらいいれた。
ちなみにガソリンはUNLEADEDがガソリン、DIESELが軽油。車のキーホルダーや、給油キャップにも書いてある。リッター1.6ユーロくらい。相場は日本の1.5倍くらいと言う感じか。
慣れないMT車に苦戦しながら出発。アイルランドでは8割MT車だそう。目指すはエニスに予約した B&B。しかし到着が早過ぎたのか誰もいないので、エニスの町に戻りDUNEというショッピングセンターの駐車場に車を停めて散策。目当ての楽器屋CUSTY' Sをすぐに発見するもなんと閉まっている。音楽祭なので裏方などやっているのかな。
しかし近くの路地から音楽が聞こえてくる。行ってみると路地に小さなテントを張ってその下で三人が演奏している。フルートとパイプとブズーキの三人組。演奏もなかなかイケている。
そんなことしているうちに夕方になったのでふたたび B&Bへ。チェックインを済ませ少し休憩してからまた町へ歩いて向かう。3キロ位離れているので30分以上かかる。
ネットで調べたフィッシュ&チップスが美味しいというBROGANSという店へ。勇気を出して一歩踏み入れ注文。ギネスも一杯。ファーストギネスだ。
フィッシュ&チップスの見た目は凄かった。良く揚がった大きなフィッシュに、大盛りのサラダとチップス。そこに豆の煮込みが日本でカレーを入れるアラジンのランプのような銀食器に入っている。
一口食べて、これは美味い!と思った。しかし食べ進めていくうちにだんだん胸が苦しくなってくる。量が多いのもそうだが、とにかく脂っこい。こちらの友人はみんな歳が多いということもあるが、フィッシュ&チップスはトゥーマッチグリーシーだから余り食べない、と言っていた。その理由が良くわかった。僕も若い頃なら美味い美味いと言って食べたんだろうと思う。少し残してしまった。
お腹がいっぱいになり、ギネスを一杯飲んだら、なんだか頭がぼーっとしたので外に出て、少し歩いた。20時からマーティン・ヘイズのライブがある。少し早いが会場に向かった。
席に座ろうとするとまだ誰もホールにいない。席は最前列の真ん中近くだった。少しすると隣に老夫婦が座って、少し話すと、おじさんはコンサーティーナを弾くという。おばさんは70年代に日本にいたことがある、などと世間話をしていたら始まった。前座は10代の少年少女の演奏であった。そもそもこの音楽祭自体が後継の育成というのを目論みの一つにしているらしく、その発表の場ともなっているのだろう。大変素晴らしい演奏と歌であった。素敵なのは、みんな二つ以上の楽器を持ち替えたり、歌ったりするところ。すごく柔軟な感じがした。
そしてマーティン・ヘイズが登場。たった一人で、エアーや、ジグだけでなく、リールやポルカも演奏していく。音は綺麗だし、音の切り方やシンコペーションでリズムを作っていくのが素晴らしい。しかし。強烈な眠気が襲って来た。時差ぼけと、フィッシュ&チップスと、ファーストギネスで、もう眠くてたまらない。そこに来て、マーティン・ヘイズの演奏というのは、聞いたことがある人ならわかると思うが、なんとも幻想的な眠りに誘う音色なのである。
しかし最前列の真ん中である。寝てはいけない、マーティンに申し訳ない、と思いながら、正直後半は半分寝ていたのではないか、と思う。ごめんなさい。
終了後、自己嫌悪に陥りながらすぐに宿に向かった。道のりが長く感じた。
6月5日(月) 最初の絶壁、そして友人宅へ
翌朝、早く寝たので目覚め良く7時に起きた。窓からの景色が素晴らしい。
シャワーを浴びて、早速出かけることにする。ホテルの人が見当たらず、鍵をフロントに置いて出かけることにした。
まず、クリフ・オブ・モハーを目指す。
カーナビが秀逸であった。カーナビというか、AppleのCarPlayというアプリ、iPhoneを繋げると大きな画面でナビしてくれる。日本語で指示してくれるし、地点入力も非常に簡単。事前に行きたい場所をiPhoneのMapで登録しておけば、それをその都度選択するだけ。アイルランドやイギリスにはラウンドアバウトという独特な交差点があるが、これも「次の環状交差点の2番目の出口を出てください」などと指示してくれる。たくさん使ったが、文句のつけどころは見当たらなかった。iPhoneじゃない人は大変だな、と思った。
