アレンジの話④

前回は“良い方向に進んでいけるような技法”というのを
最後にほのめかして締めくくりましたので、
さっそく言及していこうと思います。

まず、最初に原曲のメロディを書きます。
次にベースを足します(コード進行に合わせルート音のみ)。
ここまでは『アレンジの話②』と同じ内容ですね。

が、この後の手順が異なってまいります。
今回は第1段階として、次の内容をご紹介いたします。

■ベースを歌わせる

まだ楽曲に2音だけしかないこの段階で、
ベースアレンジを始めてしまおう!という手法です。

ベースを歌わせるコツとしましては、
まずあらかじめ打っておいた原曲のルート音がありますよね。
それらの、各小節の出だしの音程は、なるべく“そのまま”にします。
で、ふたつめ以降の音程で動きをつけるようにしましょう。

ちなみに、歌わせるためには大前提としてC1~C4くらいまでの
広いレンジにおいて豊かな響きを保ってもらう必要があります。
よって「低音域はバッチリだけど高い音域がスカスカな音源」を
使用する場合、サチュレーターやベース用エンハンサーなどによる
倍音の補強が必須となりますので、あらかじめ注意してください。
※もともと高い音域でも豊かなベース音源があるなら問題なし。
 ここは音源やミックスの領域になりますので、別記事にて。

で、ベースアレンジを書く時のTIPSは以下のとおりです。


1. 音価(音の長さ)を細かく吟味する

例えば4分音符で進行していくフレーズがあったとして
それを8分音符に置き換えてノリの変化をうかがってみたり。
2分音符や全音符でベタ打ちしている部分を細かく刻んでみたり。
3連符を駆使して表情をつけてあげたり……とそんな感じです。

ベースって基本アタックが強くてリリースが速いものなので
音価が少し変わるだけでニュアンスがまるで違ってきます。
ここの吟味は曲のクオリティに直結するのでサボらないのが吉。

2. キメとなる場所は1オクターブ下げる

ちょっとイメージが湧きづらいかもしれませんが、曲の展開上、
節目となっている場所(シンバルが鳴るところ等)で
ドーンとベースが支えてくれると、
もうそれだけでかなりエモかったりするんですよ。
なので、そういう場所は直前まで動いていたレンジから
1オクターブ下げた音程で、少し長めに音価をとって
悠然と構えさせてあげると、サウンドが引き締まって効果的です。

3. コードの継ぎ目を半音で攻められるか意識

これは半音=エモみの思想に由来しているんですけど
例えばコードが切り替わるタイミングでドからレに上がりたい時に
ド#(レ♭)を経由できないかを模索する感じです。
ある種レガートとも言えますが、4分音符よりも短い音価で繋いでみて
なだらかに聞こえるかを確認すると、うまくいきやすいです。

4. ときにルートから外れ、メロディと同じ音程にする

“根音”に囚われていると盲点かもしれません。
つまり要所でメロディとユニゾンしろってことなんですけど
配合するバランスとしてはベースを歌わせるなかで
ふと1音だけ重なったりするくらいがベストですね。
※多用はベースとしての役割が失われる確率が高まるのでNG。

ちなみに上記の話とは少しズレますが、カノン(輪唱)的に
メロディと同じフレーズを随所に忍ばせるのは有効です。
あと、完全に余談ですが、FF5『最後の戦い』のサビなんかは
完全にメロディと一致した状態でしばらく進行していますよね。
あれを聞けば、ユニゾンの良さをご理解いただけるかと存じます。

5. メロディが動いていないとき(特に全音符など)はベースがメロディになるつもりで書く

この考え方は正直、ベースアレンジに限った話ではありません。
編曲技法としてどの楽器パートにも当てはまることなんですが
「一方が動いていないときはもう一方が動こう」の精神ですね。

対旋律・オブリガートにも密接に関わる話になりますけど、
メロディが細かく動いている場面って、
他パートはハモり以外の音程で自由に動きづらくなります。

※動きづらくなるというだけで、別に動いてもいいのですけれども
 如何せん雑然としがちです(メロディが邪魔され曲がぼやけます)。
 よって個人的には避けたほうが無難であると思っています。

でも、それは逆に言えばメロディが動いていない場面、
ゆったりとしか動いていないような場面においては、
他パートが自由に動けるチャンスもある!ということ。

見つけ次第「今はおれのターン!」という感じで、
メロディに成り代わるような気持ちで編曲していきましょう。
なお、この技法はとりわけベースやストリングスのパートで
用いられることが多いです。

6. レンジ12設定のピッドベンドを活用する

だいたいのベース音源は、初期のピッチベンドレンジが「2」に
設定されています。よって、これを6倍にしようぜって意味ですね。

音源内にスライド奏法が収録されているなら、それも使いつつ
細かいニュアンス調整はレンジ12で書いてあげるイメージ。

3でお話した“レガート”や歌でいうところの“しゃくり”にも
通じるところがあるんですけど、ピッチベンドでしか表現できない
情緒って確実に存在します。オクターブで音程を動かす時などは、
特に積極的に吟味してみることをオススメします!


さて、以上でベースアレンジができたと仮定しましょう。
アレンジの話②』では、次の手順として内声、
つまり“コードの確定”に移行してまいりましたが、
今回の技法においては、確定させない状態で第2段階に行きます。
次回の記事で具体的なお話をします。

※次回の記事はこちらから。

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