ミックスってどうやったらいいの⑨
こんにちは。
今回はマスタリング最終工程についての記事となります。
前回の投稿から、かなり期間が空いてしまいましたね。
(長らくお待たせしてすみませんでした)
なぜ記事の更新が遅れてしまったかと申しますと
マスタリング処理って、私のなかで複数の正解があったのです。
そこから、記事にできるような汎用の方法を絞り込むのに
かなり時間がかかってしまった次第でした。
というわけで、さっそくその汎用方法について書いていきます。
まず、前回の記事(⑧)時点で既に理想的な2MIXが完成しています。
ここからやることは、その“理想的”を保ったまま音圧だけを上げること。
必要となるのは、やはりリミッターやマキシマイザー系などの
マスタリング用プラグインになってきます。
が、それをマスターにインサートする前に
最後の音作り・ブラッシュアップをしましょう。
登場するのはステレオイメージャーとイコライザー。
まず、イメージャーのほうで帯域ごとのステレオ感を調整します。
超低音域・低温域はモノラル寄りにそこそこ狭め、
中音域・高音域はステレオ寄りにほんの少しだけ広げる。
これをやるだけで、サウンドがぐっと引き締まるのでお試しあれ。
※推奨プラグインはOzoneの『Imager』。
次にイコライザー。
これはマスタリング用を謳っているものを使います。
推奨プラグインはIK Multimediaの『Master EQ 432』。
おこなう処理としましては、
ご自身がリファレンスとしている音源と比較したときに
「強すぎる」と思う帯域を若干抑え、
「前に出すべきだ」と思う帯域を少しブーストします。
まあ要するに、通常のEQとやるべきことは変わりません。
ただ、本当にうっすら(気持ち程度)
メリハリをつけるようなイメージでやってください。
なぜならこの段階で処理した音は
直後にインサートするマスタリング用プラグインによって
一気に引き上げられる(強調される)からです。
さて、ではいよいよ
そのマスタリング用プラグインについて言及していきます。
この手のプラグイン、本当にいろいろ試してきました。
そのうえで、最終的に採用に至ったのは、
ずばりCradleの『The God Particle』です。
実はこのプラグイン、最初は「趣味じゃないや」と
音の感触を確かめた上で、切り捨てていたんですよね。
でも、あれこれやっているうちに
色んなプラグインを駆使して複雑な処理を施すよりも
God Particle1本で完結できるよう
2MIX側を洗練するほうが得策だということに気づきました。
極端な話、God Particleをインサートして
音楽が崩れてしまう場合というのはむしろ、
それまでの処理に何らかの問題があることの裏返しなのです。
よって、その何らかの問題を潰してゆく作業に時間をかけたほうが
結局のところミックス効率が格段によくなる。
急がば回れ、というやつですね。
じゃあどうやってその“何らかの問題”を潰すの?というお話ですが、
実はその答えこそが、前回の記事(⑧)までにご紹介した
全工程を指していたりします。
重複しますが、既に理想的な2MIXは完成しているのです。
ゆえに、あとはGod Particleをインサートするだけでいい。
プラグイン内のパラメータであるamountは100%はまま。
limiter、input、outputもデフォルト運用。
唯一、gain reductionの値を見て
eqを微調整することはありますが
これも基本はlowとmidを少し動かすだけ。
本当に、ほぼインサートするだけでいいのです。
ただし、その結果として得られるサウンドは、
ラウドネスを意識して極限まで音圧を上げたような
「ガチガチのマスタリング済み音源」と比べると
かなり軽い印象を受けるかもしれません。
でも、実はそれが最もフラットな音に近かったりする。
フラットな音というのは別記事にも書きましたが、
再生環境に依存しない、一定のクオリティが保証された
普遍的な出音という意味です。
「いやお前はそうは言うけど、全然物足りなく感じるんだが?」と
God Particleの仕上がりに「納得いかない!」というかたは
その物足りない原因となっている個々のトラックを特定し、
パラミックス時点での処理のみ、修正をかけてみてください。
なぜなら、2MIXとマスタリング処理は
あくまで上記までの内容で固定(これが正解)だからです。
変えてよいのは個別のパート(自分が間違えた処理)のみ。
ここを徹底し、突き詰めてゆくと、修正が進むにつれて
驚くほどサウンドが洗練されてゆくのを実感できるはずです。
その体験を一度でも味わうことができれば、
もうミックスで迷う時間はなくなります。
※次回、総括をおこないます。