クリフ・オブ・モハーに到着。駐車場で5ユーロくらい取られた。あとは無料。どこにいたのか、というくらいすごい数の観光客。世界中の言語が聞こえてくる。
そしてものすごい景観。壮大過ぎて距離感がうまく掴めない。自分は高所恐怖症なのだが、そのせいで余り怖くないのが面白かった。
100年前、1000年前のアイルランドの住人たちはこの断崖絶壁を前に何を思ったか、と考える。
次に向かったのはバレン高原。バレンセンターという場所を入れたのだが到着してもなんだかよくわからない。そこで、ストーンヘンジのような場所を入れて向かうとまさにバレンの風景に到着した。層になった岩が敷き詰められた荒涼とした風景。そこに古代人が積んだと思われる巨石のモニュメントが。
そんなことをしていたら午後もいい時間になって来たので、友人のいるゴールウェイへ向かうことに。
6時くらいに着く、と伝えていたので、それを目指して向かう。バレン高原からはもう結構近い距離だ。事前に言われていたように、ハイウェイには乗らずにKinvara, Ballinderry, Kilcolganなどの小さな港町を通って向かう。いい雰囲気だ。
これから一週間お世話になる友人の実家に到着。素敵な古い長屋の一角。綺麗にリフォームしてあるが、もとは相当古いと思う。僕に割り当ててくれた部屋は3畳もないくらいの小さな部屋に、ベッドが置いてある。道路側に窓があり、居心地は良い。ここに一週間お世話になる。
夕食をいただき、この日は飲まずに就寝。ベッドの寝心地もなかなかよかった。
6月6日(火) ゴールウェイの楽器屋を巡る
朝9時前に家主(友人のお姉さん)が朝食を作ってくれ、紅茶とトースト、あと小麦のフレークをそのまま焼いたような、なんとかベイクというものを牛乳に浸して食べた。これがなかなか美味い。
家主は毎日のように朝食と夕食を作ってくれた。簡素だが美味しい。茹でたじゃがいもとにんじんとブロッコリー、肉はスーパーで買ったターキーのスライス。それに塩やマヨネーズをかけて食べる。こういうのもいいんではないか、と思った。
この日は朝食の後、家主がゴールウェイの街を案内してくれた。ついでに楽器屋も回った。と言っても二軒しかないが。一軒目に行ってハンドメイドのグッドギターを探してる、と伝えたら、じゃここじゃなくてあっちに行ったほうがいい、と教えてくれた。
二軒目のmoloneyは誠実そうな中年男性がやっている店だった。飛行機で持ち帰る方法と郵送で送る方法のメリットデメリットを詳しく教えてくれた。ただローデンも何本もあるし、McNallyというギターがあり興味が湧いた。ネットで調べると、もともとローデンやアトキンにいた人が独立して作ったブランドのようだ。
ただ問題はこの店は新品しか置いていなかった。そうすると値段はすごいことになる。やはりアイルランドで中古楽器を探すのは難しいのかな、と感じた。マキルロイなんてどうですか?と聞いたら、彼らは三人で作っているからそもそも供給が少なくて入手は難しいよ、とのこと。
そのほかに教会や、書店にも連れて行ってくれた。一つ嬉しかったのは、書店に行った時、ジョイスの話になり、奥さんがゴールウェイですよね、と話したら、すぐ近くにあるノーラ・バーナクルの生家に連れて行ってくれたこと。本当に小さな古い家で風情があった。
カフェでスコーンを食べて一旦帰り、少し休憩してから午後は友人も合流し、バンジョーを作っているクラリーン社への見学。工房はゴールウェイ郊外、友人の住むオランモアの隣、クラリンブリッジにある。
クラリーンの創業者のお父さんはもう悠々自適な感じで、親切に案内をしてくれた。自宅の隣に小屋をいくつか建てて工房にしている。実質息子さんが継いでいる感じで、それ以外に工房に一人従業員がいた。ちょうどネックを作成中で、どんな工程で作るのか色々説明してくれるのだが、英語が聞き取れない。メイプルのバーズアイを見せてくれ、いいでしょう、と自慢していた。また、フレットやヘッドのインレイに使う貝殻の細工もストックなども見せてくれた。ボディの丸い木製のリングも、四つのブロックを組み合わせて作るのだそうだ。また金属類は別注していて、ドイツや日本から入れているらしい。
工房脇のショップみたいなところには古い中古のバンジョーやマンドリンが並べられていて、値段の札がついていたが、そんなに高い印象ではなかった。そこに宝があったのかも、と今思う。
夜はゴールウェイに戻り、チコリというパブに繰り出した。音楽はなかなかいいが、とにかく観光客が多く、ゆっくり楽しめる雰囲気ではない。結局離れた席で昔話をすることになり店を変えた。
友人がディナー代わりだと言ってハンバーガーショップに連れて行ってくれた。昔ながらの店でいい感じだった。
パブにもう一軒行って、それほど遅くならずにその晩は帰った。
6月7日(水) コネマラで命の水を分けてもらう
この日は朝から一人でコネマラ散策に出かけた。前日に友人が綿密な計画を立ててくれたので、それに沿って行動した。
とにかく風光明媚な道を通っていくべきだ、というアドバイス。
確かにコネマラの奥に入っていくに従って風景が変わっていく。たくさんの湖を抜けると起伏が多くなっていき、岩だらけの山が見え始める。野には花が咲き、湖と山が連なり、なんとも天国に来てしまったかのよう。
ちなみに今回の旅行では天気には大変恵まれた。ほとんど雨が降らずそれどころか、晴れて暑い日が続いた。こんなに晴天が続くことは無いという。
寒さ対策でダウンジャケットを持って来たが役にたたず、傘も持ったが使わなかった。Tシャツと半ズボンをもっと持ってくればよかった。
なんていう話をしていたら友人が超安い店があるから買いに行こう、と言ってショッピングセンターのPENNYSという店に行き、3ユーロの半ズボンと5ユーロのTシャツを買った。たしかに安い。
最初にクリフデンという街に行き、少し街を見たあと、スーパーで買ったサンドイッチを昼飯にして湖畔で食べた。
その後、コネマラ国立公園というところへ。赤青黄色の三種類のウォーキングコースがあり、赤は往復2時間半の山頂登頂コース。勇気を出して赤コースにした。
これが結構きつかった。途中ハアハア言ってたら声をかけてくれた青年がいて、途中でまた会った時、水持ってるか?と聞かれ、持ってない、と答えると水筒を差し出してくれた。なんとも優しい。
こういうのは日本には無いなあと思った。
またなんとか山に登り、帰り道で泣いている男の子を連れた母親が居た。日本語で励ましている。僕も日本語でがんばれー、と話しかけたら、母親がびっくりした顔をしていた。恥ずかしいのでそれ以上話はしなかったが。
最後は山頂からも見えていた、カイルモアの湖のほとりに建つカイルモア修道院。この修道院は世界中から生徒を受け入れているとのことで、日本人の女学生も以前は来ていたという。こんな世界の果てのようなところに送り込まれた女学生はどんな気持ちだったのだろう。なかなか素敵な建物で、展示もしっかりしていて、素晴らしいが、入場料20ユーロは高過ぎないだろうか。
その後、ゴールウェイまで帰還したが到着したのは19時近かった。その後、友人がまた二軒ほどパブを案内してくれた。音楽の話で盛り上がった。友人とはどうやら音楽の趣味は合いそうだ。ビートルズはジョン・レノン、キンクスやジャムも好き。アイリッシュでは、ダブリナーズやポール・ブレイディ、クリスティ・ムーアも好きだという。来週にはスティーブ・アールがアイルランドに来るみたいでそれにも行くそうだ。
6月8日(木) イェイツの史跡をめぐる
木・金でスライゴー、ドニゴールの泊まりの旅へ。
木曜日、朝9時に朝食を食べて出発。友人のアドバイスでとにかくハイウェイではなくオールドロードを行けとのことで、カーナビで道を慎重に選びながら進む。確かにオールドロードは趣がある。アイルランドは速度制限が日本とは違い、一般道でも家がなければ100キロ、狭い道だと80キロ、町があると60キロ、といった感じに設定されている。
これが結構目まぐるしく変わるので、気をつけないといけない。街に入る時、速度検知器があって、制限速度以下ならニコニコマークでサンキューと表示される。
とにかく車が早い。一般道を100キロで駆け抜けるのをイメージして欲しい。友人はすぐに慣れるよ、と言っていたが、平日の朝などはカーレースみたいだそうだ。
スライゴーでは、まずラフギルと呼ばれるギル湖へ。イェイツが詩に読んだイニスフリーの島があるところだ。カーナビの通りに行ってみると、車止めの先を歩いていくと、突然姿を表す。小さな桟橋があって湖面にさざなみがきらめいている。人っ子一人いない。
ただすぐ傍には民家が二軒。きっと窓を開けるとイニスフリーが眺められるのだろう。すごい家だ。
次にスライゴーの街に行ってみる。イェイツの記念館のようなものがあるので行ってみた。しかしその日は休館していたようだった。あとで知ったが、6月13日はイエイツ生誕の日で、この記念館でも特別展が行われる予定だったのでその準備ということだろう。
仕方がないので川縁を少し歩いてみる。ゴールウェイの川と違って流れが早く、渓流のような流れだ。水量がすごい。ここ三週間、雨が降っていないそうなのだがどこからこの水が出てくるのだろう。
ここでも観光客が多い。フランスやスペインからの便が良く、そちらの人が多い。フランスからは100ユーロとか200ユーロでチケットが取れることもあるという。あとはアメリカ人。インドやイスラム系の人もいる。中国、韓国のアジア系は少ないように思う。単に遠いからだろう。
市街地の探検を終えて、ドラムクリフを目指す。こちらはイェイツのお墓があるところだ。メイン道路からすぐのところにあるのだが、木立の中を小さな川が静かに流れていて、本などで見た通りの雰囲気であった。ケルト十字が多く建つ教会があり、そこに墓がある。とても新しく見えるのだが当時の墓なのだろうか。教会の向こうにはスライゴーの象徴であるベンバルベンが見える。
人が少なく雰囲気がいい。
なんとなくいい時間にもなって来たのでドニゴールを目指す。
ドニゴールの宿は1万円くらいのB&Bで、街の中心から近く車も停められるところを選んだ。古い建物で雰囲気があって、とてもいい部屋であった。部屋の造作や調度品も安っぽくなく、水回りもバッチリで、何より翌日の朝食が素晴らしかった。
アイルランドの食べ物で美味しいのは、パン、バター、牛乳である。シリアルやポリッジなどの穀物系は間違いない。味付けは薄いので自分で塩や胡椒で調整する。特に茶色いパンが美味しい。ソーダブレッドだけではなくていろんなパンがある。
この宿もパンの種類は選び放題、ハムやチーズもいろいろあって、どれもおいしかった。
宿で一息ついたら夕食の時間になったので、ネットで少し調べて目星をつけてフィッシュ&チップスの美味しい店を探しにいく。しかしお目当ての店はどうも観光客で溢れている。迷ったが、もっと空いていて、看板にフィッシュ&チップスと書いてある店を見つけて入ってみる。ちょっと衣が揚がりきっていない感じもあり、特別美味しいわけではないが、悪くもない。量もほどほどで完食した。油っぽさもそれほどでもない。こういうのでいいのかもなあ、と思った。
目の前が公園だったので、少し休憩して、音楽パプを探していくことにした。REEL INというお店。今晩音楽やるよね?と一応聞いてからギネスを注文する。切符のいい金髪のお姉ちゃんがカウンターを仕切っていた。田舎の街に行けば行くほど人々の対応が優しい感じがする。
まだお客は少なかったが、すぐに音楽目当ての客が集まって来た。ギターのおじさんとボタンアコーディオンのおじいちゃん、バウロンのおばさま、という組み合わせ。このギターのおじさんがギターは上手いし、いい声で歌うし、とても良かった。アコーディオンのおじいちゃんは少し調子っぱずれだが、この道50年、目を瞑っても、寝っ転がっても演奏できる、という感じであった。バウロンのおばさんはワインを飲みながら体を揺らしてひかえめな演奏。ただアコーディオンおじいちゃんがおとぼけギャグを飛ばすとアッハッハッハと大きな声で笑っていた。
このバーには裏手に川が眺められるバルコニーがあって、そこで飲みながら音楽を聴くことができる。なかなかいい店であった。
ただ観光客相手であることには変わりない。だってPAシステムがあってスピーカーなら音を流しているのだから。そうではない、純粋なセッション、というものを結局滞在中体験することができなかった。こういうのはちゃんと下調べ、現地の演奏家ネットワークの情報がないと難しいのだろう。
結局、ギネスを二杯飲んで11時くらいに宿に戻った。
6月9日(金) ベスト・フィッシュ&チップス・イン・アイルランド
この日は友人の引退したお兄さんがドニゴールに家を建て、ちょうど滞在しているとのことで、ドニゴールを案内してくれた。
お兄さんの自宅はドニゴールの中心から車で15分ほど、小さな岬の海が見える高台に建っている大きな家であった。聞いたらもう20年も前に購入して、その後少しづつ直しながら、今は定年後ときどき来て暮らしているという。大きな黒い犬を飼っていてこれが可愛い。10歳と5歳。吹き抜けの大きなリビングの隣に、エクストラルームを自分で建てたのだという。すごい。
それからお兄さんが自分の車でドニゴールを案内してくれるという。まず向かったのがシュリーブリーグ。
アイルランドの絶壁の中でも高低差ナンバーワンである。
もうなんか壮大過ぎてスケール感がよくわからなくなってくる。キルべグスという港町が手前にあるのだが、そこからこの絶壁を海の下から見上げるボートツアーがあるようで、米粒のような船が見えた。
そのキルべグスなのだが、この港で小さな屋台で営業しているシーフードシャックというお店のフィッシュ&チップスが美味しいという。お兄さんは俺はそんなにお腹が空いてないから、と言ってチップスだけにしていた。
これを買って目の前の堤防に座って食べるのだが、もうたまらない。サクサクとした軽い感じ、臭みのない魚の新鮮さ、チップスも軽くカーブをつけて切ったものをあげていてクリスピーだ。
今回4回くらい食べたがこれがベストであった。
その後、お兄さんの家がある岬に戻り、その先端まで行こうという。車が入れないような柵があり、そこからは歩いて向かう。シュリーブリーグでもけっこう歩いていたのだが、これが結構長い道のりで、またマイケルがてくてく歩くのでついていくのが大変だった。
それにしても、のどかである。美しい静かな海と、緑だけが目に入ってくる。どこかでカッコーが鳴いている。先端に灯台があるので、そのためだけの電線が岬に向かって伸びている。
今回コネマラ含めて結構いろんなところに行ったが、この岬の風景と雰囲気が一番気持ち良かったような気がする。
そうしてお兄さんと別れ、ゴールウェイに到着したのはもう19時くらいであった。流石にこの日はパブには行かず、友人と家主の三人で話をした後就寝。
6月10日(土) イニシュモアへ 退屈な男だと言わないで
この日は友人(小学校の教師をやっている)も学校が休みなので、あらかじめアラン諸島に行こうということになっていた。
朝9時過ぎに友人の運転でゴールウェイから船着場へ向かう。
今日は友人の旦那さん(日本人)も一緒。久しぶりの日本語の会話がちょっと嬉しい。新しい杉並区長のことなど知っていて話も弾む。
そこでフェリーに乗って40分くらい。アラン諸島最大の島イニシュモア。まずはパブに入って少し早いランチ。観光客で混む前に、という算段だ。正解であった。僕はアホみたいにフィッシュ&チップスを頼む。なかなか美味い。キリーペグに続いて第二位である。惜しむらくは写真を撮るのを忘れてしまった。
ギネスも飲んで、観光に出発。他の人たちは船着場近くで自転車を借りたり、バスに乗って名所巡りをするのだが、徒歩で行こう、という。ダンエンガスという断崖の上に築かれた古い要塞まで約8キロ。まじかよ、と思いながら歩いていく。
とはいえこのウォーキングは楽しい。なんといってもアランである。あの映画マン・オブ・ザ・アランや、最近のイニシュリンの精霊と重ね合わせながら歩くのだ。
そこらにいる猫やら馬やらまでが親しげである。少し空気の質も違うような気がする。
ダンエンガスに到着。
柵も何にもなく、断崖絶壁のすぐ近くで若者たちが談笑している。ちょっと強い風に煽られたら墜落するんじゃないか、とヒヤヒヤする。
掲示されていた歴史解説を見ると、この砦(写真にはないが)は紀元前500年くらいのものだそうだ。日本は弥生時代だよ。
そのあとは、流石に疲れたので乗合バスに乗って港に向かう。バスは途中の名所にも遠回りしてくれる。アザラシのいる海岸も通ってくれた。
街に戻りもう一度同じパブで一杯飲んでからアランセーターお土産ショップへ。毛糸はオーストラリア製みたいよ、なんていわれたが、せっかくなので一枚買った。しかし50ユーロ、意外と安い。やはりそうなのかな。5時の船で帰還。今日も楽しい1日であった。
6月11日(日) 最終日、ヒースローの悪夢再び
帰国の日。前日の長距離ウォーキングが相当効いたらしく腰が痛い。しかしなんとか動ける感じなのでソルトヒルをゆっくり散歩することに。今日は曇りだという予報だったが晴れて来てまた暑い。途中アイスクリームが売っているのを目つけて買うと、ワンカップツーチョイスで5.5ユーロ。友人はノット・トゥ・バッドと言っていた。でも850円は高いよなあ。
2時に友人宅へ。友人の娘さんと挨拶。静かな感じのとても感じの良い子だった。きっと日本語も堪能なんだろう。そして二匹の猫と遊ぶ。まだ子供でとても人懐こく可愛い。
友人の旦那さん作のビーフのワイン煮とアップルパイ。とてもおいしかった。暖かいアップルパイに、アイスクリームをつけ合わせる、というのがオシャレだと思った。
17時30分にみんなにお別れを言って記念写真を撮って空港へ。
まずはレンタカーを返す。ガソリンを満タンにしないとエクストラチャージが取られるとのことで、一旦レンタカー屋まで到着したのだが近くのガソリンスタンドを探して満タンにしてから再度向かう。
返却は簡単に済んで、すぐにワゴンで空港まで送ってくれた。
空港でチェックイン、するとあらかじめ飛行機が1時間遅れますよ、とのこと。なんか悪い予感。前回ヒースローで朝まで乗り継ぎ便が待てないとのことで急遽ホテルを取ったのだが、今回はもうあらかじめとってある。しかし、ホテルまでのバスの最終が23:30。多分間に合わない。タクシー高いけどまあ、仕方ないと思っていた。しかし。
ヒースローについてすぐにタクシー乗り場に向かうとすごい行列ができている。これは厳しい。ほかに手段はないか、とググってみる。なんか別のバスで近くまで行けるようだ。タクシーの列から離れバスを探す。見つからない。そもそもバス停が違うターミナルにあるようだ。もう一度さらに長くなっているタクシーの列に戻って並び直す。
しばらく待っていると大きな声が聞こえた。ノーモアタクシー!プリーズ!と言っている。何!?タクシーも終わり!?今何時かと時計を見ると0時30分を回っている。
もう一度空港内に戻ってどうしようか考えた。明日の出発ターミナルを確認した。ターミナル5だ。今いるのはターミナル2。全然違う場所にあるのでこのままここで待っていても帰りの飛行機には乗れない。外に出ようにも徒歩で外に出る方法がわからない。
途方に暮れた。
もう一度タクシー乗り場に戻る。短くなってはいるがまだ並んでいる人がいる。ダメ元で並んでみる。するとポツポツとタクシーが来る。なんだ、まだ来るじゃんか。さっきノーモアタクシー!と叫んでいた黒人のにいちゃんが先頭でタクシーの差配をしている。
10分ほど待つと自分の番が来て、タクシーに乗れた。行き先を伝えると走り出したが、なんか前回と違う風景だ。心配になり運転手に行き先を再度確認したがあっている。
ホテルに到着すると同じ系列だがやはり違うホテルだ。仕方がないのでチェックインをする。前に客が何かのトラブルなのかだいぶ待たされて、やっとチェックインでき、部屋に入った。時間は1時を過ぎている。明日のバスの時間を確認すると6時18分。ほんの少ししか寝れないが、空港で待つよりはいいだろう。シャワーも浴びれる。
ああ、何もかもうまくいかない。
みんな海外旅行する時ってこんなに右往左往するものなのか。
ヒースロー朝9:45発の便で、羽田着は日本時間7:00。どうにか帰ってくることができた。日本に到着すると、ムッとした湿気と暑さ。そうか梅雨入りしたのかな。空気が重い。
なんだか浦島太郎になったような気がする。
最後にもう一度今回の教訓。
ヒースローは魔境である。乗り継ぎの手順を事前によく調べること。特にターミナルはよく確認。
現金はほとんどいらない。ICチップ付きのクレジットカードが一番便利。
現地到着した夜にあまり大切な予定は入れてはいけない。時差ぼけで眠いから。
レンタカーは超便利。できればiPhoneがあるといい。
ガソリンスタンドは、UNLEADEDかDIESELを最初に選んで自分で入れたらポンプナンバーをレジの人に伝えて精算
運転は最高速度を常にチェック。煽ってくる車には左に寄って抜いてもらう。(ただし中央線が実線の時は追い越し禁止。)
アイルランドはパンと乳製品が美味しい。あとフィッシュ&チップスNO1はKillybegのSeafood Shack。
アラン諸島のお土産屋のセーターの毛糸はオーストラリア産。
Golwayで安い服を買いたければPENNYSへ。
アイリッシュパブでの音楽セッション情報は現地のミュージシャンなど詳しい人に教えてもらう。特に観光客向けのセッションでは満足できない方は。
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